絵本シリーズ II
むかぁしむかしとてもきれいな花がありました。
みるひとすべてがとてもうつくしいとうらやむきれいな花でした。
その花をみただれかはいいました。
「みんなの花にしよう。ひとりじめはしないようにしよう」
そういってみんなは花をひとりじめにしないように。
きれいな花が太陽と月をみていられるように、おおきな木もちいさな木も、きれいな花のそばへ近寄りませんでした。
きれいな花をたおらないようにと、けものはちかよらずにとおめでみるだけでした。
きれいな花にうるさい音を聞かせないようにと、むしたちもよりませんでした。
きれいな花はおもいました。
どうしてみんなはわたしにちかよってくれないのだろう。
どうしてみんなはわたしにはなしかけてくれないのだろう。
どうしてみんなは、どうしてみんなは。
きれいな花はおもいました。
ちかよってくれないのはわたしがくさいにおいをだすからだ。
そういってきれいなはなは、がんばってあまいにおいをだすようにしました。
きれいな花はおもいました。
おはなしがしたいのにだれも、だれもいっしょにおはなしができないのは。
そうおもってきれいな花はがんばりました。
がんばってがんばってがんばって。
そしてきれいな花はおはなしができるようになりました。
だれかがかならずそばにいるようになりました。
でもきれいな花ががんばろうとしたときの、おおきな木とちいさな木とけものとむしは、すべてあのときのものとちがっていました。
きれいな花はおはなしをしました。
おおきな木とちいさな木は、そばにいるだけでなにもいいませんでした。
きれいな花はそばにだれかがいることをとてもよろこびました。
じぶんを見ていてくれていたけものは、なぜか。
なぜか、かわいた木のようなはだでした。
きれいな花はかぜのおとだけではない、むしのおとがすることによろこびました。
そのむしはなぜか、葉っぱでできていました。
きれいな花はおもいました。
じぶんをみてくれているひとがもりのそとにもいる、と。
ずっとずっとさみしかったきれいな花はおもいました。
がんばってがんばってがんばれば、もうさみしい想いはしなくなると。
がんばってがんばって、そのきれいな花はたおられました。
なんどもなんどもたおられました。
そのたびにおもいました。
寂しくない。だから、とても幸せ。
きれいな花はあるときかみさまの手によってたおられました。
手折られたあと、「もう二度と寂しい想いをさせないように」と、愛されました。
きれいな花はかみさまに愛されるためにがんばりました。
きれいな花はかんがえました。
もう二度とあんな想いはしたくないと。
見つかって話しかけられて、手折られるその瞬間だけが寂しくないのはいやだ。
ずっとこれからもずっと寂しくないように見てほしい。
きれいな花はかんがえました。
かみさまにはできなくて、じぶんにできることは。
きれいな花はかんがえました。
かんがえました。
そしてみつけました。
そうだ。森をつくろう。
かみさまになくて、じぶんにあるのは薬効のあるからだ。
森をつくってじぶんとじぶんとおなじものをつくって。
わたしをのんでもらおう。
こうすればきっとかみさまといっしょになれる。
つくったものはかみさまのくにのひとにのんでもらえば、あのときにかんじた淋しさはなくて。
ずっといっぱいのひとに愛してくれる。
ずっといっぱいのひとにおぼえていてくれる。
わたしのなまえがあれば、ずっとかみさまのことは忘れられることはないだろう。
こうして、あのきれいな花は薬花『Kaxennon』と呼ばれ、万病に効く薬のざいりょうになるとのことでした。