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第9話 三歳になりました

 三歳になりました。


 再誕してからの三年間はあまり語るべきことは……、無いこともない。そうですね、まずは生まれてすぐは何も出来ないので特筆するべきことは無いです。ただお父様が思いの外うっとおしかったくらいですね。やたらと抱きたがるし、頬ずりなんてされた日にはヒゲが痛くて大泣きしてやりましたよ。


 生まれてしばらくは一日の殆どを寝て過ごしていました。起きている時になんとか魔力を増やそうともしましたが、それが悪かったのか余計に寝る時間が増えた気がします。首が座るまではこんな感じでした。


 なんとかハイハイが出来るようになった頃にはある程度魔力も増やせていましたね。それでもまだまだ収納を開けるには足りない。ある目的のため、三歳になった今も魔力を増やす努力は継続中です。


 魔力を増やすには、できるだけ魔力を消費したらいいだけ。一番いいのは魔力をわざと枯渇させればいいのですけど、それはそれで問題があります。魔力が枯渇すると気を失ってしまう。ですので体が育ってない今、それをするのはあまり良くないですね。だけど今は無理をしてても魔力を増やさないといけない。


 ただ問題はある。現在の私の魔力はこの年齢にしては多すぎるのだ。そのために魔力を隠匿するのがそろそろ限界となっている。バレる前に空間魔法を使えるようにして収納を開き、隠匿が可能な魔道具を取り出せればいいのだけど。


 それに急がないといけない理由は他にもある。それは……。


「ロザリア様どちらですか~?」


 メイドが探しに来たということは、どうやらそろそろお昼のようだ。


「ここにいますわ」


 私は床に座っていた体勢から立ち上がりスカートを軽くはたく。先程まで読んでいた本を一冊手にとり図書室の入口へ向かう。


「リリンこれを戻してくださる?」

「はいかしこまりました。またロザリア様は難しい本を読んでいるのですね」

「難しいかしら?」

「難しいですよ。一応古代語は読めますけど、ロザリア様のようにすらすらとは読めませんね。それに読めても書いている事が私にはよくわかりませんし」


 リリンに本を渡すと、それを受け取ったリリンが本棚に戻してくれる。


「それでそろそろお昼ということでいいのよね」

「そうです。シーリア様がお部屋でお待ちです」

「一緒に食事ができるということは、今日は体調がいいってことかしらね」

「そうですね。お顔の色はずいぶんとよろしかったですよ」


 このメイドの娘はリリン・スーレル。スカーレッド家の寄子であるスーレル家の三女で、貴族学校を卒業した後に行儀見習いとしてスカーレッド家でメイドをしている。そして実はリリンは私の共犯者となっている。


「それにしてもロザリア様は本当に二度目の人生なのですね」

「またその話? 実際は少し違うのだけ似たようなものだと何度も言っているでしょ?」

「それはそうなのですけど。こうして私と二人のときと、グレイス様やシーリア様とご一緒のときとは全然違いますからね。あまり現実味がないといいますか」


 さて、なぜリリンを共犯者と呼び、私の事情を知っているのか。このリリンはメイドとして、そして貴族としてはポンコツだけど、ただ一つだけ人とは違う能力がある。


 前世ではその事に気が付かなかった。だけど今世に再誕した後、リリンの能力を知ることになった。その能力というのは……。


「ティアちゃんのご飯も用意していますからね~」

「にゃー」


 これだ。リリンには姿を隠しているティアの、正確には姿を隠している精霊の姿を見ることが出来るのだとか。それとしっかりは聞き取れないようですけど、精霊の声も聞くことが出来るらしい。つまり、私がティアと会話をしている所をバッチリと目撃されてしまったわけです。


 前世でも、たまに何も無い所を見ているなとは思っていた。その行動は、精霊を見ていたためだったのでしょうね。まあ、その頃の私はリリンとは親しくなかったというのもある。当時の私はなんというか結構すさんでいたとでも言えばいいのか、いわゆる悪役令嬢な感じだった。


 リリンと共にお母様の部屋にたどり着いた。リリンがノックをして部屋の中からの返事を受けて扉を開ける。控えるリリンの横を通りお母様のベッドの傍まで行く。


「お待たせしましたお母様」

「ローザは今日も図書室に行っていたの?」

「はい」

「ローザごめんなさいね。私が元気なら一緒に遊んで上げられるのに」

「私は大丈夫ですわ。リリンが一緒に遊んでくれていますから。お母様はゆっくりとご療養してくださいませ」

「ありがとう。それじゃあお昼を一緒に食べましょうか」

「はい」


 お母様はベッドから起き上がりベッドに座りなおす。丸いテーブルが運ばれてきて、その上に料理が並べられていく。お母様のお食事は消化の良い麦粥になる。あとは野菜の旨味を抽出するように作られた具なしのスープが用意されている。スープは本で得た知識と言って、料理長にお願いして作ってもらったものだ。


 スープの効果のおかげか、前世ではこの時期には既に起き上がることもできなくなっていたお母様も、今世では起きて食事を摂ることが出来ている。


 私の魔力が空間魔法の収納を使えるくらいまで増えれば、お母様を治すための治療薬が作れる。そのためにも急いで魔力を増やす必要がある。


(今度こそお母様を救ってみせるわ)


 お母様と食事をしながら、私は決意を新たにする。

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