私の幼なじみ登場。
転校生のことを考えつつ、好きな作者の小説を読んでいる私の所に、怪しい影が近づいていた。
バッと両手で目隠しされる。驚きはない。いつものことだからだ。
「だーれーだ?」
目隠ししている少女が、まるで分らないだろうと言っているかのような自慢げな口調で言う。だが、少女の正体を私は知っている。私は「はぁ」と溜息をついた後、
「咲でしょ?」
と言った。すると、少女は動揺して、手をブルブルと震わせる。いやいや、そこまでいくか?
「なんで分かったの~?」
目隠しをやめた少女は、私の顔を覗き込んできた。肩にかかるかかからないかほどの、黒い髪の毛がふわっと揺れる。相変わらず、美人だなぁ。そんなことを思いつつ、少女の頭を軽くはたく。
「ぬあっ!な、何すんの!」
「咲がつまらないこと毎日毎日するからでしょ」
そう言うと、少女は頬を膨らませた。
この少女の名前は新本咲。幼稚園からの幼なじみ。通称「みんなの情報屋」。この名前の由来は、学校内のすべてを知っているからだ。例えば、生徒の名前やクラス、誰が誰のことを好きかなどなど。他にも、言ってはいけないようなことも知っている(らしい)。しかし、この少女には欠点がある。それは、することが幼稚なことだ!
今さっきのように目隠しとか、ヒーローごっことか色々な幼稚なことを毎日毎日私にしてくる。小学生の時は付き合っていたが、さすがに中学生にもなって「ワハハハ。私は宇宙人だ。地球を征服してやる」なんて言っていたら、即座に中二病と思われて、黒歴史決定だ。
しかし、この幼稚な少女は勉強がとってもできる。「全教科八十五点以上は常識だよね」とか平気で言う。この言葉を聞くたび、私はっこの少女を殴りたくなる。そして、この少女はアイドルファンでもある。あるジャ○ーズのアイドルユニットが好きで、CDの発売日になると、私を捕まえて、その曲を聞かせてくる。アンド、この少女は運がよく、ライブにすべて当選する。その運、私も欲しい。
「ねえ、唯奈」
「何?」
「またね、賭けしちゃった(てへぺろ)」
「はあああ!?」
咲の言う「賭け」というのは……そのままの意味だ。十円というお金をかけて、賭けをするのだ。しかし、勝敗を決めるのはポーカーでもブラックジャックでもない。私だ。厳密に言えば、私と小柳さんだ。私達をあることで争わせるのだ。争うといっても、そんな大層なことではない。体力テストの点数とかそういったものだ。だが、これまで私は賭けの道具にすることを事前に知らされたことがない。していいかも聞かれたことがない。半強制的だ。
「咲、あんたね……」
「ま、伝えといたからね」
咲がそそくさと逃げていく。ちなみに、咲は別のクラスだ。って、そんなこと言ってる場合じゃない!
「ちょっと、待ちなさい!咲~!」
逃げられてしまった。もう、追いかけるのも面倒くさい。