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生まれ直した令嬢は二度目の生をわがままに突き進む  作者: 三毛猫みゃー


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第23話 リセットの出来ない恋をしよう

「あー、その、リセ恋、だったかしら? それは何かの暗号か何かなの?」

「リセ恋というのはですね、正式な名前をリセットのできない恋をしようという、いわゆる恋愛乙女ゲームのことです。最初は気が付かなかったのですけど、この国の名前がフィフスティア王国なのと私が通うように事になった貴族学校がヴァルハレイド貴族学校だと知り、ここがリセ恋の世界だと気がついたのです」


 両手を組み頬を赤く上気させ、どこか夢見る乙女のような表情をしている。


「そのリセ恋という、おとめげえむ? というのはどういうものなのかしら?」

「そうですね。マンガは、通じないですね。んーっと、絵本が近いかもしれませんね。いや演劇のほうがそれっぽい? あっ、こういえばいいかもしれないです。話の分岐があってそれを見ている人が選べる演劇や絵本と思っていただければいいかもしれません」

「選択できる劇や本ということですわね。確かに中には二つの解釈がある作品もありますわね。その結末を読み手が選べるというわけですか」

「そうです。そしてそういうものを私は前世でゲームとしてやっていたのです」

「前世? げえむ?」


 ルーセリアは以前の世界の記憶を持っていると考えて良さそうだ。げえむというものを私は知らない。つまりルーセリアは私が知らない時代に生きていたということになるのかしらね?


(ねえティア、その辺りどうなのかしら?)

(少し待つにゃ……。わかったにゃ、この娘は科学の時代の記憶を持っているようにゃ。それも一つ前の世界の記憶にゃね)

(科学の時代というと、魔力を認識できる人が殆ど居なくなった時代のことよね?)

(そうにゃ)

(興味深いわね)


 私とティアがコソコソと内緒話をしている間もルーセリアの話は続いている。


「それでですね、意気揚々と貴族学校に入学しました。そこで私は生まれて初めて絶望というものを感じることになったのです」

「絶望ですか?」


 私とティアが話をしているのを察してか、リリンがルーセリアの相手をしてくれていたようだ。


「貴族学校に入学さえしてしまえば攻略キャラのスチルを見ることが出来ると思っているのですよ。だけど現実は残酷でした。なんと、私が入学した年は本編開始からおよそ十年程前だったのです。つまり攻略キャラを直接見ることも、そして会話をすることも出来ないという事だったのです」


 スチルというのが何のことかわかりませんけど、ルーセリアにとっては絶望を覚えるほど大事なものだったのかもしれない。


「ただ私はそこで諦めませんでした。そうなのです、私は様々な可能性を考慮した末に辿り着いたのです。そう攻略キャラに出会う方法に」

「少しいいかしら?」

「はい、何でしょうか」

「その攻略キャラというのは何なのかしら?」

「攻略キャラというのはですね。リセ恋に出てくる四人のキャラのことです。第一王子のシリウス、水のスティール、風のフランディ、土のグランの四人のことです」


 ルーセリアは何気ないという風に、今四人の人物の名前を出した。それを聞いてルーセリアの話が妄想の類ではないことを確信した。何をもってそう思ったのか。それは攻略キャラと呼ばれている者たちに関して、知り得ないことを知っていたからになる。そうそれは名前だ。


 私は四人の名前を知っている。前世で同じ公爵家ということもあり、お披露目会の時に挨拶を済ませていたからだ。その後何度も絡むことになったのは今でも覚えている。


 それではなぜ、ルーセリアが知っているとおかしいのかというと、子どものお披露目会が始まっていない今の時点で知っているはずがないからだ。お披露目会というのは子どもが五歳になる年に王都で開かれる。そこで初めて子供の名前を知る事が出来るわけだ。それまでは、それぞれの家に仕える家臣でもない限り、子供の名前どころか、生まれたということすら知ることはない。。


 つまりはそれほどまでに情報が秘匿されているはずの四人の名前を知っている時点で、ルーセリアのげえむというものが本当の話だと裏付けられたことになる。


「攻略キャラというのが誰のことかはわかりましたわ。それでルーセリアは何を思いついたのですか?」

「それはですね。攻略キャラが貴族学校へ入学するのと同じ時に学校へ行く者の騎士として着いていけばいいと言う事に気がついたのですよ」


 それを聞いて私は、ルーセリアがなぜ我が家に女性騎士として来たのかを理解した。


「つまり、コソコソと我が家を探っていたのはそういうことなのですわね」

「あ、いえ、それはまた別問題になります」

「どういうことかしら?」

「先ほど捕まった理由は、お腹が空きすぎて夜食を食べようとしていたところだったのです」

「「「…………」」」


 この時、私とリリンとティアの心が一つになった。先程まで前世のことや、げえむのことなど、まだまだ聞かないといけないと思えるような情報が話されていた。だというのに、夜食を食べるために夜の屋敷を彷徨っていただけだったのは残念だ。てっきり我が家について色々と探っているものかと思っていた。


「リリン、紅茶のお代わりをいただけるかしら?」

「かしこまりました」


 さて、まだまだ気になることはたくさんありますから、一度休憩をしましょうか。休憩が終わりましたら、リセ恋に関して深く聞いてみましょう。

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