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友人1

アーノルドの姿が見えなくなってから、バッカスは先ほどまでアーノルドが座っていた椅子に腰かけた。


マリーも座る。


「まさかベデル補佐官がいるとは思わなかったよ。顔はよく見るけど、こんなに会話したのはじめてかも」


「図書館にベデル様がよく来るの?」


「ベデル補佐官じゃなくて、王太子殿下が本好きなんだよ。毎月数回は図書館に来てるかな」


「王太子殿下かぁ……お祭りの時にチラッと見た記憶しかないや」


「ベデル補佐官とは違ったタイプの男前だよ。まだ婚約者が決まってないから男好家なんじゃないかって噂がある」


バッカスはそういった後、


「あ………オフレコで頼むよ。こんな話しているの聞かれたらクビになる」


とおどけてみせた。


「確か、今年で25歳よね。王族の方がその年まで結婚はおろか婚約者もいないなんて珍しい。そりゃそんな噂もたつよ」


「見た目もいいし、性格もいいからな。俺らにもいつも声をかけてくれるいい人だよ」


「バッカスが言うなら間違いないわ。ところで……なにか用事?」


「あ、忘れてた」


バッカスは笑うと


「メイからの伝言。あいつ、今忙しいから」


と言った。


「メイは王宮の経理部門に配属されたのよね」


「あいつ、計算とはメッチャはやいから。今が3月だろ?決算期で忙しいらしい」


この国では3月が決算となっている。


「それでバッカスに伝言を頼んだのね。相変わらず仲いいわね」


「仲良くはないよ。あんな腹黒女ごめんだね。俺はマリーみたいなタイプが好みだから」


ニッコリと笑う。


「はいはい。おだてても何も出ないわよ。で、メイの伝言は?」


「少しはときめけよ………俺、こう見えてもけっこうモテるのに………まあいいや。メイからの伝言は、『花見にマリーを誘ってきて』だよ」


「花見?」


「そう。4月になると大通りの先にある公園にたくさん花が咲くだろう?それを見ながらマリーお手製のサンドイッチが食べたいんだとよ」


バッカスの言葉にマリーは思わず笑った。


「メイってサンドイッチ好きよね」


「それもマリーが作るやつ。確か去年の誕生日にもリクエストしてたよな」


「そうそう。私が作るハムサンドとタマゴサンドがプレゼントに欲しいってリクエストされて」


「それを見ながら花見がしたいらしい。行けるか?」


バッカスの言葉にマリーはジョージを見た。


「お父さん、いいかな?」


「事前に日にちがわかっていたら大丈夫だよ。忙しくなったらユーリを呼ぶ」


「あ、ユーリ君も今年で卒業だっけ?」


「はい。前日無事に卒業しました」


「ユーリ君も優秀だと聞いているし、ジョージさんも安心だな」


「そうですね。私は恵まれていますよ、バッカス様」


ジョージがにこやかに微笑む。


「お父さんの許可ももらったし、行けるよ」


「じゃあ日にちが決まったらまた来るわ。メイが忙しいのは3月いっぱいらしいから、連絡は4月になると思う」


「わかったわ。メンバーはバッカスとメイと私?」


「もしかしたらカータス様もくるかも」


「カータス先輩が?忙しいんじゃ………」


「まだわかんないけど、メイと話している時たまたま近くを通ってさ。僕もメンバーに混ぜてくれって言われたから」


マリーの脳裏に眼鏡を掛けた優秀な男が浮かんだ。


亜麻色の髪に茶色の瞳を持つ、いかにも秀才!という顔立ちをした男だ。


眼鏡を掛けているからそう見えるのかもしれない。


常にニコニコしていて怒った顔を見たことがない。


背は180センチくらいだったか。


数年は会っていないので記憶はあやふやだが。


「会えるなら久しぶりだから楽しみだわ」


「カータス様も会いたがっていたよ。マリーが平民なのにあまりいじめられなかったのはカータス様のおかげだしな」


「感謝してるわ」


「まぁ、そういうわけだから。じゃあそろそろ行くわ」


「連絡待ってるね」


「おう!」


そう言うとバッカスは店を出ていった。




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