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第14話 才能

 リーザイアに会えたことは幸運だった。今の私ではお母様を治すための治療薬を作るのにかなりの労力が必要になる。リリンにやってもらうことも考えていたが、魔力の少ないリリンではうまく作れないかもしれなかった。


 治療薬作りもそうだけど、素材が確実に手に入るのもリーザイアと出会えたからだ。リーザイアがいなければ素材すら手にはいらなかった可能性もある。いえ、ハイツが言っていたように、魔物の素材を扱う店がリーザイアの店だけだとするときっとすべての素材を手に入れることはできなかっただろう。


「ロザリア様、お食事の準備が出来ました」


 いつものように図書館で本を読んでいるとリリンがやって来た。床から立ち上がりスカートを軽くはたく。本を手にとりリリンに渡すと本棚に直してくれる。


「今日もお母様のへやかしら?」

「いえ、本日は食堂になります。シーリア様のお調子が少し」

「わかったわ」


 本当ならお母様に魔力を流したいところだけど、どうも会うことが難しいようだ。とは言え会うことが出来ないのは、お母様が起きている時に限る。


 今ではお母様の専属メイドであるライラも私が何かをしているのに気がついていて協力してくれている。お母様はご自身の弱った姿を私に見せたくないようで、少しでも体調が悪いと会うことを止められる。


 だけどお母様が寝た後にこっそりとライラが会わせてくれている。そして私はお母様に魔力を注ぐことが出来ている。魔力を注ぐことにより、病気の進行を遅らせることが出来る。そして苦しそうに眠るお母様の苦痛を和らげることが出来る。魔力を流し終わると息苦しそうにしていたお母様の呼吸が静かになる。


 何をしているのかやどうしてそんな事が出来るのかなど、ライラは聞いてこない。ただ「ロザリア姫様ありがとうございます」とだけ言って毎回頭を下げてくる。お母様の世話をしてくれているライラに、お礼を言いたいのは私の方なのだけどね。



「お父様はいつお戻りになられるかしらね」

「そう言えば先程早馬が来ていたようです。もしかするとグレイス様からの連絡だったかもしれません」

「リリン、後ほど確認してきてもらえるかしら」

「わかりました」


 食堂で食事をしている。今日はお母様の体調が思わしくないということで、一人での食事になる。お父様は領内に山賊が出たという話を聞いて、騎士を連れて討伐に向かっている。執務机には相変わらず書類の束が乗っているが、息抜きということで自ら率先して盗賊退治に出ていった。その中にはセブルとハイツも含まれている。


 そのためにリーザイアからの連絡を受け取ることも出来ていない。とは言え、リーザイアが私に連楽をしようと思えばいくらでも手段はあるはずなので、まだ戻ってきていないのかもしれない。


 お母様の体調を考えると早ければ早いほど良いのだけど、焦っても仕方がない。今の幼い私にできることは、お母様の負担を少しでも減らすことと、治療薬の材料が集まり、リーザが治療薬を作るのを待つだけ。あとは……。


「料理長、今日はこのレシピを試してみませんか? これでしたらお母様も食べられると思うの」

「卵料理ですな。この蒸すというものがよくわかりませんが。まずは道具から揃えないと駄目でしょうな」

「道具なら商人から購入しましたわ。そのレシピもそうですが、遥か東方にある島国の料理とのことでしたわ」


 後ろに控えていたリリンが、手に持つ籠を料理長に差し出す。


「せいろと言われるもののようですわ」

「ふむ、これは他にも使い道がありそうですな」

「その辺りは料理長にお任せしますわ。ですがまずはお母様の為にその茶碗蒸しというものを作ってみてくださいませ」

「かしこまりました、このガゼル全身全霊を持って作らせていただきます」


 こうして前世で手に入れた知識を利用して料理を作ってもらう。もう少し体が成長したら自分で作れるのだけど、流石に三歳の体では刃物を手にすることも止められる。今の私ではレシピを提供して作ってもらうくらいしか出来ない。


「どうやらこれは少し時間がかかりそうですな」

「そのようですわね」

「今のうちにお菓子でも作ってみるのはどうですかな?」

「おかしですか?」

「ええ、シーリア様にお出しするクッキーなのですが、ロザリア様が型をお作りになったをしればお喜びになると思われます」

「それは良いことですわ」


 お母様のためにクッキーの型を作る。きっとお母様は喜んでくれますわね。型は何が良いかしら? 猫や犬は基本として、やっぱりドラゴンか何かが良いかしら? 料理長に教えてもらいながらクッキーが出来上がり、それをお母様に持っていく。


「ローザ、ありがとうね。あらこれは可愛いらしいわね。えっと、これはヒドラかしら?」

「……犬ですわ」

「あ、確かに犬ね。かわいらしくて食べるのがもったいないわね」


 お母様はそう言いながら、私の頭を撫でてクッキーを食べてニコリと笑いかけてくれた。お母様の気遣いで心が痛い。自分でもあれがなにかと聞かれたら、良くてケルベロスと答えたかもしれない。どうやら私には造形に関する才能はなかったようだ。


 くすん。

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