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「神速の指先」を聞き間違いで授かった僕が実は最強だった件  作者: ギア丸


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第26話:【シリアス?】レガシー家を滅ぼした黒幕判明。敵は『鼻のない魔族』!?

 地下倉庫に、かつてない禍々しい魔力が満ちた。

 アイリスが腰の短剣に手をかけ、ポチが「グゥ……」と低い唸り声を上げる。

「……ようやく見つけたぞ。レガシー家の生き残り、ヴォルガッシュよ」

 闇の中から現れたのは、漆黒の法衣を纏った男――魔族の幹部、無貌むぼうのハルパス。

 彼の顔を見た瞬間、俺の脳裏に、実家が没落したあの日の夜がフラッシュバックした。

「お前か……! 父上を陥れ、我が家に禁忌の呪いをかけたのは!」

「いかにも。貴様の一族が持つ『神聖な指先』は、我ら魔族の計画を阻む鍵だった。ゆえに、卑俗な『鼻ほじり』の呪いへと書き換えてやったのだ。……ククク、今や見る影もないな」

 激昂した俺は、迷わず踏み込んだ。

「ふざけるな! 呪われてようがなんだろうが、この指が貴様を屈服させる! スキル発動、『真・鼻孔貫通トゥルー・ノーズ』!!」

 俺の指先が、音速を超えてハルパスの顔面へと迫る。……だが。

「――無駄だ」

 スカッ。

 俺の指先は、虚空を突いた。

 信じられないことに、ハルパスの顔面には、目と口こそあるものの、『鼻』が完全に存在しなかったのだ。 つるりとした皮膚が広がっているだけである。

「……なっ!? 鼻が……ない!?」

「我らハルパス一族は、呼吸を皮膚で行う。ゆえに、貴様の『鼻をほじって精神を掻き乱す』という姑息な術は、私には一ミリも通用せん!」

「そ、そんな馬鹿な……。俺の最強の武器が、ターゲット不在だと……!?」

 ヴォルガッシュ、人生最大のピンチ。

 鼻というゴールを失った俺の指先は、空中で虚しく震えるしかなかった。

「死ね、ヴォルガッシュ! 『暗黒魔弾』!!」

 ゼロ距離から放たれる魔力の塊。

 だが、その一撃を、全裸にアイリスのカーディガンのミレーヌが魔法壁で防いだ。

「ヴォルガッシュ! シャキっとしなよ! 鼻がないなら、別の『隙間』を探せばいいじゃないか!」

「隙間……? だめだミレーヌ。俺の指は、鼻に特化しすぎて、他の器官じゃうまく『ノリ』が掴めないんだ!」

「主よ、情けないぞ! 我が鼻を貸してやろうか? いや、それも意味がないな。……アイリス! 何か策はないのか!」

 アイリスは、ハルパスの姿を冷静に分析していた。

「……ヴォルガッシュ様。ハルパスは言いました。『皮膚で呼吸している』と。ならば、彼の体全体が、いわば**『巨大な鼻』**と同じだとは考えられませんか?」

「体全体が……鼻?」

「ええ。彼の法衣の隙間、毛穴の一一つ、それらすべてが呼吸口……。貴方の指が、一箇所ではなく、**『全身の毛穴』**をターゲットにすれば……!」

 俺の脳内に、新たな回路が繋がった。

 そうか。鼻という形にこだわる必要はなかったんだ。

「……分かった。アイリス、ミレーヌ、ポチ! 三秒だけ、あいつの動きを止めてくれ!」

「いいよ! 『脱衣・超重力ヌード・グラビティ』!!」

「我の咆哮で、魂ごと凍りつけ!!」

 三人の全力の支援が、ハルパスの一瞬の隙を作る。

「おのれ、無駄だと言っている……が、な、なんだその構えは!?」

 俺は右指を突き出すのではなく、五本の指すべてを扇状に広げた。

「ハルパス……。お前に鼻がないなら、俺がお前自身を『鼻』にしてやる!

 スキル超進化――『全自動・全身毛穴掃除フルボディ・ポア・クリーニング』!!!」

 ズバババババババババババババババッ!!!!!

 もはや残像すら見えない。俺の五本の指が、ハルパスの全身にある何万という毛穴に、光速で出入りを繰り返す。

「あ、あああ……!? な、何だこの感覚は……! 全身を、内側から同時に掃除されているような……っ、く、苦しい……いや、快感!? どちらだぁぁぁ!!」

「さらに、魂まで屈服しろ! 『全自動・土下座』――超圧縮ブラックホール!!」

 ズドォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!

 地下倉庫の床が数メートル陥没した。

 鼻のない魔族ハルパスは、全身の毛穴から不浄な魔力をすべて掻き出され、赤ん坊のような無垢な表情で、地深く埋まりながら土下座していた。

「……ふぅ。鼻がなきゃ、作ればいいだけの話だったな」

「ヴォルガッシュ様。今のは……正直、見ていて鳥肌が立ちました。……不潔を通り越して、もはや天災です」

 アイリスが、遠くから消毒液を撒きながら言った。

「勝ったぞ主よ! さあ、こいつからレガシー家の秘密を……あ、寝ておる」

 ハルパスは「……全身の通りが、良すぎる……」と呟き、あまりの清涼感に失神していた。

 こうして、宿敵との第一戦は、ヴォルガッシュの「指先の進化」という、またしても誰も得をしない(むしろハルパスが一番気持ちよくなっただけの)結末で幕を閉じた。

 だが、レガシー家の没落の裏には、さらなる大きな影が潜んでいることを、俺たちはまだ知らなかった。

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