柏宮唯奈の通学
今日から、二学期に突入する。だが、私の心はそちらに向いていなかった。
「え~。今日紹介したいのはこの商品!マスク型変声期です。(裏声:お~)見た目はただのマスクで・す・が!横の小さなボタンを押すと、変声機へと大変わり!(裏声:お~)反対側にはダイアルがあり、色んな声に変えられます。さて、この変声機。な、な、な、なーんと!十万円です!親族の方にはタダ!タダですよ!」
朝起きたら、父がこうだった。妙に口調がとある通販番組に似せてあるし、裏声で観客をも、装っている。そして、その商品が……。あなたには、自分で考えるという能力が無いのか!まあ、作り方は自分で考えているけども。それに、マスク型という利便さ。蝶ネクタイよりは、使う場面があるね。っと、口がすべった。
「お父さん。宣伝するなら、近所に行ってきてよ」
「いや、お父さん人見知りだから」
じゃあ、なぜ客商売しているんだよ!おかしいでしょ!
こうして、私の朝は過ぎていく。
私の学校への通学方法は自転車だ。分かると思うが、学校から離れているからである。普通なら、電車で通学する距離らしいが、あいにく、一番近い駅は無人駅で、電車は一時間に一本しかない。こんなところで、商売してて儲かるのか?それはまあ、置いておこう。通学距離は長いが、幸い坂道が無いのでつらくない。ただ、一つを除いては。私の通う学校は、高台にある。その学校に続く坂道が、とーっても長い。アーンド、傾斜がきつい。この坂は、生徒全員を苦しめている。
「はあ、はあ」
やっと、登りきった。
九月といえど、気温は夏と変わらないので、汗がダラダラとでる。その体で教室へと辿り着く。私のクラスは三組だ。そして、私の席は運動場側の後ろから二番目の席だ。
「バッグは軽くても、きついわー」
独り言を言いつつ、席に着く。やっと、一息。
だが、試練はこれからだ。