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生まれ直した令嬢は二度目の生をわがままに突き進む  作者: 三毛猫みゃー


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第18話 完成

「魔力水は私が入れるので、リーザは準備を進めるといいですわ」

「わかった」


 私は魔法で魔力のこもった水を生み出して錬金鍋に入れていく。水が大体半分ほど入ったところで魔法を止める。


「それでは始めるよ」

「ええお願いしますわ」


 錬金鍋の前に置かれている踏み台に乗ったリーザが、錬金術専用のかき混ぜ棒を鍋に入れてゆっくりとかき混ぜ始める。十回ほど混ぜたところで私が素材を一つ入れる。リーザはそれを見ながら同じペースでかき混ぜている。


 錬金鍋は私の身長の倍ほどの高さがあるので、事前に階段の形をした踏み台を置いてもらっている。身体強化が使えない今、その階段の上り下りだけでも体力を使う。絶えず魔力をかき混ぜ棒に流し続けているリーザ。タイミングを見計らって素材を一つずつ入れていく私。どちらも額に汗が滲んでいる。時間としてはそれほど経っていないのだけど、結構な重労働だ。


「これで最後ですわ」


 残り最後の素材、ユニコーンの角を鍋に入れる。ユニコーンの角が鍋に沈むのを確認して、私は階段の上に座り込んだ。


「はぁはぁはぁ、三歳児の体はすごく疲れますわ」


 私が休んでいる間もリーザは錬金鍋をかき混ぜ続けている。そして私の体が落ち着き、再び立ち上がり錬金鍋の中を確認したタイミングでちょうど治療薬が出来たようだった。


 錬金鍋からポフッという音とともに白くて丸い煙が立ち上がった。そして錬金鍋の底に一本のガラスの容器が転がっていた。容器の中の液体は青色をしている。それを見て私は目的の物が完成したのを確信した。


「リーザ、ありがとう。これでお母様をお救いすることが出来るわ」

「それは、なにより、です」


 言葉を途切れさせながらリーザはその場に倒れるように座り込んだ。私はリーザに近寄り自分とリーザにまとめて洗浄の魔法を使う。


「はぁ、これは気持ちいいものだな」

「洗浄の魔法ですわ。治療薬を作っていただいたお礼として後ほど教えてあげますわ」

「それはありがたい」

「ただし、お風呂に入れるのなら入ったほうが良いですわよ。まだ改良の余地のある魔法ですから、それに臭いまでは消せませんわ」


 この魔法は体の汗や老廃物をある程度取ることは出来るのだけど、服に染み付いた汗や臭いまでは消すことができない。ただ少しばかりいじればそれも完成しそうではある。


「確かに汗臭いな」


 リーザは自分の服の胸元を開いて匂いを嗅いでいる。


「リーザ、疲れている所悪いのですが、治療薬を拾って頂けないかしら。中まで手が届きそうにないのよ」

「これは失礼を」


 リーザは寝転んでいたい体勢から立ち上がると、錬金鍋の底から治療薬を手にとり私に差し出してくれた。


「ありがとう」


 治療薬を受け取ると、空間魔法の中に放り込む。これでお母様を救うことが出来る。あとはどうやってこの治療薬を飲んでもらうかですわね。ここはやはりリーザに協力してもらうのが良いかもしれないわね。


「リーザもう大丈夫かしら? リリンが紅茶とお菓子を用意してくれているはずだから戻りましょうか」

「大丈夫だ。んー、それにしても本当に作ることが出来るとはな」

「あら? 信じていなかったのですか?」

「いいえ、ローザ様の事は信じてはいましたよ。問題は私の方だったのですけどね」

「リーザがですの? 私の知るリーザとはやはり少し違うのですわね」

「そりゃあそうでしょう。ローザ様に聞いた私は今より十年も先の私になるわけですからね。それにその頃には今回教えていただいた魔力視を使いこなせていたでしょうから」

「確かにそうですわね。ですが本当に今回は助かりましたわ。改めて感謝を」


 リーザに頭を下げる。ローザは照れくさそうにっ頬を軽く掻いている。その動作も懐かしく思える。前世も今世も癖や何気ない動作は変わらない事に少しおもしろいと思える。


 店舗部分に戻るとリリンだけが待っていた。店内にはセブルとハイツの姿はない。きっと誰も店に入れないように外で警戒してくれているのだろう。


「リリン、全員分の紅茶の用意が住みましたら二人を中へお願いしますわ」

「かしこまりました」

「いや、二人は私が呼んでこよう」


 そう言ってリーザは返事もまたずにズカズカと歩いていった。セブルとハイツも店舗に入ってきて、リーザが入口に閉店を示す看板を掛けて扉を閉めている。ああいうのがあるのなら最初から掛けておけばいいのに。


「いやー、すっかり忘れていたよ」

「お前ってたまにこういう事するよな」

「リーザらしいと言えばリーザらしいがな」


 彼らのほんのちょっとしたやり取りは見ていて面白い。前世の時なら私もあの中に混ざっていたのだけど、それだけは少し寂しく感じてしまう。ただ前世で彼ら三人と本格的に仲良くなれたのは、逃亡生活以降になるのでそれまでは大した接点も無かったのだけど。


 リリンが全員分のカップに紅茶を入れ終わり、それぞれの前にクッキーの乗った小皿が置かれる。どうやらセブルとハイツが買い出しの時に買ってきていたようだ。


「さて、目的のものはリーザのお陰で作ることが出来ましたわ。後はこれをどうやってお母様に飲んでもらうかになりますわね」

「その様子だとなにか考えがあるようだな」

「ええ、ございますわ」


 お母様の病気を治す治療薬が出来た事で、残った問題はどうやってお母様にこの治療薬を飲んでもらうかになる。それもお父様に経緯などを知られないように。特にティアのことはまだ知られるわけには行かない。そのような状況だけど、私には一つ案がある。ただしその方法は、お父様次第なのが不安ではある。

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