充実しすぎやしませんか?
そのベッド上の女の子は、充実した暮らしを送っているようだった。
右手にスマートフォン、左手にポッキー。膝上に大量の本とみかん。
「え、えと」
女の子は、慌てふためいていた。サイドにアクセサリーが施されている赤い眼鏡が、ずり落ちそうになっている。
いや、慌てるのは分かる。ただ、何でそんなに充実したスクールライフを送っちゃってるの!お菓子食べちゃダメでしょ!って、そんな問題か!違うな。まずここに、パジャマ姿でくつろいでいる女の子がいる時点で、おかしいよね。
女の子は、何をするか、迷った挙句……。
「み、みかん食べます?」
私達にみかんを差し出した。
だ、誰が、不思議な女の子見つけて、その子が差し出した食べ物食べるか!そんな無用心な奴がいる訳……。
「お!いただきます!」
神宮が嬉しそうにみかんの皮を剥いている。
いた……。すぐにフラグを回収する馬鹿がすぐ近くにいた。
「な、何を普通に食べてるの!?」
「いや、ご好意に甘えようかと……。」
「何も仕込んでませんから、お気になさらず」
それを言ってしまうところが、余計に怪しいんですけど。
じっと、女の子を見つめる。あれ?この子、どこかで……?
「うわぇ~~い!」
私は驚きすぎて叫んだ。
「うるっせえなあ。どうしたってんだ?」
「こ、この子、教室にいた、幽霊じゃん!」
最初に見たときは雰囲気が全然違って、分からなかったけど、確かにこの子だ。
私の驚いた様子を見て、神宮が、はあ、とため息をついた。
「お前、気付いてなかったのかよ」
気付いてたんか~い!言おうよ?言っちゃおうよ?ちょっとした……どころか、人生一のトラウマなんだよアレ!めっちゃ怖かってんぞ!実際、気絶したし!
「先ほどは、驚かせてしまって、申し訳ありませんでした」
女の子は、ベッド上で土下座した。
「いやいやいやいや、全然もう、大丈夫です!だ、だから、そんなのはやめてください」
そう私が言うと、あっさりやめる女の子。ん~。な、なんか悲しい。
「驚かせるつもりはなかったんです。ただ、探している人がいて」
「探している人?」
「はい。名前は……」
「このみかん、すげえ美味しい」
ジロッ。神宮を睨む。その目線に気付いた神宮は、みかんをベッドの上に置いた。
気を取り直して……。
「名前は、西名絢可。知ってます?」
「知らねえ」
「知ってます」
私と神宮が同時に言う。私は神宮をまた睨んだ。
「同じクラスでしょうが!」
「え?そうなのか?」
西名絢可さんは、中学から転入してきた女の子。美人で成績優秀、そしておしとやかである。成績優秀というのは、毎回定期テストで、学年一位なのだ。
彼女は、あまり会話をしたりしない女の子で、いつも本を読んでいる。「何の本を読んでいるの?」と、一度話しかけたことがある。そのとき彼女は、「経済学の本」とだけ答えた。そのとき私は「私には一生縁のない本だな」と思ったのを覚えている。
「で、西名さんとはどういう関係で?」
「小学校の時の親友でした」
女の子は複雑な表情をして答えた。




