1.転生
「おはよー。」
いつも通り変わらない朝。
「それで、ここの公式は...。」
いつも通り変わらない授業。
つまらない、はずだった。
『緊急地震速報、緊急地震速報!!』
地震で古かった学校はすぐ崩壊。
しっかり死んでしまいましたと。
「だからて、転生したらゴブリンて。」
正直言って、人間と似た体つきで良かったと思っていた。
スライムとかよりかはマシだから。
「...人間になりたかったかも。さて、これから何しようかな。」
《この世での生き方を説明しますか?》
「っ...なるほど、これは助かる。じゃあ、お願いします。」
頭の中で聞こえる男性の声に全てを頼んだ。
《この世界にはステータスというモノが存在します。それは、【ステータス】というスキルで自分のが、【鑑定】というスキルで敵のを見ることが出来ます。》
「へぇ、どうしたら手に入るんです?そのスキル。」
《スキルショップです。》
「突然のゲーム感。」
目の前に沢山の文字列が出てくる。
そこには色々なスキルが書いてあった。
スキルの名前をタップすると、詳細と必要なポイント数が書いてあった。
「このポイントってのはいつ手に入るんです?」
《レベルが上がった時です。》
「レベル...か。」
モンスターを倒したら即手に入らない。
それはポイントの無駄遣いが出来ないということだ。
《今のポイントだと、【ステータス】と【鑑定】は買えますよ。》
「それは良かった。じゃあ、買います。」
《ステータスポイントを10使用して【ステータス1】と【鑑定1】を取得しました。残りステータスポイントは0です。》
「さて、使ってみるか...わぉ。」
ちょうど良いタイミングか悪いタイミングか、目の前には子供の狼がいた。
白い毛並みに、尻尾の先は目と同じ水色で、多分氷属性だと分かる。
「【鑑定】。」
《フリーザーウルフ(幼体)Lv1 概要:転生者 『その他の項目はまだ【鑑定】出来ません。【鑑定】のレベルを上げてください。』》
【鑑定1】だと流石に限度があるようだ。
「それより...転生者とは一体...?」
「...転生者、知ってるの?」
「っ、あぁ、しっかり喋れるんだ。」
《転生者は皆、【言語理解】のスキルを持っています。》
「なるほど...。」
【言語理解】が転生者にだけ効くかというのは分からないけど、こういう風に話せるというのは助かる事だ。
「私は内海結衣...です。貴方は?」
内海結衣。
教室の隅っこによくいた少女だ。
ちなみに少し男性と話すのが苦手だったり怖かったりするが、トラウマや恐怖症ほどでは無いらしい。
「うちは浅葱凪。結衣、同じモンスター同士として、共闘しない?」
「浅葱さんだったんだ...。はい、共闘しましょう...!」
「さん付けはいらないし堅苦しくなくていいよ。」
「いえ、凪さんでお願いします。そっちの方が慣れているので...。」
それはともかく、共闘が出来るのは凄く助かる。
異世界は大体弱肉強食。
モンスターなら尚更だ。
1人より2人の方が、生き残れる率が上がるのだ。
「そういえば、そっちにもアナウンスいる?」
「います。ただ、どこかで聞いたことがある気がするんです...。」
「あー...確かに。」
このアナウンス、もしかしたらと思ったうち等は、名前を口に出した。
「「三浦さん?/桜野さん...?」」
《〈正解だよ。/あったりー!〉》
突如として、そのアナウンスの声が聞こえてきた。
それも、2人分。
1人は自分が聞いてた男性の声。
もう1人は女性の声だった。
《にしても、よく分かったね。》
〈僕もびっくりだよー!〉
「な、何で2人はこんな事やってるんですか...?」
〈なんかね、アナウンスをやる精霊に転生したみたいで、転生者のアナウンスをやりたいって言ったら、認めてくれてなうだよ!!〉
凪はそれならこんな風に話しちゃいけないんじゃないかと思ったが、言わないでおいた。
《ただ、今のところこの精霊になったのは俺等2人みたいだから、他の転生者は何になってるか分からないね。》
「そっかぁ...。」
凪は改めて2人の事を思い出す。
三浦楽。
学校ではイケメン3人衆の1人だった。
そのため、こっちの世界で人間ではないのは、少し可哀想かも知れない。
まぁ、どっちにしろ同じ顔で転生出来るかも分からないので、そう言えるかも悩みどころだ。
桜野莉奈。
The陽キャ。
いつもクラスの真ん中にいた存在。
僕っ娘でボーイッシュに見えるが、運動神経は皆無。
そのため、精霊で良かったんじゃないかと思う。
「それで、これから2人はうち等の事を手伝ってくれるんだよね。」
〈そうだよー!〉
《アナウンスをやるからと、色々な情報の本を沢山貰っているからね。何かあったら言っていいよ。ただ...。》
「「ただ...?」」
《こういう風に話すのは禁止になっている。個室でやってるから良いとはいえ、バレそうになったら少し離れるから、何も話さなくなったら察してくれると嬉しいよ。》
やっぱりかと凪は思う。
結衣は普通に驚き、祐奈はそうだっけと呟いている。
「分かった。あぁ、うちの事は凪でいいよ。」
《じゃあ俺の事も楽でいいよ。》
〈私も莉奈で!〉
「なら、私も結衣で...!」
これから共にいるのに堅苦しいのは嫌だから、皆が皆仲良くなったところで、凪が次の話を切り出す。
「ここで生きるとなると、やっぱりレベル上げが必須だよね?」
〈そうだよー!僕、そういうゲーム沢山やってるから分かるけど、レベル上げしないと死にまくり!この世界でのゲームオーバーは本当の死だからね...。まずはレベル上げをしよう!〉
莉奈はRPGとかのゲームを沢山やってたのだろう。
凄く助かる。
「と、とはいえ...モンスターとかを、倒せるのでしょうか...?」
《それは分からない。君達が今いるところはダンジョン内最高レベルの場所だからね...。》
「「は?/え...?」」
レベル1の雑魚を最強ダンジョンに放つか普通。
《けれど、最強ダンジョンに配置されるって事は、その環境に耐えられる強さはあるかもしれない。》
「まぁ、確かに...けどうち、ゴブリンだよ?手違いで迷い込んだ感満載よ?」
ゴブリンはスライムと並ぶ初期モンスター。
つまり雑魚である。
〈普通ゴブリンは武器を持ってるはずなんですけど...武器無しはキツいですねぇ...。〉
《いや、あるかもしれないよ。》
「えっ?」
《転生者は転生ボーナスとして、1つから3つまでユニークスキルが貰えているはずだからね...。》
凪はそんなの聞いていないと言わんばかりの顔をする。
《ちなみに俺の場合は【視覚共有】。アナウンス係ってのもあって、戦いには適してない...情報収集とかに使えそうなスキルだね。》
〈僕は...普通に【念話】だ。もし緊急時にこの連絡手段が使えなくなったら、使ってもいいかも!〉
「ちなみに私達のはどうしたら見れる?」
今のところ、見る手段がない。
1つを除いて。
〈【鑑定1】の熟練度を上げるしかないと思うよ。つまり、鑑定を使いまくる!!〉
「やっぱり、それしかないんですね...。」
結衣も気づいていたようだ。
「やるか。」
〈頑張れ。〉
そこ等へんにある石や壁など、沢山の物を鑑定しまくった。
正直言う、面倒。
けど、これ以外ユニークスキルを知る方法はないだろう。
まぁ、もう1つあったとして【ステータス1】を上げることだ。
これは【鑑定1】と違って、自分という1つの存在しか調べることが出来ないため、【鑑定1】の熟練度上げて他の物も調べられるようにする方が得だろう。
「...そういえば、こんな無防備にしてて、敵来ないの何でだろう。」
《確かにそうだね。普通なら来ても...っ!?》
楽が何かに反応をする。
それに莉奈も気づいたようで、声を合わせる。
《〈回避っ!!〉》
その声に反応するように、凪と結衣は後退する。
2人が先ほどまでいた場所には、自分達より口じゃ表せないほど大きいドラゴンがいたのだった...。