第2話 メタバースのカフェで会いましょう
アナペロは動物行動学の課題のレポートを書いていた。
・・・ユニバース25とは・・・
1968年から1972年にかけて、アメリカの動物行動学者 : ジョン・B・カルフーンがマウスを使って行った実験。天敵が居なく餌も充分にある広い飼育環境下(≒マウスの楽園)でマウスを繁殖させ、記録・観察をする実験をカルフーン氏は、それぞれ別のスケールで25回行ったが、いずれもマウスは全滅した・・・
ユニバース25という実験についてのレポートである。
餌や水を与え続け、病気を予防し続けたときにマウスがどのように増え、どのような行動パターンでマウス社会を形成するのかを調べる実験だそうだ。ヒトを使って、病気や事故をなくしたらコロニーは全滅するのかという実験をしたら面白いと思う。
先週は、進化動物学の授業の方でチンパンジーについての、課題のレポートを書いた。アナペロは生物学の授業を2つ取っていた。絶滅したチンパンジーなんかのレポートを書いてなんの意味があるんだろう?と思った。
けれど、アナペロは生物の授業が好きだった。関心がある。次から次に興味が湧いてくる。けれど、動物は好きではなかった。
子供の頃に家で飼っていた犬を思い出す。名前はなんだったか思い出せない。アナペロの父は、飼い犬のことを単に「犬」と呼んだ。
「アナペロ、犬を触ったあとは手を洗いなさい」
「あれ? 犬は何してる? 寝てるのか」
(母に対して)「犬に餌やったか?」
小さい頃、そんな父が可笑しかった。アナペロも犬と呼ぶようになった。吠え癖が酷かったので父が躾用の首輪を購入しようとしたら母親が、かわいそうと言って止めた。犬の吠え癖は死ぬまで治らなかった。犬が死んだとき、母親はハンカチで目を拭っていた。母親の性格は死ぬまで治らないだろう、考え方も。
『明日はお母さんと朝ごはんかー』
あまり気乗りしなかった。
レポートを仕上げたあとは、配信の準備をした。
メグマグに、今日は早めに終わらせたいとメッセージを送っておいた。
アプリを開いて配信スケジュールを確認する。
今日は、『星のシリーズver4.0』のプロモーションと、そのあと雑談予定だった。
『星のシリーズ』は2年前から人気の商品の最新モデルで、直感的なコントロールで、脳内物質を出すための五感エフェクトを組み合わせて、気分を上げる『流星』と、気分を落ち着かせる『惑星』がある。
基本エフェクトは600個で、自分で新しく作ることも可能。配信ではオリジナルエフェクトを作る予定だ。
アナペロは、ペロチュという名前で、
メグマグは、マグワアルという名前で配信を行っているが、この『星のシリーズ』で「ペロチュのレシピ」と「マグワアルのレシピ」は大人気だった。『星のシリーズ』関連の動画は、生配信では同接500万人、地球上の1000人に1人が見ていると思ったら、けっこう凄い数字に思える。
「「こんばんはーマグワアルとペロチュのマグペロCH!」」
「今日は星のシリーズver4.0でオリジナルカクテルを作る配信をしていくよー!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ふわぁぁぁ」
昨夜はメグマグが雑談を早めに終わらせてくれたので、早めに寝ることが出来た。
時間を見ると、午前4時34分だった。
スマデバを取り出して、母親にメッセージを送ってみる。
”早めに目が覚めたんだけど、もし良かったら時間早めても良い?”
しばらくして、母親から返事が来た。
”大丈夫。お母さんは5時10分には着けると思う”
”分かった”
少し時間があった。