友人2
「バッカス様は明朗な方なので店が明るくなった気がするな」
ジョージが言う。
「バッカスは本当に爽やかで気持ちいい人間よね。平民だからって最初から全く警戒もしなかったのよ」
「きっとライト子爵の育て方がいいんだな」
「どんな方かは知らないけど、きっといい人なんだろうなぁ」
マリーが呟いたあとに
「ベデル様が氷ならバッカスは太陽よね」
と笑った。
「ベデル様への嫌悪は少しはマシになったのかい?」
「話を聞いてただ不器用な人だってわかったから、嫌い!って感情はなくなったかな。でも友達にはなれそうにないわ」
「どうして?」
「どうしてって………由緒正しいベデル侯爵家を継ぐ人よ?平民と友達なんて本心で言ってるとは思えないわ」
「でも、話に出ていたカータス様はリンドール侯爵のご子息だろう?仲が良かったんじゃないのか?」
ジョージの疑問にマリーはまた笑った。
「カータス先輩は生徒会長として、平民の私がいじめられないように気を遣ってくれていただけよ。友達ではないわ。優しい人ではあるけど。それに!平民と友達になんてベデル侯爵が赦さないと思うけど」
「ベデル侯爵はそんなタイプの人じゃないよ」
「お父さん、知り合いなの?」
ベデル侯爵は現王の宰相をしている。王が民の前に顔を出すときなどに横にいることが多いので、顔はマリーも知っていた。
アーノルドと同じ銀髪をしていて、かなり整った顔をしている。
眼鏡は掛けていないが、アーノルドが歳をとればこんな顔になるのだろうと思うくらい、よく似ている。
瞳の色が少し違うくらいだ。
白銀の宰相なんて呼ばれておば様方に人気の人だ。
「ああ、ちょっとな」
「宰相と知り合いの平民なんてなかなかいないと思うけど。侯爵は眼鏡掛けてないから、お客様でもなさそうだし………どういう知り合いなの?」
「そうだな………まぁ友人だよ」
「友人?」
マリーは驚いた。
「ベデル侯爵とお父さんが?」
「そうだよ」
「どこで知り合うのよ」
「どこって………マリーとバッカス様やメイ様と同じさ。魔法学校の同級生だよ」
ジョージは外していた眼鏡を掛けた。
「そっか、お父さんも魔法学校の卒業生なのよね。平民なのに皆魔法がつかえるなんて、我が家、珍しい」
「そうだな」
「ベデル侯爵はいい人なのね」
「ああ、信用できる人間だよ。酒にやや弱いのが欠点だけど」
「でもベデル様と友達はやっぱり畏れ多いわ。顧客として相手するのも緊張するもの」
ジョージはそれ以上言わずに、また眼鏡を外して度数測定器を覗き込んだ。