追放
義理の妹・ステュクスを救うために俺はブラックスミスを志していた。
鍛冶屋の店主・ロブソンさんは、そんな俺を憐れに思ってくれたのか、武具を作るためのスキルを伝授してくれた――はずだった。
俺は、義妹の病の進行を遅らせるという防具を作る為に必死だった。だが、ロブソンさんは最初からその気はなかったんだ。
「カロン、お前は公爵家の人間らしいな」
「……気づいていたのか、ロブソンさん」
「知っていたが、あえて黙認していた。だから、満足に仕事も与えず、スキルも教えなかった。雑用ご苦労だったな、カロン。もうお前は用なしだ。ブラックスミスギルドから追放する」
「――は!? 待ってくれよ。そんな……嘘だろ」
確かに、ずっと雑用ばかりだった。でも、義妹の為だと思って必死に頑張ってきたのに、こんなのはあんまりだ……!
「悪いな。俺は貴族が大嫌いなんだ。帝国の貴族は、俺たちに何を与えてくれた? ただ奪うだけ。搾取するだけだ。お前の義妹? 心底どうでもいい」
吐き捨てるようにロブソンさんは去っていく。
……そんな、そんな、そんなのってないだろ!
「ロブソンさん! 俺は本気で義妹の為に」
「……出ていけ。どのみち、お前はロクに防具も作れなかったポンコツの無能。せめて、B級ランクの防具を作れていたのなら、大目に見ていたかもしれんが……どれもE級ばかり。ゴミだ。ゴミ以下だ」
失望した――と、ロブソンさんは店の奥へ消えた。
俺はもうこの鍛冶屋にいられない。
* * *
お店を出ていく。
……それでも、諦めない。
俺はなんとしてでも、義妹……ステュクスの病を止めたいんだ。
医者に治すのは難しいと言われた。
ならせめて進行を遅らすくらいは……してやりたい。
S級ネックレス『アブソリュート』が作れれば、きっと病の進行が遅くなる。それだけじゃない、身も心も楽になると書物に書かれていた。
そのS級防具を作る為にも、ブラックスミスの技術が必要なんだ。
だが、俺を雇ってくれる鍛冶屋はなかった。
「クソ、クソ……!!」
壁を殴っても痛いだけだった。
……どうすりゃいいんだ。
こうなったらヤケクソだ!!
【武具製造スキル】
【Lv.1】
【詳細】
武具を製造するスキル。
製造には専用の武器と材料が必要だ。
成功率や武具ランクはスキルレベルによって上昇する。また、自身のステータスにも影響される。
スキルを使おうとした――直後。
俺の全身にノイズのようなものが走ってビリビリした。
な、なんだ……?
驚いているとスキルが変化していた。
【武具錬成スキル】
【Lv.10】
【詳細】
武具を錬成するスキル。
製造とは違い、専用武器と材料が不要。魔力による錬成を行う高位スキル。武具ランクは、最初からBランクが保証される。
錬成成功率はステータスにも影響される。
「え、嘘。なんで変わったんだ? しかも、製造ではなく“錬成”ってどういうこと?」
俺はさっそくスキルを使用した。
すると材料もないのに『魔剣』と『防具』が作れてしまった。
【アノマロカリス】
【詳細】
S級クラスの魔剣。
古代王の遺産。
無属性最強の剣。
無属性だけで攻撃する場合、十倍のダメージが追加される。
【アブソリュート】
【詳細】
S級ネックレス。
どんな病でも進行を遅らせる特殊な防具。
この防具は特殊鉱石アイテム『パラジウム』を使い、SSS級『アブソリュートゼロ』に強化できる。
これは驚いた。
S級の魔剣が一発で出来てしまった。
いや、それどころじゃない……。
俺の一番欲しかった『アブソリュート』が手に入ってしまったのだ
なんなんだ、このスキル!
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