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氷の皇子と呼ばれた私が、追放された薄幸聖女を拾った結果――。無自覚に誘惑してくる彼女が尊すぎて、全理性を動員しないと国を滅ぼしそうです。

作者: 佐新
掲載日:2026/02/23

沢山の作品の中から見つけてくださってありがとう!!

第一章:冷徹皇子の執着と、泥を被った宝石

「……見つけた」

月明かりの下、私は震える彼女の背中を見つめていた。

私の名はヴィクトール。軍事強国として知られるアストラル帝国の第一皇子だ。周囲からは「氷の彫刻」だの「冷徹」だのと呼ばれているが、今の私の心臓は、壊れた時計のように激しく、熱く脈打っている。

視線の先にいるのは、この国の第一王女、エルゼ。

彼女は今、この国の夜会会場の隅で、見るに耐えない誹謗中傷の嵐に晒されていた。

「エルゼ! 貴様のような、聖女の力も使えず、ただ暗く俯いているだけの女は我が国の恥だ。今この瞬間をもって婚約を破棄し、追放を命じる!」

傲慢な声で叫ぶのは、彼女の婚約者であったはずの第二王子だ。隣には、派手なドレスを着た、いかにも「自称・聖女」といった風情の女が勝ち誇った顔で寄り添っている。

エルゼは何も言い返さない。

ただ、ぼろぼろと涙をこぼし、汚れた床を見つめている。

彼女の魔力は、その控えめな性格ゆえに「微弱」だと過小評価されているが、私には見える。彼女が歩いた跡に、奇跡のような清廉な魔力の残滓がキラキラと舞っているのが。

彼女は、泥の中に隠された、世界で最も美しいダイヤモンドだ。

「おい、返事もしないのか、この無能が!」

第二王子が、あろうことかエルゼの細い肩を突き飛ばそうと手を上げた。

私の理性は、そこで完全に消失した。


「その汚い手を、私の『宝』に向けないでもらおうか」


冷気と共に放った私の言葉に、会場が凍りついた。

私は群衆を割り、震えるエルゼの前に立った。彼女の華奢な体を、私の外套で包み込む。

「ヴィ、ヴィクトール皇子!? なぜ貴殿がここに……」

「貴国との同盟の再考に来たのだが……どうやらその必要はなさそうだ。こんな至宝をドブに捨てるような愚かな国と結ぶ契約など、紙屑に等しい」

私はエルゼの腰を抱き寄せ、彼女の耳元で囁く。

驚きで大きく見開かれた彼女の瞳は、夜空の星よりも美しい。

「エルゼ様。私と共に来てください。貴女を貶める者は、私が一人残らず地獄へ送ります。……その代わり、貴女のこれからの時間は、すべて私に捧げていただきますが」

エルゼの小さな手が、私の服をぎゅっと掴んだ。

それが、私の勝利の合図だった。


第二章:略奪から始まる、過保護な甘やかし

エルゼを横抱き(お姫様抱っこ)にし、呆然とする王侯貴族たちを背に、私は迷わず魔導馬車へと乗り込んだ。

私の腕の中で、彼女は小刻みに震えている。

(……ああ、なんて細いんだ。折れてしまいそうだ)

私の胸を焦がすのは、彼女を傷つけた者たちへの煮え繰り返るような怒りと、それ以上に、ようやく彼女を独り占めできたという狂おしいほどの悦びだ。

「……あの、ヴィクトール様。私は、追放された身です。連れて行っても、あなたにご迷惑を……」

蚊の鳴くような声。震える睫毛。

彼女は自分がどれほどの価値を持っているか、微塵も気づいていない。

「迷惑? 冗談はやめてくれ、エルゼ様。私は、貴女を私の国へ迎えるために、三年前からこの機会を狙っていたのだ」

「……え?」

驚愕に目を見開く彼女の頬に、私は指を滑らせる。

本当だ。隣国のパーティーで初めて彼女の清らかな魔力と、それ以上に澄んだ瞳を見たあの日から、私は彼女を奪う計画を練っていた。あのアホな王子が自爆するのを、今か今かと待ち構えていたのだ。

贅の限りを尽くした「癒やし」

帝国へと向かう馬車の中。私はあらかじめ用意しておいた「最高級の癒やし」を彼女に浴びせる。

• 極上のブランケット: 伝説の獣、月光羊の毛で編んだ、雲のような肌触りのもの。

• 聖なる雫の紅茶: 一滴で心身の疲れを癒やす、帝国の秘宝。

• とろけるような菓子: 彼女の好みを調べ尽くして作らせた、王宮菓子職人の特製品。

「まずは食べなさい。貴女は痩せすぎだ」

「あ……はい……」

「……おいしい。こんなに甘いもの、初めてです」

一口食べた彼女が、ふわりと、本当に微かに微笑んだ。

その瞬間、私の心臓は爆発するかと思った。

(……可愛い。破壊的な可愛さだ。今すぐ抱きしめて、一生離したくない。だが、怖がらせてはいけない。私は冷徹な皇子だ。落ち着け、私……!)

「そうか。それは良かった。帝国の城にはもっと旨いものがある。それから、貴女に相応しいドレスも、宝石も、最高の寝室もすべて用意してある」

「えっ、でも、私は何も持っていないのに……」

「貴女がいれば、それでいい。貴女の魔力は、この世界を救うほど清らかだ。それを理解できない愚か者は、私がすべて滅ぼしてやったから安心しなさい」

「……滅ぼして……?」

首を傾げる彼女。

実は馬車を出す直前、部下に命じて、彼女を虐げた貴族たちの利権をすべて叩き潰し、経済的に詰ませるよう指示を出しておいたのだが、それは彼女には内緒だ。

「エルゼ様、これからは私が貴女の盾であり、剣であり、……そして、愛を捧げる唯一の男となります」

私は彼女の手を取り、その指先に深く、執拗に口づけを落とした。

彼女の頬が朱に染まる。

(逃がさない。この国に足を踏み入れた瞬間から、貴女は私の皇妃として、永遠に私の腕の中で愛される運命なのだから)


第三章:深夜の執務室、無防備な聖女の「破壊力」

アストラル帝国の皇宮。私の自室に隣接する最高級の客室に彼女を押し込んでから三日。

エルゼは少しずつ、この環境に慣れてきたようだ。だが、長年虐げられてきた彼女の心は、まだ「自分が愛される価値がある」とは信じ切れていない。

(……ああ、もどかしい。今すぐ抱きしめて、私の心臓の鼓動を聴かせてやりたい。貴女だけを求めていると)

深夜。私は山積みの公務を片付けていた。

そこへ、遠慮がちなノックの音が響く。

「……ヴィクトール様。まだ、起きていらっしゃいますか?」

扉の隙間から顔を出したのは、貸し与えたネグリジェに薄手のガウンを羽織っただけのエルゼだった。

……正直、心臓が止まるかと思った。

「エルゼ……? どうした、眠れないのか」

「あの……。ヴィクトール様が、お疲れではないかと思って……。その、お茶を淹れてきたんです」

彼女が持っていたのは、小さなトレイに乗ったハーブティー。

よく見れば、彼女の指先には微かに光が宿っている。彼女の魔力——聖女の力が、無意識のうちに茶葉に宿り、極上の癒やし効果を与えているのだ。

「……わざわざ、貴女が淹れてくれたのか?」

「はい。私にできることなんて、これくらいしか……」

俯く彼女の首筋が白い。

私は立ち上がり、彼女の元へ歩み寄った。私の影が彼女を覆うと、エルゼはびくりと肩を揺らす。

「……怖いか? 私が」

「いえ、怖くありません。ただ……ヴィクトール様が、あまりにかっこよくて。私のような女を、どうしてここまでしてくださるのか、不思議で……」

(……は? 今、かっこいいって言ったか? この子が?)

私の脳内で何かが弾けた。

冷徹な第一皇子という仮面が、音を立てて剥がれ落ちていく。

私は彼女の手からトレイを奪い取って机に置くと、そのまま彼女を壁際に追い詰めた。

「エルゼ。何度も言わせないでくれ。私は、貴女が欲しいんだ。貴女のその清らかな心も、震える肩も、……私に向けるその瞳も、すべてだ」

「ひゃっ……」

彼女の小さな顎を指でくいと持ち上げる。

至近距離で、彼女の甘い吐息が私の肌をかすめる。

「貴女を『無能』と呼んだ奴らは、節穴どころか目が腐っている。……これからは、私以外にそんな顔を見せてはいけない。いいか?」

「……ヴィ、ヴィクトール様……」

潤んだ瞳で見つめ返され、私の理性が悲鳴を上げる。

私は彼女の額に、慈しむように、けれど深く、刻みつけるような熱い口づけを落とした。

「今夜は、私のそばで眠りなさい。……安心しろ、手出しはしない。……いや、努力はする。だが、貴女がそんなに可愛い顔で私を頼るなら、私もいつまで『紳士』でいられるか自信がない」

「えっ、あの、それは……っ」

顔を真っ赤にして、私の胸の中に顔を埋めるエルゼ。

(……よし。この反応、たまらん。可愛すぎて死ぬ。絶対に誰にも渡さない。このまま一生閉じ込めておきたい)


第四章:愚か者の再来と、真なる聖女の「奇跡」

帝国主催の夜会。

私はエルゼの腰を抱き寄せ、煌びやかな大広間へと足を踏み入れた。

彼女が身に纏うのは、最高級の魔糸で織られた、夜空を溶かしたような深い紺色のドレス。私の瞳の色と同じ色だ。

「……ヴィクトール様、皆さん、私を見ています。……怖いです」

「案ずるな。皆、貴女のあまりの美しさに魂を抜かれているだけだ。……正直、今すぐこの場から連れ去って、私だけの部屋に隠しておきたいくらいだ」

耳元で囁くと、彼女は耳まで真っ赤にする。

(……よし、可愛い。この反応だけで、今日一日激務をこなした甲斐があったというものだ)

だが、その平穏を、不愉快なノイズが切り裂いた。

「エルゼ! こんなところにいたのか、この無能女め!」

現れたのは、あの第二王子だ。隣には、以前よりもさらに派手(で下品)なドレスを着た自称聖女の女を連れている。どうやら、エルゼを追放してからというもの、彼らの国は急激に荒廃し始めたらしい。

「ヴィクトール皇子! その女は偽物だ! 我が国の真の聖女は、このリリアなのだ! その女は、聖獣さえも怯えさせる呪われた女だぞ!」

会場がざわつく。

エルゼは私の腕の中で小さく震えた。

「……そうです。私は、聖獣様にすら拒絶されて……」

「いいや、それは違う。エルゼが偽物の聖女なら、どうしてアストラル帝国の守護龍様は、あんなに嬉しそうにしているのだ?」

会場の窓の外。

帝国の象徴である、巨大な「蒼氷龍」が、エルゼの姿を認めた途端に窓を突き破らんばかりの勢いで顔を近づけていた。

「……え?」

エルゼが呆然と呟く。

蒼氷龍は、恐ろしい顎を彼女に近づけると……まるで甘える猫のように、彼女の手に鼻先を擦り付けた。

その瞬間、エルゼの体から、目も開けられないほどの純白の光が溢れ出した。

枯れていた会場の花々が一斉に咲き乱れ、出席者たちの疲れや傷が癒えていく。

「な……なんだ、この圧倒的な神聖魔力は……っ!」

「馬鹿な……。エルゼは無能だったはずだ!」

私は、腰を抜かした第二王子の喉元に、冷徹な視線を突き刺した。

「無能なのは、貴様だ。……彼女は『聖女』などという安っぽい枠に収まる存在ではない。……彼女は、世界そのものに愛される『大聖女』だ。それを、貴様はゴミのように捨てた」

私は一歩踏み出し、怯える第二王子の胸ぐらを掴み上げた。

「私のエルゼを傷つけ、汚れた言葉を投げかけた罪……万死に値すると思わないか?」

「ひっ……! 助けてくれ……っ!」

「助ける? 貴様がエルゼに助けを求めたことがあったか? ……消えろ。二度と、私の視界に、そして彼女の記憶に、その汚い姿を晒すな」

衛兵に命じて、喚き散らす男たちを地下牢へと引きずらせる。

会場は静まり返り、人々は奇跡を体現したエルゼに、畏敬の念を込めて膝をついた。

エルゼは驚きに満ちた顔で、自分の手を見つめている。

私は彼女を後ろから抱きしめ、首筋に深く、熱い口づけを落とした。

「……見たか、エルゼ。貴女こそが、私の——そしてこの国の、唯一無二の宝だ」

「ヴィクトール様……。私、あなたのお役に立てるでしょうか……?」

「役に立つなどという言葉は不要だ。……ただ、私の愛を、一生かけて受け取ってくれればそれでいい」

(……さて、邪魔者は消した。あとは夜の城で、彼女を甘やかして、泣かせて、……私のものだと教え込むだけだ)


第5章:深夜の誓いと、解かされる「呪い」

夜会の喧騒が遠ざかる。

私はエルゼを抱き上げたまま、皇宮の最上階にある私の寝室へと滑り込んだ。

扉を閉めた瞬間、静寂が二人を包む。

「……あ、あの、ヴィクトール様。もう歩けます。降ろしてください……」

エルゼの頬は、先ほどの魔力解放の名残か、あるいは私の腕の中にあるせいか、林檎のように赤く染まっている。

「嫌だと言ったら?」

「えっ……」

「今夜の貴女は、あまりにも眩しすぎた。……龍にまで懐かれて、国中の貴族があの奇跡を目の当たりにした。明日には、貴女を『国の至宝』と崇める声で溢れかえるだろう」

私は彼女をベッドへ優しく横たえ、その上に覆いかぶさるようにして両手をついた。

「それが……怖くてたまらないんだ。誰かがまた、貴女を私の手から奪おうとするのではないかと」

「そんなこと……ありません。私は、ヴィクトール様のものだと言ったはずです」

エルゼが必死に、けれど震える手で私の頬に触れた。

彼女の指先から、温かい魔力が流れ込んでくる。

「……あの、ヴィクトール様。一つ、聞いていただいてもいいですか?」

「なんだ」

「前の国で、私は聖獣様に拒絶されていました。だから、私は『偽物』なのだとずっと思っていて……。でも、今日の龍様は、とても温かかった。あれは、どうしてだったのでしょう?」

私は彼女の指に自分の手を重ね、指を絡ませた。

「……簡単なことだ。前の国の聖獣とやらは、貴女の『あまりに強大で純粋すぎる魔力』に畏怖して近づけなかっただけだろう。……あるいは、あの無能な第二王子の穢れた心に当てられて、貴女を守るために距離を置いていた可能性もある」

私は彼女の耳元に唇を寄せる。

「だが、我が帝国の蒼氷龍は、強き者を愛する。……そして私も、同じだ」

「っ……あ……」

首筋を甘く噛むと、エルゼが小さな悲鳴を上げた。

その声が、私の胸の奥に燻っていた欲望に油を注ぐ。

「……エルゼ。もう、『役に立つか』なんて二度と言うな。貴女が存在している、その事実だけで、私は救われているんだ」

(……ああ、だめだ。これ以上言葉を重ねる必要なんてない。ただ、この愛らしい唇を塞ぎ、彼女が私の名前以外を呼べないようにしてしまいたい)

「ヴィクトール……さま。……好き、です。……愛して、います」

たどたどしく紡がれたその告白は、どんな攻撃魔法よりも強力に私の理性を粉砕した。

「……そうか。なら、後悔しても遅いぞ。……今夜は、一睡もさせないからな」

私は彼女のドレスの背の紐を、迷いなく解いた。

月の光に照らされた彼女の肌は、先ほどの奇跡の光よりも、ずっと、ずっと美しかった。


第6章:後悔してももう遅い、と愛の終止符

翌朝。カーテンの隙間から差し込む陽光で目を覚ますと、腕の中にはまだ夢心地のエルゼがいた。

昨夜の情事の名残で、彼女の白い肩には私がつけた痕がいくつか残っている。

(……ああ、幸せだ。このまま一生、こうして彼女の寝顔を眺めていたい)

だが、部屋の外では不穏な空気が漂っていた。

私の腹心から、念話が届く。

『殿下。例の「捨てた側」の国王が、娘の返還を求めて国境まで兵を出してきました。「聖女がいなくなってから天変地異が止まらない、あれは我が国の所有物だ」と喚いております』

私は、腕の中の愛しい宝物を起こさないよう、静かにベッドを抜け出した。


皇宮の謁見の間。

そこには、ボロボロになったエルゼの父——隣国の王が、震えながら平伏していた。

昨夜の夜会で捕らえた第二王子の父親だ。

「ヴィクトール皇子! どうか、どうかエルゼを返してくれ! 彼女がいなくなってから、我が国の水源は枯れ、大地は腐り始めた! あの娘は我が国の聖女なのだ!」

私は玉座に深く腰掛け、冷淡に彼を見下ろした。

「……面白いことを言う。貴様らは彼女を『無能』と呼び、泥水を啜らせ、挙句の果てに婚約破棄して追放した。……違ったか?」

「そ、それは……リリアの言葉を信じてしまっただけで……!」

「黙れ。貴様らが信じようが信じまいが、私には関係ない。……ただ、私のエルゼを傷つけた。その一点において、貴公らの国を許すつもりはない」

私は、あらかじめ用意していた書面を投げ捨てた。

それは、隣国の経済を完全に掌握し、属国化するための宣戦布告に近い最後通牒だ。

「聖女の恩恵は、愛し守る者にのみ与えられるものだ。利用し、踏みにじる者に貸す力など、彼女の中には一滴も残っていない」

「ひっ、ひぃ……! お、お願いだ、せめて一目だけでもエルゼに合わせ……」

「……その名を、気安く呼ぶな」

私の周囲に、氷の魔力が渦巻く。謁見の間の床が凍りつき、あまりの重圧に王が吐血した。

「彼女は今、私の腕の中で幸せに眠っている。……貴様のような『過去の亡霊』を見せて、彼女の心を曇らせるわけにはいかないのだ。……連れて行け。二度と、彼女の耳にこの国の汚れを届かせるな」

嵐のような冷徹さを消し去り、私は再び寝室へと戻る。

扉を開けると、ちょうど目を覚ましたエルゼが、私のシャツを羽織って不安げに周囲を見渡していた。

「……ヴィクトール、様? どこへ行っていたのですか?」

寝ぼけ眼で私を探す彼女の姿に、胸が締め付けられる。

私は彼女に歩み寄り、その華奢な体を強く抱きしめた。

「……少し、害虫駆除をな。……おいで、エルゼ。今日はいい天気だ。二人で、これからの『私たちの国』の話をしよう」

「はい……。ヴィクトール様がいてくだされば、私はそれだけで……」

(そうだ。貴女を泣かせる過去はすべて私が消した。……これからは、私が貴女を愛でる音だけで、その耳を満たしてあげよう)


第7章:世界で一番幸せな花嫁と、私の永遠

アストラル帝国の建国記念日。それは、私とエルゼの結婚式の日でもあった。

帝都の目抜き通りには、数えきれないほどの民衆が集まっている。彼らの手には、エルゼの魔力によって一年中咲き誇るようになった「聖女の薔薇」が握られていた。

「ヴィクトール様……。あんなにたくさんの人が、私を祝ってくれています。……夢みたいです」

控え室で、純白のドレスに身を包んだエルゼが、鏡越しに私を見て微笑んだ。

その美しさは、もはや言葉を絶していた。私の瞳と同じ色のサファイアが彼女の胸元で揺れている。それは、彼女を一生離さないという私の誓いの証だ。

「夢ではない。……エルゼ、貴女がこの国に来てから、すべてが変わったんだ。荒廃していた大地は潤い、人々は笑顔を取り戻した。……そして何より、私が『愛』というものを知った」

私は彼女の背後に立ち、その細い肩を抱き寄せた。

かつて彼女を捨てた隣国は、今や我が帝国の直轄領となり、再建の途上にある。

あの第二王子や自称聖女は、今もなお、自分たちが捨てた「宝石」がいかに眩しく輝いているかを、牢獄の隙間から見上げることしかできない。

それが、彼女を傷つけた者たちへの、私からの永久に続く罰だ。

「……さあ、行こうか。世界中に見せつけたい。私が手に入れた、唯一無二の、最高に可愛い妻を」

「ふふ、もう、ヴィクトール様ったら……」

エルゼが私の腕に手を添える。

大聖堂の扉が開いた瞬間、地を揺らすような歓声が上がった。

かつて「地味で暗い」と蔑まれた少女は、今、世界で最も気高く、愛される皇妃として、光の中を歩んでいる。

誓いのキスを交わす直前。

私は彼女の耳元で、誰にも聞こえない声で囁いた。

「……今夜も、寝かせないからな。覚悟しておけ」

「っ……!? この、こんな時に何を……っ」

顔を真っ赤にして俯く彼女。ああ、たまらない。

何年経っても、どれほど彼女を愛でても、この独占欲と愛しさは枯れるどころか溢れる一方だ。

(……見ろ、世界よ。この聖女は、私のものだ。……そして私は、彼女の愛という魔法に一生、搦め取られて生きていく。……これ以上の幸福なんて、どこにもない)

私は、照れ隠しに私の服をぎゅっと掴む彼女の唇を、情熱的に、そして誰よりも深く奪った。

鳴り止まない祝福の鐘の音。

それは、私と彼女が紡ぐ、永遠に続く恋物語の序曲に過ぎなかった。

最後までお読みいただきありがとうございました!もし少しでも『ヴィクトールの溺愛っぷりが最高!』『エルゼが幸せになって良かった』と思っていただけたら、下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして応援いただけると、執筆の励みになります!ブックマークもぜひお願いします!

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