第15話:決闘。最強の盾を『鼻ほじ』で貫通して勝利
カイルたちがパンツ一丁で敗走してから数日。王都はさらなる刺客を送り込んできた。
「我が名はバッシュ! 王国最強の盾――『不動の城壁』の名を冠する騎士である!」
地下倉庫の前に現れたのは、全身を巨大な重装プレートで覆い、さらに自身の身の丈ほどもある**超重層魔導盾**を構えた巨漢だった。
「ヴォルガッシュ! 貴様の不浄な技、この最強の盾の前では無力と知れ! 鼻もほじらせん、土下座もさせん! 全身をガードした私に死角はない!」
バッシュの言葉通り、彼の盾は魔法耐性も物理耐性も極大。おまけに足元まで完全にガードされており、重心が低いため『全自動・土下座』の強制圧力にも耐えうるよう設計されていた。
「……アイリスさん。あんなの、どうやって倒せってんだよ。鉄球だぞ、あれ」
「どうにかしてください。彼がそこに居座るせいで、ギルドの地下物資が搬入できません。……あと、ミレーヌ様が『あんなに硬いものがあるなら、ぶつかって服を破りたい』と物騒なことを言っています」
俺はため息をつき、ポチを連れてバッシュの前に立った。
「……バッシュと言ったな。本当に行くぞ? 後悔しても知らないぞ」
「ふん! 貴様の指など、この盾を傷つけることすら叶わんわ! さあ、こい!」
俺は右手を突き出し、マッハの速度で踏み込んだ。
「スキル発動――『超高速鼻ほじり・精密探査』!!」
キンキンキンキンキンッ!!
オリハルコンの指先が、盾の表面を乱打する。だが、流石は王国最強の盾。表面に火花が散るだけで、貫通はできない。
「はははは! 無駄だ無駄だ! 貴様の指先攻撃など、ただの肩叩きにすぎん!」
「……そうか? 俺が狙っているのは、盾じゃない」
俺はニヤリと笑った。
バッシュの盾には、外を見るための**「幅一センチほどの覗き穴」**があった。
「なっ……よせ! まさか貴様――」
「言ったろ。俺の指は、隙間を見つけるプロなんだよ! 『極細・鼻ほじアタック』!!」
俺は指先を細く突き出し、盾の覗き穴へと正確にブチ込んだ。
そのまま、兜の隙間をすり抜け――ターゲットにコンタクトした。
「――ぶべらっ!!?」
バッシュの鼻腔に、マッハ振動の指先が直撃した。
最強の防御を誇る盾の裏側で、彼の鼻の中だけが未曾有の災害に見舞われていた。
「あ、ああああああ! 痛い! 痛いし痒いし、なんか変な汁が出てきたぁぁぁ!! 抜いて! 盾を捨てるから今すぐその指を抜いてぇぇぇ!!」
バッシュは悲鳴を上げながら、自慢の盾を放り投げ、両手で鼻を押さえてその場をのたうち回った。
「勝負あり。……どんなに盾を固めても、呼吸のために穴を開けてる限り、俺の指からは逃げられないぞ」
「……ヌシ、相変わらずえげつない戦い方をするな。我ですら、少し同情するぞ」
ポチが冷めた目でバッシュを見下ろした。
「ヴォルガッシュ様。見事な……いえ、最低な勝利でした」
アイリスが、汚物を見るような目(褒め言葉)を向けてくる。
「王国最強の盾が、指一本で泣きながら降伏した……。この噂が広まれば、もう誰も貴方に挑もうとはしないでしょう。……物理的な意味でも、精神的な意味でも」
バッシュは「鼻の奥が……鼻の奥がぁぁ……」とうわ言を言いながら、担架で運ばれていった。
こうして、最強の盾は「史上最も屈辱的な方法」で陥落した。
俺の指先は、また一つ、語るに落ちる伝説を作り上げてしまった。
「お兄様! 隙間を狙うその精密さ、刺繍の天才になれるかもしれませんわ!」
「リーネ……もう兄ちゃん、一生刺繍はしなくていいかな……」
地下倉庫へ戻る俺の背中に、夕陽が虚しく差し込んでいた。




