部屋の質問
頼がこの屋敷で特別な理由は分かったが、若葉は店主の血と聞くと不審に思ったようだ。
私が歩き出した頼についていこうとすると、若葉はこそっと問いかけてくる。
「本当に信じられると思う? 店主の血を引くって――ほんとかな。ほんとだったら、犬じゃないじゃん」
「本当かどうかは判らないけれど、信じるよ。信じるしかないよ今は」
「リカオンちゃんはすーぐ信じるんだから」
若葉がこっそり私を小突いて、注意するように、「めっ」って小さく叱ってきた。
でも若葉も疑う材料がそれ以上は見つからないみたいで、私についてくる。
若葉は信じてないけれど、助かるならば信じてやろう、みたいな気持ちなんだろうな。
頼は私と若葉を一瞬立ち止まって振り返ったけど、特に気にしてないのか、また前を向いて歩き出した。普通気にするだろうに、頼は私と若葉の行動に一切口を挟む様子は見えなかった。
やけに長く感じた廊下を歩いて、隣の部屋につくと、頼はドアノブを指さす。
先ほどより扉が多く見える、頼の存在による異変の大きさは効果大だった。
「どっちかが開けてみ」
私と若葉は顔を見合わせて、若葉が頷いて、ドアノブを回す。
扉が開くと閃光が廊下に走り、眩しくて眼を閉じるが、開くと驚くことにそこは先ほどまでいた場所と違う。
真っ白い部屋の中。窓があって、窓の外に頼と若葉がいる。二人が私に気づくと、若葉は窓を必死に叩いてる。出口はどこにもなく、密室だ。
何だか若葉が好みそうな、乙女ちっくなひらひらとレースがふんだんにあしらわれた、ピンク色のクッションがまばらに存在する。
若葉が何を言ってるかは判らないけれど、窓を割ろうとしてくれてるのはちょっと判った。
逆に頼は何もせず、黙って見つめて、私の行動を待ってくれているみたいだった。
頼はただただ黙って見つめていた、若葉が窓を割るのを失敗しても黙って見続けていた。
隣にいる若葉が頼に向かって怒鳴ろうとする動作が見えたが、頼が私を指さして「見てろ」と促したようだ。若葉は大人しく、私を心配そうに見つめる。
『貴方はお姫様です』
突然部屋に文字が浮かび上がる。地面に文字が浮かび上がって私は吃驚した。
白い部屋に広がる渦巻く文字を読むと、そんな文章だった。馬鹿を言うな、私は王子様になるんだ、お姫様なんてあり得ない。
複雑な思いを抱きつつも、この場はお姫様だと納得するしかない。他には誰も「貴方」と示す人がいないのだから。
非常時に納得するくらいの潔さは持っている。
『お姫様なら美を磨いてください。美をこの部屋から見つけてください』
お姫様じゃないから必要ないって言っても通じないんだなっていうのは、断定されてるから判った。あくまでお姫様として選べってことだろ。まばらにあったクッションが消えて、この部屋に残る物が露わになる。
白い部屋にあるのは、鏡、ぬいぐるみ、花。その三つ。
二人がいる窓を振り返ると、部屋の中に向こうは壁に、「貴方は王子様です」と書いてあって、同じ質問が書いてあった。
頼は私に気づくと、向こうの選択肢であるものを見せてくれた。
剣、本、王冠。頼は、ジェスチャーでどれにするか聞いてきた。若葉はぽかんと混乱してるようだった。
私も自分の選択肢であるものを見せて、どうすればいいか頼の答えを待つ。
頼は、私を指さしてから腕を組む。
――私に任せるということだろうか。私が選べと? こういうジャンルは苦手だが、しょうがない。お姫様について考えてみよう。




