第12話「ファルドの確信」
場所は変わり、ブラウン家の本家である。
自身の父親に呼び出されたファルドは、病床の父親と対峙する。
「親父…具合はどうだ?」
珍しく父親を気遣うファルド。
「……すまぬな、体が思うように動かんわ」
ファルドの父・ルクエルは、ベッドの中で激しく咳き込む。
「親父!!」
慌てて近寄るファルド。
「大丈夫じゃ…慌てるでない」
そんな息子を、ルクエルは制した。
「親父のためにも、必ずレイウェアを見つけ出すからな!」
そう言って、部屋から出ようとするファルド。
「待て…ファルド」
ルクエルが、ファルドを呼び止めた。
「何だ?」
ファルドが振り返る。
「これを……使え」
ルクエルは、“ある物”をファルドに渡す。
「これは…発信器?」
ファルドの右手には、黒くて小さな発信器があった。
「これを…要人に取り付けるのだ。やり方は…お前に任せる」
ルクエルはそう言うと、眠りについてしまった。
「任せろ…親父…」
ファルドはそう言うと、屋敷を後にした。
その頃シャンクス一族の住居区では、朝から何やら騒がしくなっていた。
どうやら、レイウェアが護衛をつけずに買い物に出掛けたようなのだ。
「見つかったか!?」
民たちに声をかけるロイ。
「だめです!!」
「こっちも居ません!!」
「いつも出掛ける市場にも居ませんでした!!」
民たちは、走りながら口々に言う。
「レイウェア…どこに行ってしまったんだ…!」
唇を噛み締めるロイ。
この集団には、キラウェルの姿がなかった。
どうやら、キラウェルもレイウェアを捜し回っているようだった。
「とにかく、何としてもレイウェアを見つけ出すんだ!!」
ロイの指示で、再び民たちが動き出す。
「頼む…無事でいてくれよ…!」
ロイは、祈るように言った。
たった一人で出掛けたレイウェアは、最近話題になっていた安い市場へ足を運んでいた。
「凄い…!5個で300Gって…安い!!」
袋に詰められたオレンジを手に持って、感激するレイウェア。
「おっ!お姉さん…お目が高いね!」
帽子を被った男性が、話しかけてきた。
「現在セール中なんだよ!」
「そうなんですか!?」
驚くレイウェア。
「買うなら今だよ~」
にこやかに話す男性。
「うー…買います!!」
悩んだレイウェアは、買うことに決めた。
「毎度あり!!」
男性に300G支払ったレイウェアは、その場を立ち去ろうと歩き出す。
「あっ…お姉さん!!」
すると、あの男性がレイウェアを呼び止めた。
「はい?…何でしょう??」
不思議そうに振り返るレイウェア。
「背中に…何やらごみが…」
「えっ!?取ってください!!」
背中を向けたレイウェア。
男性は背中に手を伸ばすと、何かをはたいた。
「どうやら…虫だったようですね」
男性はそう言うと、手をはたく。
「すみません…ありがとうございました!!」
頭を下げるレイウェア。
「いえいえ!引き続き、買い物を楽しんでください!!」
男性はそう言って、再び商売を始めた。
レイウェアは微笑むと、再び歩き出す。
レイウェアの姿が見えなくなったと同時に、物影からファルドが現れた。
「どうだ?」
ファルドが、男性に声をかけた。
この男性は、ファルドの従者であるグラディスだった。
「バッチリです!!発信器を背中に取り付けています」
グラディスは、不気味な笑みを浮かべる。
「よくやった!あとは…場所の特定だな」
ファルドはそう言うと、周りを見渡す。
「皆の衆…撤退だ!!」
ファルドがそう言うと、それまで賑やかだった市場が一斉に撤退を始めた。
どうやら、ファルドが仕掛けた罠だったようだ。
「レイウェアよ…お前の居場所はもうないぞ…!!」
ファルドはそう言うと、ニヤリと笑った。
買い物を済ませたレイウェアは、軽い足取りで住居区へと戻ってきた。
「ただいまー……って、え…」
レイウェアは固まる。
なぜなら…。
「母さん!!」
キラウェルが抱きついてきたからだ。
「キラウェル…」
娘を抱き締めるレイウェア。
「どこに行ってたの!?心配したんだから!!」
「ごめん…」
レイウェアはそう言うと、紙袋を娘に渡す。
「買い物に行ってたの?」
中身を確認するキラウェル。
「ええ…安い市場があったものだから、ついね…」
レイウェアはそう言うと、昼食の準備を始める。
「手伝おうか?」
「そうね…お願いしようかしら」
こうして、キラウェルとレイウェアは、昼食の準備に取りかかった。
その頃ファルドは、アジトで受信機を確認していた。
「この位置か……グラディス!地図を!!」
ファルドは、受信機を確認してグラディスを呼ぶ。
グラディスは、急いで地図を持ってくる。
この地図は、グラディスが用意していたもののようだ。
ファルドが持つ受信機は、ある場所に反応していた。
グラディスが持ってきた地図と受信機の場所を、交互に見て確認するファルド。
「間違いない……場所を突き止めたぞ!!」
このファルドの声で、一気に歓声があがった。
その様子を見ていたガクは、慌てた様子で走り去った。
「まずい…まずいぞ!ファラゼロ様に伝えないと…!」
この時ガクは、これから起こる悲劇を…予感してしまうのであった。
運命の日まで、あと2日……
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