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第24話 転生者

「リセ恋についてできるだけ詳しくですか? そういうことでしたら任せて下さい!」


 ルーセリアは同士を得た、いやこれは生贄を手に入れたケダモノのような目をしている。リセ恋という物の話を知っていれば、将来貴族学校へ向かう時に役に立つのではと思ったのだけど、この選択は誤りだったのかもしれない。


「えと、その話はまた今度で──」

「リセ恋というのは、先程も言いましたがリセットの出来ない恋をしようというのが正式名称になります。ジャンルは恋愛乙女ゲーム……の皮を被った鬼畜SLGになります。日常パートと戦闘パートに分かれていて、日常パートでは主に攻略キャラとの仲を深めるイベントがあったり、装備アイテムなどを集めたりと戦闘パートを有利に進めるための準備期間ともいえます。この日常パートをおろそかにすると、キャラの強化が出来ず戦闘パートで死者が出る結果になったりします。そして戦略パートですがここがこのリセ恋が鬼畜ゲームと言われる所になっていまして──」

「す、少し待って。何を言っているのか全くわからないわ。よろしければ一つずつ説明をしてほしいわ」


 早口でまくしたてられても全くついていけない。えすえるじー? 恋愛パートに戦闘パート? 装備を整えるのはわかるは、だけどそもそも戦う相手ってなにかしら? 


「はあ、どこがわかりませんか?」


 いい気分で話していた所を止められたためか、仕方がないなーと言いたそうな表情でため息をつかれた。余りこういう事はいいたくないのだけど、私はルーセリアが守るべき対象であり、主人とも言える存在のはずなのだけど。


「ロザリア様、やはりこの女は早々に追い出しましょう」

「リリン、少し落ち着きなさい」

「ですが」

「私は別に怒っていませんわ。それにルーセリアの話は今後のことを考えるとちゃんと理解して聞かないといけない気がするのよ」


 ルーセリアの言った攻略対象の五人とは、五歳のお披露目で出会った記憶がある。絡むにしろ避けるにしろ情報を持っているとなにかと有利だろう。それもこのまま前世のとおりに行動して貴族学校に行ったとしたら敵対することになるかもしれない。


 特にバカ王子とは極力関わらないでおきたいものだ。特にお披露目会では目をつけられないようにしないといけない。まあ前世の時はお恥ずかしながら私の行動が婚約に繋がったので、気をつければ大丈夫だろう。あの頃はお母様もお亡くなりになっていて、お父様も家を開けがちだった寂しさからの行動だったとずっと後になって自覚できた。


「話を止めてごめんさないね」

「い、いえ、私も趣味の話なんてこの世界に来て初めてなので興奮してしまって。本当に申し訳ございません」


 テーブルに額を付けそうなほど頭を下げている。


「ルーセリア、続きはまた時間をとって聞くことにしますわ。夕食の時間まで話は終わらないでしょう?」

「全てをお話するには時間が足りないと思います」

「そうでしょうね。それと私たちしかいない時は、先程のように砕けた話し方でいいですわよ」

「そ、それは」


 ちらりとリリンに視線を向ける。


「ロザリア様がそうおっしゃられているのでしたら、私からはなにもありません」


 リリンがすました顔でそういう。


「リリンもこういっていますから。それにリリン同様私と一緒に行動することも増えるでしょうから、二人とも仲良くするようにお願いしますわ」


 引き続いてリセ恋の話もいいのだけど、それよりも気になる単語が出てきた。ルーセリアは「この世界」と言っていた事にふとした疑問が湧いた。もしかするとルーセリアの中では、ルーセリアが生きていた時代と、今現在が違う世界という認識なのかもしれない。


 確かにルーセリアの生きた魔法を認識できる者が居なくなった時代と、世界が終わった後再生した世界の今の時代だと別世界とも言える。仮に今を剣と魔法の時代とすると、科学の時代には剣と魔法の時代の事は伝わっていないということなのだろうか?


 そこかで大変革でもあったのか、それとも何者かによって意図して隠されたのか。ティアにそれとなく聞いても「にゃーにわわからないにゃ」という答えしか返ってこない。これに関してはティアが隠しているというよりも、本当にわかっていないようだった。


「リセ恋のお話は後々聞くとして、一つルーセリアに訪ねたいことがありますわ」

「何でしょうか?」

「あなた、先程この「世界に来て」と言いましたわよね。つまりルーセリアはこことは違う世界から来たということでいいのかしら?」

「あ、あはははは。えっと、まあ、そんな感じです」

「ルーセリアがなぜそう思ったのか聞いてもよろしいかしら?」

「それは簡単なことです。私が住んでいた世界には魔力が無くて、そのかわり機械や科学というものがあったからです」

「機械に科学ですか。それはどういったものなのかしら?」

「そうですね。簡単にいいますと魔導具を魔力で動かくのではなく雷の力、電気というのですがそれを使い動かすのが機械と呼ばれるものです」


 科学の時代では魔力が無いわけではないと思うのだけど、それを認識できないのならあってないようなものなのでしょう。その代わり電気という物を使い魔導具と同じようなものを動かしていたということのようだ。


 飛行機と呼ばれる、空を飛ぶ機械や、電車や車という乗り物が馬車の代わりに人を遠くへ運んでいったのだとか、色々と面白い話が聞けた。やはり一度はその科学の次代を見てみたいものだ。こうしてルーセリアの生きていた時代の話を聞くことが出来た。科学の時代から、この剣と魔法の時代に来たのなら確かに異世界だと言われても納得が出来る。


 実際は異世界ではなくて、同じ世界の時代が違うだけなのだけど。ルーセリアからすると異世界と考えた方がしっくり来るのだろう。ルーセリアは科学の時代では学生という身分でトラックと呼ばれる大型の車に轢かれて気がつけばルーセリアとして転生していたのだろうか。


 どうやらルーセリアが生きていた時代には、そう言った物語が流行っていたらしい。ルーセリアもそう言った物語の書かれた本やげえむをしていたおかげで、転生による混乱などはなく、すぐに受け入れられたようだ。


 トラバーユ男爵の長女に生まれ、上には一人兄がいてそのお兄さんがトラバーユ家を継ぐことになっているので、元々ルーセリアは貴族学校を出た後は結婚するか、女性騎士となるつもりだったらしい。


 そして貴族学校に通う事になった時から彼女は新しい目的を得ることになった。それがリセ恋の攻略対象を推す事を決めたようだ。そして様々な考えを巡らせたことで、我がスカーレッド家の私に目をつけたようだ。


 私の護衛となったのは、攻略対象である推したちと同じ年齢という理由と、リセ恋最大の謎と言われていた、四侯爵のうち唯一攻略対象の出てこないスカーレッド家に何か裏設定的な物があるのではないかという憶測から選んだということだ。


「あなたがスカーレッド家を選んだ理由はわかりましたわ。選ぶならその推しですか? その推しがいる残りの三家の何処かに行けばよろしかったでしょうに」

「あっ……」


 どうやらその考えには至らなかったようだ。


「あ、あはは。あーそのえっと、そうだロザリア様に私も一つ聞きたいことがあったのですけど」

「何かしら? 答えられることなら何でも答えますわよ」

「もしかしてですが、ロザリア様は転生者じゃないですか?」


 ルーセリアはそう言って私の目を覗き込んできた。

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