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生まれ直した令嬢は二度目の生をわがままに突き進む  作者: 三毛猫みゃー


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第6話 変わった物

「泊まる場所も確保できたことだしなにか食べに行きましょうか」

「それがいいにゃ」


 街への入場手続きも問題なくできた。街の中は子供の頃によく来ていた頃と変わりないように見える。ただ変わっている事もあった。その一つが人以外の種族がいたことだ。


 事前にティアから人以外の種族がこの今の世界にはいると聞いてはいたけど、実際に見たことで初めて実感できた。エルフにドワーフそして獣人、その他にも小人族とでも言えばいいのか、見た目は子どもなのに昼間からお酒を飲んでいるのもいた。


 エルフやドワーフは書物の挿絵で見た通りの見た目をしていた。エルフは耳が長くて内包している魔力が人よりも多いように感じた。ドワーフはこちらも物語で書かれていた通りの、身長が低く、髭面で樽のような体系をしていた。ただその体は脂肪ではなく筋肉のようだった。


 そして獣人だ。獣人の見た目はわかりやすい。大体の獣人は頭の上に人とは違う耳がついている。うさぎのように長いものや、猫や犬のような耳。後は尻尾がゆらゆらしていたりする。ただそれ以外は人と変わらないようだ。てっきり全身が毛皮に覆われているのかと思っていたのだけど、そういうことはないようだ。


 特に種族間の軋轢などは無いようで、物語であるエルフとドワーフの仲が悪いということはなさそうだ。普通に同じテーブルでお酒を飲んでいる。


 街に入って驚いたのだけど、街の中はお祭りでもやっているのかと思うほど賑わっている。まだ日が暮れるまでは時間がありそうなのに、既にそこかしこで酒盛りが行われている。


「この時期にお祭りなんかあったかしら?」


 思い出そうとしたけどこの時期に祭りがあった記憶がない。全く同じ世界というわけではないので、私の知らない祭りがあってもおかしくは無いのかもしれない。


「おじさん串焼き三本」

「あいよ銅貨三枚だ、すぐに焼き上がるから少しだけ待ってくれ」


 銅貨を三枚串焼き屋のおじさんに渡す。


「私は先程この街についたのだけど今日って何かのお祭りなの?」

「ん? ああ知らずに来たのか。今日はというか正確には明日が本番なんだが、明日ここのご領主様の子どもが生まれるようでその前祝いをやっているんだ」

「えっと、子どもって生まれる日がわかるものなの?」

「何言ってるんだ? そんなの常識だろう。おまさんもしかしてものすごく田舎からでてきたのか?」

「まあそんなものですね」

「そうか、田舎だと浸透していないのかもしれんが、子どもの生まれる日を正確に見ることが出来る序産師ってのがいるんだ。序産師の腕によるが、生まれる日だけではなく生まれる時間までもわかるようだぞ」

「それはすごいですね」


 私の眠る前の世界には序産師なんて者はいなかった。もしかすると今の世界には人以外の種族が増えたことで、そういった私のいた世界とは違うそういった物が結構あるのかもしれない。


「ほら出来たぞ。熱いから気を付けてな」

「ありがとうおじさん」

「ちなみに酒はご領主様からの振る舞いでタダで飲めるから、そこらで貰えばいいぞ」

「わかったわ。ありがとう」


 葉っぱに包まれた串焼きを受け取り屋台から離れる。途中無料で配られているエールをもらい適当な裏路地へ移動する。


「はいティア」

「ありがとにゃ」


 串焼きを一本ティアに差し出すとティアは器用に串焼きを手に持ち食べ始める。ティアは精霊なので飲食は必要としていないのだけど別に食べても問題ない。味覚はあるようで、結構食べ物にはうるさい。


 私も串焼きを一本食べて、手に持つぬるいエールを魔法で冷やしてから喉に流し込む。


「はぁーおいしい」

「にゃーもほしいにゃ」


 ティア用にお皿を取り出して残っているエールをお皿にいれる。ティアはエールをぴちゃぴちゃ舐めては串焼きを食べ、またエールを舐めて串焼きを食べを繰り返している。私はその間に残っている串焼きの残り一本を食べきって、残ったエールを全部飲み干す。エールの入っていた木製のコップは無料で配られているところへ持っていけば再度エールをもらうことが出来る。


「ごちそうさまにゃ」

「一本銅貨一枚にしては美味しかったわね」


 串焼き一本とっても元の世界の物に比べると美味しさが違うように思える。この辺りも種族が増えた事に影響しているのだろうか? 元の世界で売られていた屋台の串焼きと言えば、塩を少しだけ振りかけただけのものだった。だけど先程の串焼きは塩ではなく、タレがたっぷり染み込んでいた。


「お腹も落ち着いたし、街を見て回りましょうか」

「そうにゃね」


 ティアがふよふよと浮いて付いてくる。


「おい、子どもが生まれるっていうのに、こんな所をウロウロしていていいのか?」

「ああ、生まれるのは明日だからな、産婆にもシーリアにも邪魔だと追い出されたわ。わっはっはっは」


 路地裏から出ようとした所で聞こえてきた声に驚きとっさに足が止まる。


「どうしたにゃ?」

「今の声は……お父様?」

「にゃ?」


 そっと路地裏から表通りを見るとそこには赤い髪をした偉丈夫と、黒い髪をした傭兵のような男が話をしていた。見覚えのある二人の男性がいた。一人はお父様の親友で子爵家の三男だったのだけど、家を出て冒険者になった人物だ。そしてもう一人の赤い髪をした偉丈夫は紛れもなく私のお父様だ。

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