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生まれ直した令嬢は二度目の生をわがままに突き進む  作者: 三毛猫みゃー


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第34話 ゲームの世界に転生したけど、そんな私はモブ以下

 私の名前はルーセリア・トラバーユ。トラバーユ男爵家の娘として生まれた。


 いわゆる異世界転生というものだ。気がつけば私は前世の記憶を持ったまま赤ん坊として生まれていた。最初はそういった物語の様に何でも出来る気でいた。だけど現実はそんなに甘くはなかった。いや、まだ男爵家とはいえ貴族の子として生まれた事は幸運だったと思う。


 誰も居ない所で「ステータスオープン」と叫んだりもした。結局ステータスが見られたりはしなかったけど。男爵家とはいえ貴族なので食べるには困らなかった。それでも裕福というわけではなかった。


 異世界転生特有のチート能力なんてものは無かった。確かにこういう異世界転生物といえば神さま的な存在と会うことでチートを貰えるものだけど、そう言った神さま的な存在と会った覚えはない。


 ある時この世界には魔法があることを知った。無理を言って二つ年上のお兄様の勉強に混ざって学んだのだけど、結局私には魔法の才能が無いことがわかっただけだった。ただ、魔法の才能は無かったのだけど、身体強化系の才能はあったようだった。


 とはいえ、貴族の娘がそのような能力を持っていてもあまり意味が無い。前世の私ははっきり言って運動神経は良くなかった。それに魔物や人と戦うなんて平和な国で生きていた私には無理に思えた。


 一時期は知識チートを使って、この世界にない魔導具を作って商人にでもなるのもいいかもと思った。だけど貧乏男爵家では無理だった。まずは元手となるお金がない。それならと思い、商人と共同開発をしようとしたのだけど、この世界の商人を見てアイデアだけ奪われるのが容易に想像できたので結局なにも出来なかった。貧乏とはなんて残酷なのだろうか。


 そういうことで、私は真っ当に男爵位や子爵位の男性と結婚して山も谷もない人生を送るものだと思っていた。だけどその考えは貴族学校へ入学したことで変わることになった。貴族学校へ入る前までは、読み書き計算は勉強をしたのだけど歴史はあまり習わなかった。


 伯爵や侯爵のような上級貴族ならちゃんと自国の歴史や周辺国家の事を貴族学校に入る前に習うのだろうけど、男爵家のそれも娘には必要のない知識ということで後回しになっていた。


 つまり貴族学校の授業でこの国や周辺国のことを知ることで私はこの世界がどういった世界か知ることになった。そう、この世界がリセ恋という、私が前世でハマっていたゲームであるリセットの出来ない恋の世界だと気がついたのだ。好きなゲームの世界に転生できたなんて、とても素晴らしいと私は歓喜して心を震わせた。だけどそれはすぐに絶望へと変わった。


 なぜなら、私がいる貴族学校にはリセ恋の攻略キャラが一人も居なかったからだ。よくよく調べてみるとリセ恋が始まるのはこの時から十年ほど先の未来のようだった。つまりは、その頃にはとっくに貴族学校を卒業している私にはリセ恋に関わることが出来ないということになる。


 普通異世界転生、それもゲームの世界に転生って言ったらどんぴしゃりの時代に転生するものでしょう。なのに、現実とはかくも酷いものなのか。私にはリセ恋に関わることなく生きていくしか無いのかと。


 だけどある時私は良いことを思いついた。私の家は男爵位で使用人などもいないような家だったし、周りの友人なども似たようなものだったので失念していた。実はこの貴族学校では、身の回りの世話をするためのメイドや護衛の騎士を連れてくることが出来るということに。


 つまり、リセ恋が始まるタイミングで入学する子女、出来れば女性のメイドか騎士として同行したらいいのではということだ。


 まずはメイドとして入るパターン。行儀見習いとして嫁入り前の娘が上位貴族の家にメイドとして入るのは普通のことだ。問題は私にメイドとしての努めが務まるかというのもある。だけど一番の問題はうまくメイドとして雇われたとしても、ピンポイントでその家の娘の世話役になれるかというと難しいのではないだろうか。


 むしろ信用できるかどうかわからない新人メイドを娘につける家があればそれはそれで問題に思える。色々と考えた結果、メイドとして潜り込むのは難しいと結論に達した。


 次は騎士としてだ。考えるまでもなくこれしか無いと思った。幸運なことに私には身体強化の才能がある。身体強化が使えれば下手な冒険者よりも強くなれる余地がある。問題があるとすれば、私は今まで騎士としての訓練や勉強をしてこなかったことだろう。


 だけどメイドとして潜り込むよりも女性騎士として貴族家に入るほうが簡単だ。そもそも女性の騎士というものは少ない。むしろ引く手あまたと言ってもいいだろう。あとはリセ恋の時期に貴族学校に入る子女を見つけて潜り込めばいい。


 そして信頼を得て貴族学校へ一緒に来ることが出来れば晴れて私はリセ恋のイベントを見ることが出来るということになる。もうこれしか無いと考え、その日から私は騎士になるため邁進することになった。


 そうと決まれば後は潜り込む先になる。リセ恋での覚えている限りの情報を整理する。最有力は主人公のお邪魔キャラであるステイシー・グレイス侯爵令嬢。他の候補として、各攻略キャラに充てがわれている各令嬢達。


 後は何故か全令嬢の取り巻きとして登場する下位貴族三人組の誰か。残念ながら名前を覚えていなかったので候補からは外れることになった。


 こうして記憶を頼りに調べていると一つの謎に行き着いた。リセ恋では登場しなかったはずの火の侯爵家の存在だ。更に調べるとその侯爵家には丁度リセ恋の時期に貴族学校へ入る娘が居ることを知ることができた。


 普通ならお披露目会以前に貴族家の子女に関して知ることは出来ないのだけど、不思議と知ることが出来た。


 そう偶然にも我が家は火の侯爵家の寄子の親戚筋だったようでその流れから知ることになった。そもそも私の父が行儀見習いとして、火の侯爵家へ送るとしていた流れで知ることになったのだけど。


 私はメイドとしてでなく騎士として入りたいと懇願した。父は反対したが火の侯爵家の寄子である、トリステン子爵に突撃してお願いした。


 トリステン子爵は母の兄で、妹である母が大好きな人で母に似ている私の願いを快く引き受けてくれた。ちなみに母はちゃんと生きてます。


 そして今私はスカーレッド侯爵家の一人娘である、ロザリア・スカーレッドお嬢様にお仕えすることが出来た。


 正直このお嬢様はぶっ飛んでいる。なんてたって私が前世の記憶持ちだとすぐに気が付かれた。それにお嬢様自身も未来からの回帰で、未来の記憶を持っているようだった。


 ただお嬢様の記憶と私が持つリセ恋の記憶には多少の差異があるようだった。よくよく考えてみればリセ恋には、エルフやドワーフなんて他種族は存在しなかった。それなのにこの世界にはそういった種族が存在する。


 それ以外にもリセ恋と違う部分が沢山ある。リセ恋には侯爵家は三つしか出てこないし、貴族学校に入学してくるのも三家だけだった。だけど今のこの世界は侯爵家は四つあり、お嬢様を含めると貴族学校に四侯爵の子女が入学することになる。


 それにお嬢様は、リセ恋の悪役令嬢筆頭であるステイシー様のことを知らないようだった。なんだかお嬢様がいた未来と、リセ恋は別物のように感じられる。それでも同じ部分も多くある。


 これはどの貴族家に潜り込もうかと情報屋を駆使して調べてわかったことなのだけど、攻略対象である三侯爵である水のスティール、風のフランディ、土のグランは存在していた。


 流石に王族はわからなかったけど、国王と王妃はリセ恋に出てきた人物と同じようだった。そのことから多少の差異はあるけどこの世界がリセ恋の世界だという事は間違いなさそうだった。


 そして、もうすぐ王都でお披露目会が開かれる。そこには護衛騎士として私が、そしてメイドとしてリリンが同行することになっている。


 つまりは幼い姿の攻略対象たちを見ることが出来るということだ。その事を考えると夜も眠れないほど楽しみで仕方がない。


 それにしても不思議に思うことが一つだけある。ここはリセ恋の世界のはずだ。それは間違いない。だというのに、信仰している神様が前世と同じ神様だということだ。


 どうもこのことに関してはお嬢様が何かを知っている様子だけど、曖昧に笑うだけで教えてもらえなかった。他にも色々とお嬢様は秘密を持っているように思える。


 リセ恋では出てこなかった火の侯爵家。それに関しては、本来なら死んでいるはずの奥様をお嬢様が助けたことで未来が変わったのではということだった。つまりお嬢様の知る未来や、私の知るリセ恋の物語はきっかけ一つで変わるということだろう。


 お嬢様が貴族学校に入るのは十二歳になってからになる。どうやらお嬢様は、リセ恋の主人公である聖女ステラを探し出そうとしているようだ。ゲームをしていた時はプレイヤーの分身でもある主人公ということで、全く気にならなかった。


 だけどお嬢様と話をしたことで、聖女ステラがどれだけ異常な存在なのかに気がつくことが出来た。今では私も聖女ステラをリセ恋が始まる前に排除することに賛成している。今のところ、その存在どころか痕跡すら見つからない。ゲームの中でも貴族学校に入学する以前に関しては語られることはなかった。


 すべてが謎に包まれている聖女ステラとはいったい何者なのだろうか?

三章はここまでとなります。

残りは明日公開して〆になります。

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