第24話:ミレーヌの里帰り。全裸の聖地『脱衣の村』を救え
地下倉庫に届いた一通の「布」……。いや、それは手紙ではなく、丁寧に折り畳まれた**「一枚のパンツ」**だった。そこには魔法文字でこう記されていた。
『ミレーヌよ、村の守護聖衣(服)が暴走した。今すぐ全裸で戻れ』
「……ヴォルガッシュ、故郷がピンチみたいだ。ちょっと付き合ってくれないかい?」
ミレーヌはいつになく真剣だった。もっとも、いつも通り服はほとんど着ていないが。
一行がたどり着いたのは、深い霧に包まれた隠れ里『アン・ドレス村』。そこは「魔力効率を極めるため、住民全員が全裸(またはそれに準ずる格好)で生活する」という、王国の法も恥じらいも届かない聖地だった。
この村の“脱衣文化”は、ミレーヌの家系が代々研究してきた
『魔力効率術式』の源流でもあるという。
「……うわぁ。視界の暴力がすごいな、この村」
ヴォルガッシュは目を逸らしながら呟いた。
「お兄様、見てはいけませんわ! でも、皆さんとても健康的で……あ、あの村長さんのヒゲ、服の代わりになってますわ!」
リーネが純粋な瞳で、腰まで届くヒゲだけで股間を隠した村長を指差した。
「よくぞ戻った、ミレーヌ。……して、そちらの『厚着の不審者』は?」
村長が、服(フルプレート鎧)を着ているヴォルガッシュを指差して眉をひそめた。
「私の仲間だよ、父さん。……それより、暴走したっていうのは?」
村の中心にある『聖なるクローゼット』。そこには、かつて村を救った英雄が残した「伝説のフルスーツ(完全防護服)」が封印されていた。だが今、そのスーツが負の魔力に汚染され、村人たちに**「強制的に服を着せる」**という恐ろしい呪いを撒き散らしていた。
「ひぃぃ! やめてくれ! 私はウール100%は肌に合わないんだ!」
「ああっ、私の美しい魔力回路が、ポリエステルに遮断されていく……!」
空中を舞う「呪われたシャツ」や「邪悪なズボン」が、逃げ惑う全裸の村人たちを次々と捕らえ、強制的に着衣させていく。魔導師にとって、布は魔力を削ぐ拘束具。このままでは村人全員が魔力欠乏症で死んでしまう。
「ヴォルガッシュ、あのクローゼットを止めて! 物理攻撃は服に吸収されるけど、あんたの指なら隙間を突けるはずさ!」
「よし、任せろ! ……といっても、服を相手にどう戦えばいいんだ!?」
俺は襲い来る「呪われたネクタイ」を指先で弾き飛ばし、巨大なクローゼットへと肉薄した。扉の隙間からは、次々と新作の冬物が射出されている。
「狙うは……クローゼットの『蝶番』と『鍵穴』だ!」
俺は右指を突き出し、光速の領域で振動させた。
「スキル発動――『超高速鼻ほじり・鍵穴蹂躙』!!」
ズボボボボボボボボッ!!!
オリハルコンの指先が、クローゼットの鍵穴に深く突き刺さり、中の複雑な魔導構造を「鼻の奥の異物」のごとく徹底的に掻き出した。
ガリッ、と嫌な音がして、クローゼットの防衛システムが停止する。
「トドメだ! これ以上、この村に布を増やすな! 『全自動・土下座』――プレス・アイロン!!」
ズドォォォォォォォォォンッ!!!!!
強力な圧力がクローゼットと、そこから溢れ出していた大量の「呪われた服」を地面に叩きつけた。あまりの圧力により、服のシワは一本残らず伸び、さらに全ての布地が地面にひれ伏す形で固定された。
「……ふぅ。これで、もう服は動かないぞ」
静寂が戻った村。呪いから解放された村人たちは、即座に「強制着衣」を脱ぎ捨て、本来の開放的な姿に戻っていった。
「おお……救世主よ! 服を着た不審者だと思っていたが、貴様こそが真の『脱衣の守護者』だ!」
村長が、ヒゲを振り回しながらヴォルガッシュの手を握った。
「……いや、俺は別に脱がせたくてやったんじゃ……」
「ヴォルガッシュ様。村長が、お礼に村の名産品である『透ける魔導糸』で作った特製全身タイツを贈りたいと言っています。……どうしますか?」
アイリスが、これ以上ないほど冷ややかな目で聞いてきた。
「いらねえよ!!」
こうしてミレーヌの里帰りは、ヴォルガッシュが「全裸の聖地の英雄」になるという、またしても社会的な尊厳を削る形で幕を閉じた。
帰り道、ミレーヌはスッキリした顔で「やっぱり故郷は空気がいい(肌に直接当たるから)」と笑っていたが、ヴォルガッシュは自分の鎧のボタンが一つ外れているだけで、なんだか落ち着かない気分になるのだった。




