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生まれ直した令嬢は二度目の生をわがままに突き進む  作者: 三毛猫みゃー


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第37話 攻略対象と婚約者

「ああ、そうだった。ロザリア様にはこれを渡しておくよ」


 お披露目会の話を始めようとした所で、リーザがそう言って小さなペンダントを差し出してきた。


「これは?」

「身代わりの魔導具だ。一度だけ、着用者が攻撃を受けた時に肩代わりしてくれる。一応新作だな。本来なら人形の人形を使うものだが、あれは人形を傷つけられると所有者に跳ね返ってくるからね」

「このチェーンはミスリルかしら?」

「ええ、少しだけ手に入れてね。ミスリルなら侯爵家のお嬢様が使っていても問題はないだろ?」

「そうですわね。ありがたく受け取らせていただきますわ」


 リリンがリーザに代金を聞いて茶葉代と一緒にペンダントの代金も支払う。ペンダントを早速リリンにつけてもらう。ミスリルのチェーンが肌に触れるが温度は感じない。ペンダントのトップには小指ほどの魔石が埋め込まれている。


「あら、ロザリア様。魔石の色が変わったようですよ」

「色が変わった?」


 ネックレスを手にとりペンダントトップの魔石を見てみる。先程まで黒かった魔石が赤色になっている。


「これはどういうことかしら?」

「それは魔石とローザ様の魔力が同調した証になる」


 確かに私の魔力とペンダントの魔石が繋がっているのを感じる。


「その魔石が砕けるまではローザ様の身代わりとなってくれる」

「そうなのですね。リーザ、感謝しますわ。出来ればリリンとルーセリアの分も用意してほしいのですわね」

「わかった出発までに用意しておこう」

「お願いいたしますわ」


 リーザにお礼とリリンとルーセリアの分を追加発注をしてから、リリンの用意したクッキーをかじり紅茶で流し込む。リーザに話を止められた形になったけど、お披露目会の話を始めることにする。


「それでは、改めてお披露目会の話を始めますわ」


 この場にいる全員が頷く。


「まあ私は行くわけではないがね」


 リーザだけはお披露目会に参加するわけでも、王都まで来るわけでもないので関係ないとも言える。


「そうですけど、何か気がついたことがあれば何でも言ってほしいですわ」

「まあ良いだろう」


 さてと、そうは言っても何から話せば良いのか。とりあえず接触するべき人物、出来れば避ける人物をあげていくことから始める。


「まずはバカ王子……、名前は何だったかしら? バカ王子としか言っていなかったですから思い出せませんわ」

「ローザ様、あなたって人は」


 リーザは呆れたというようにため息をついている。


「ロザリア様、第一王子の名前はシリウス・フィフスティア様です。金髪碧眼で後々に光の精霊の加護を受けるはずです。ですが今の時点では年相応の少年だと思われます」

「ああ、そうでしたわ。シリウスでしたわね。本当に失念していましたわ」


 流石はルーセリアと言いたいところだけど、ルーセリアが覚えていたのはリセ恋に関係しているからでしょうね。


「そう、バカ王子、ではなくてシリウス様ね。シリウス様を避けることはできないですわね。あれでも王子ですから」

「私の時は王族や上位貴族の子息や子女はいませんでしたから参考にはならないでしょうね」


 前世の記憶を呼び起こそうとするが流石に、幼少期のたった一日のことなので思い出せない。いえ、あえて思い出さないようにしているのかも知れない。あの日になにかがあり私はシリウス様と婚約を結ぶことになった。そのきっかけがあったはずだ。流石に前世の私でも見た目が良いだけで惚れるということはない……はずだ。


「対応としては軽く挨拶をして離れるでいいですわね。出来れば、他の令嬢に紛れることが出来れば目立つことはないですわ」

「「「……」」」

「なにか言いたいことがあるのなら言ってほしいですわ」

「ロザリア様が目立たないというのは無理があると思いますよ」

「そうかしら?」


 リリンの言葉に首を傾げてみせるけど、ルーセリアとリーザはリリンのみかたのようだ。


「なるべく目立たないように気をつけますわ。それよりも、シリウス様以外の侯爵家子息についてはルーセリアからお願いしますわ」

「わかりました。と言いましても私の情報はリセ恋からの情報になりますので今の時点ではわからないのと同じだと思いますけど」

「それでも構いませんわ」

「わかりました。それではまずは水の侯爵家スティール・ブルウォルタ様のことをお話します。ブルウォルタ侯爵家の長男になります。青い髪にサファイア色の瞳。リセ恋本編開始時にはミーティア・シーベル様と婚約をしています」

「ミーティア様というのはどういう方なのかしら?」


 前世ではミーティア・シーベルという人物はいなかったと思う。それにシーベル家というのも聞いたことがない。


「ミーティア・シーベル様はこの国から北にある隣国の伯爵家の次女になります」

「北の国ですか。確か魔導具が盛んな国ですわね。それに隣国ということはお母様と似たような経緯なのかもしれませんわね」

「詳しいことはリセ恋では語られていませんでした」


 理由としては友好か、何らかの取引があったか。どちらにしても政略の婚約なのだろう。とりあえず今回のお披露目会で、隣国の令嬢であるミーティア嬢と会うことはないだろう。


「次はそうですね。風の侯爵家フランディ・グリウィルド様。緑色の髪に翡翠色の瞳で、メガネキャラですね。リセ恋開始時は、幼馴染のクルーシュ・ヒューラル様と婚約をしています」

「陰湿メガネですわね」

「陰湿メガネですか?」


 インテリジェンスがどうとか言って絡んできていたのを覚えている。本来なら風と火なので相性は良いはずなのだけど、どうも陰湿メガネとは反りが合わなかった。クルーシュ嬢に関しては覚えている。いつも図書館で本を読んでいるようなおとなしい子だった。図書館で見かけるたびに挨拶を交わす程度の関係だったけど、悪い子ではなかったと記憶している。


「続いて土の侯爵家グラン・アスソリド様。茶色の髪に榛色の瞳。筋肉の鎧と言っていいほどの体格の方ですね。リセ恋の戦闘パートでは武器は持たずにナックル系の武器で戦っていましたね。婚約者はルービィラ・ブロイド様で、伯爵家の長女になります」

「ルービィラは覚えていますわ。彼女とはよくペアでダンジョンへ潜ることが多かったですわね。大きな斧を片手で振り回す姿は圧巻でしたわね」

「リセ恋では同じパーティになることは無かったですが、確かに斧を持っているシーンがあった気がします」

「彼女とならお披露目会で友誼を交わすのも良いかもしれませんわね」


 あまり貴族令嬢らしくは無かったのだけど意外と馬があったのは覚えている。


「最後はステイシー・グレイス様ですね。以前ロザリア様は覚えていないとのことでしたので改めてお話します。グレイス公爵家の長女になります。黒髪に黒曜石のような瞳。闇龍の加護を持ち、お生まれになった時点でシリウス様の婚約者となってたようです。ただ今回はリセ恋には登場しなかったロザリア様、つまりはスカーレッド侯爵家が存在することでどうなっているかはわかりません」

「やはりステイシーという名も、グレイス公爵家というのも覚えがありませんわ」

「そうですか。やはりリセ恋いえ今の世界にグレイス公爵家があることから、ロザリア様が知る世界とは何かズレがあるようですね」


 世界が繰り返していて、私の前世が二つ前の世界と言うことを知らないルーセリアにとっては、私とリセ恋、そして今世がずれているように感じているのだろう。そろそろルーセリアにも話して良いのかもしれない。

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