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交際0日  作者: 水嶋


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言葉の裏側

「あの後、櫻子さんに教えてもらった様に描いたら凄く喜んで貰えました!有難うございます!」



律儀に荒木さんは腰の入ったお辞儀をしてお礼に来た。菓子折りを持って。


真面目な人だなあ…やっぱ軍人なんかなあ…あ、警察だったか。似たようなもんだな…



「いえいえ、どういたしまして。お役に立てて嬉しいです。」


「この子は…犯人に家に押し入られて家族を目の前で殺されてまして…隠れていて助かった子なんです…事件の後からショックで言葉が話せなくなってて…犬が好きだったらしいので描いてあげたかったんです。笑った顔を初めて見られて本当に良かったです!」


うわあ…壮絶な理由だった…


そのファーストコンタクトがあの絵…新たなトラウマ追加になって無ければ良いけど…


でも…


荒木さんってこんな見た目や言動は軍人みたいなのに不器用で優しい人だなあ…





なんだかこれでお別れが嫌になってしまった。



「なら、お礼に…」





○○○○○○○○○○





荒木さんが私の部屋でTシャツと短パン姿で椅子に座っている。

手を膝の上にグーで乗せている。


「荒木さん、もっと自然に座って下さい。何か突撃前の待機みたいになってます」


「は!はいっ!すみません!こんなだらし無い格好で!若い女性の前で緊張しています!」



私は絵を教えたお礼に荒木さんにモデルを頼んだ。


本当はヌードが描きたかったけどいきなりは警戒されそうだし、何か淫行罪みたいなんで捕まりそうだったから譲歩してこの姿に指定した。


「その格好は私がお願いしたので荒木さんは全く気にしないで下さい。私は普段授業でヌードも描くので、その程度では全く気になりません。荒木さんのヌードでも気になりませんが…」


と、いずれは脱がせる気でいる匂わせをした。これは本気。

まるでエロカメラマンにでもなった気分だ。



「ぬっぬっぬー!?」


あの強面の荒木さんが慌てていて可愛らしかった。



あんまり揶揄うと次に来てくれなさそうなんで、早々にデッサンを始めた。





○○○○○○○○○○





私は3年生になっていた。


昔からデッサンは得意で、大学でも A+を貰っていた。


絵画も見たまんまを描くのは得意だった。

でもただそれだけだった。


入試まではそれで良かった。


大学に入っても1〜2年まではそれで良かった。

ただ、今になってそれは通用していない。

一応大学もこの先作家になるのを見据えた評価になるので、ただ上手いだけでは点数は良くない。


品評会でも「まあ、上手いんだけどね…悪く言えばそれだけなんだよね…」

と言う評価だった。


将来作家になりたいと言う希望がある訳では無いけど、何だか今までの努力を否定されている様でやる気も失せて来ていた。


何かテーマにしたい物やモチーフにしたい物も見つからないでいた。


所詮絵画を習った所で大体はデザイナーなんかになる人が多い。


ならデザイン科に行っとけよって話なんだけど、やっぱり私は絵を描くのが好きで、最初からクライアントなんかの他人の意向で制作するんじゃ無くて、自発的に何か作りたいって青臭い事を考えていた。



そんなモヤモヤした気持ちを抱えながら学生生活を送っていた。


この間荒木さんをモデルにした作品を試しに仕上げて品評会で披露した。


「なんか…今回は凄く良いね!なんだろ…何か佐伯さんの欲望ってか…エロさが出てる…凄く面白い!」


と何故か高評価を貰っていた。

荒木さんを脱がせたい欲望がバレてる…

褒める所がやっぱ芸術とかしてる人って悪口と紙一重なんだけど…








上手いって言い換えればつまらないの悪口。


面白いってのは最上級の褒め言葉だ。


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