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バッドエンドループが往復ビンタで襲ってくるけど、最後に笑って祝盃をあげてやる  作者: かぎのえみずる
第三章 メインディッシュはお肉にしますか、魚にしますか
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休憩の終わり

「まず一つ一つ考えていこう、俺が止めるのはそれからだ。そうでなくば休憩している意味がない。いいか、まず一つ目、若葉に対して」

「助けたいと思う……もう一度主役になれないのか?」

「……可能ではある。あの部屋は正解だと言ったなら、可能性はある、どうしてか判るか?」

「判らないよ…」

「弱者というのは、強くなる可能性を沢山持つ。中にはカリスマがいて、そのカリスマで王族より勝ることも多い。そうなったら、そいつは主役だ。そんな可能性を、秘めている」


 ロワは私に期待していいとはっきり示していたが、声を密やかに問いかけてくる。


「だが、考えてみろ。強者である立場に若葉は快感を得ていた。お前を撃つのでさえ、拒まなかったんだぞ? このままでいるには純水を手に入れなくては、そんな風に考えさせている。そんな状態でお前が助けたいだなんて言ってみろ、どうなるか想像つかぬ馬鹿ではあるまい?」


 こくんと頷いてから、その場にしゃがみ込んでしまう。

 助けたいなんて言い出したら、弱者扱いでそれこそ若葉は激高するだろう。

 足から力が抜ける、強張っていた姿勢がロワの出現で安堵し、柔らかくなっていく。

 はーっと深呼吸をゆっくりとして、考え始める。

 確かに若葉は、もう弱者と自分が思われるような今までの振る舞いを、否とするだろう。それに純水を探そうとし始める。そんな時に助けたいと言われれば、反感を買って、若葉は怒るだけだ。


「どうにか、どうにかして……」


 蟀谷を抑えて、少しの間目を閉じる。

 もし、もしも。若葉からは、助けてるんだって思われなくても、私が助けていると思う行動をするのはエゴではないかな。

 エゴだとしても、若葉を何とかしてあげたいんだ。


「結果的に助けとなるのは駄目かな」

「結果的に? どういうことだ、ヨダカ」


 ロワは少し驚いた表情で、鼻をひくひくさせていたのをぴたっと止める。

 かくんと小首傾げて、私の様子を窺っている。


「若葉が助けられてるって思わなくても、助ける行為をするのは〝助け〟にならないかな?」

「――……ヨダカ、俺は似た行為をされた覚えがある。相手はいつの間にか俺を助けていた、けれど俺はその時何も思わなかった。有難いとも思わない。ただ寂しかった……。人によっては、余計な真似をって思われる。嫌われる可能性だってあるんだ。マイナスな誤解をされても構わないのか?」


 ロワは躊躇いがちに、過去の何かを参考にしたのか意見を告げた。

 誤解されても若葉を助けたという行為に繋がるのならばいいと思う。

 私はロワをじっと見つめ、慎重に頷く。有難いって思われたくて、助けたいわけじゃないんだ!

 私はただ、親友を助けたい、それだけの思いなんだ!

 ロワは考え込んで視線を横へ外してから、目を細め「そうか」と頷いた。


「じゃあ二番目だ。若葉は敵になる、それでもお前は助けたいと願うか?」

「うん」

「……ふむ、大分先が読めてきたぞ。ヨダカ、お前はきっと願いを忘れるだろうが、幸せを願うお前は嫌いではない。だから止めない。では最後にヨダカ、お前、自分が何者か思い出せたか? お前の〝物語〟は?」

「……頼と兄妹ってことは、私も〝注文の多い料理店〟なのだろう? なぜ忘れてしまったのか思い出せないけれど。頼と兄妹で似てるから君は、私をヨダカって呼ぶんだ、頼をヨダカと呼べない何か理由があるから。代理で呼ぶんだ」


 私が笑いかけると、ロワはまずい草でも食べてしまったような苦い顔をして、私の腰をまた軽く叩く。


「代理ではない。詳しい事情は言えぬが、代理ではない。無理して笑うな。以前笑って欲しいと願ったのは俺なのに、身勝手で悪いが、今は笑って欲しくない。苦しそうだ、お前。――……判らない事柄があったらな、訊けばいい。俺には答えられぬ言葉も、頼は教えてくれるだろう。……あんまり、全部自分一人で考えるな。お前と頼は星だ、宇宙を共有している。星同士であれば……俺には判らぬ悩みも判るだろう? 何よりお前達は、本当の兄妹だ。家族なんだ」


 励まそうとしてくるロワに私は、有難うと呟いてから、ロワをじっと見つめる。

 綺麗なルビーみたいな紅い瞳をじっと見つめて、その無機質さは少しだけ頼に似ている気がしたので、私は思案する行為なくロワに問いかけていた。


「君と頼は何を見ているんだ? 君と頼だけは、まるでこの世界にいないようだ。さっきの琥珀さんも他の何かを見ていたね」

「――……この状況を明確に言葉にできないが、一つだけ判るのは、俺もあいつも〝呪われている〟から、『時間』と敵なんだ――この屋敷に、物語という名前がついて、コトダマのように呪いとなった。そうだな……ずっと同じ本を読書しているような、呪いだ。さて、ヨダカ、そろそろだ。それではな」


 本を読んでいる。あの老夫婦の言葉、「本とは何か」を思い出していた。

 思い出してぼんやりとしているうちに、ロワはぱちんとシャボン玉の泡が弾けるように消えていた。


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