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ブラックスミスギルドの男 Side:ロブソン

◆Side:ロブソン



「カロンにアドルファス……実に騙しやすい相手だった」



 帝国の貴族はクソだ。

 特にケルベロス公爵家は許しがたい。ヤツ等は民のことなんて、これっぽっちも考えていない外道だ。


 だから、まずは馬鹿息子を騙してやった。

 あのガキは馬鹿正直にブラックスミスギルドに加入したいと言った。なんの学もない、貴族のガキが。


 義理の妹を助けたくて帝国中を奔走したらしいが、憐れな。


 そんな理由でギルドに入れてくれるお人よしはいない。


 散々雑用させ、ゴミみたいなスキルしか教えなかった。結果、カロンはまともに成長せずに“ただの商人”程度の能力しか持ち合わせなかった。所詮、貴族のボンボン。七光り。

 どうせ心のどこかでは俺を見下しているのだろう。



「……さて、お次は父親の方だ」



 カロンを追放して丁度、アドルファス・ロビンソンが俺の鍛冶屋を訪れてきた。こちらから出向こうと思っていたが、手間が省けた。


 公爵様自ら来るとはな。



「ここがブラックスミスギルドかね」

「これはこれは名高い公爵様。そうですとも、ここはブラックスミスギルドでございます! さあ、こちらにてご用件を伺いします」


 来客用のテーブルに案内し、俺は様子を伺う。


「どうやら、ここで息子が世話になっているようだな」

「御存知でしたか。ええ、カロンくんはよく働いてくれました。しかし、残念ながら一定の能力を超えられず……ブラックスミスとしての水準には達しなかったのです」



 そう伝えると、ケルベロス公爵アドルファスは妙に納得していた。



「そうか。息子はギルドを追放されたのか」

「申し上げにくいのですが……その通りです」

「分かった」


 静かに立ち上がるアドルファス。

 なんだもう帰るのか。

 このチャンスを逃してなるものか。


「そうです、公爵様」

「なんだ?」

「実は儲かるビジネスがあるのです」

「……ほう、話してみろ」


 やった。興味があるようだな。

 俺はそのまま話を続けた。


「ぜひ、ブラックスミスギルドに投資して欲しいのです。まず、こちらをご覧ください」


「なんだこの“石”は?」


「これは最近発見された特殊鉱石アイテム『パラジウム』でございます! 滅多に手に入らない超貴重なものなのですよ」


 当然、これはニセモノ。

 本物なんて入手困難だ。


「これは美しい。不思議な魔力も感じる」


 ニセモノの美しさに、魔力も適当に込めたものだ。知り合いの錬金術師に頼んで作って貰った特注品だ。精々、5000ベル程度の品。素人にはそれが分からん。あまりに精巧すぎてな。


「このパラジウムを売れば大儲け。ですが、加工も必要でしてね、莫大な資金が必要なのです」

「なるほど、加工が叶えば儲かると言いたいのだな」

「そうです。投資していただければ、確実に利益が出ます。公爵様からのお力添えとあれば、上乗せしてお返しできます」



 悩ましそうに顎をしゃくる公爵。

 ……もう一押しか。



「では、息子さんに悪いこともしましたし……他のブラックスミスギルドに推薦しましょう」


「本当か。あの不肖の息子は、あれでも真面目でな。それはありがたい」



 ……クク、馬鹿め。

 騙されているとも知らずに!!



 こうして俺はカロンを散々こき使って追い出しただけでなく、その父親から莫大な資金援助を得た。もちろん、鉱石なんてウソっぱち。


 俺は金をギャンブルや女遊びに使いまくってやった!!



「フハハハ……! アハハハハハハハハハハハハ!! 笑いが止まらねえ~~~!!」



 それでも余った資金は、隠して埋めた。これで金は俺のモノ!! もう鍛冶屋なんて汗臭い仕事をしなくて済む!!


 一生安泰だァ!!



 俺はさっさとブラックスミスギルドを畳んで、帝国を脱出しようとした。



 のだが。



『――――ッ!!』



 店を一歩出た瞬間、喉元に剣を突き付けられた。……な、なんだこの禍々しい黒い剣は……まるでS級魔剣クラスの武器。


 こんなモンを持つ冒険者は滅多にいない。


 ――って、この小僧(ガキ)……まさか!

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