詐欺師がついた最後の嘘
作品URL:https://ncode.syosetu.com/n6128hg/
作者名:はなまる 様
レビュー日時:2021年10月19日
レビュータイトル:期待を裏切るな。予想を裏切れ。
★★★★★レビュー★★★★★
小説の指南書によくある言葉です。
読者は物語に期待します。勧善懲悪が最たるものでしょう。
善人は報われて欲しい。悪人は滅びて欲しい。
でも、主人公が悪人だったら?
この物語の主人公ザンギは嘘ばかりついて人々を不幸に陥れて生きてきた男。
その数なんと9999回。
でも実はこの世界。1万回嘘をついたら小鬼に食べられてしまうのです。
そこに現れる小さな女の子。ザンギは「嫁に行くまで面倒を見る」と小鬼にいうのですがーー。
嘲笑う小鬼。守られるはずもない言葉。
題名を見た段階で思いましたからね。
『悪人が改心して善人になるやつだ!』
作者は期待を裏切りませんでした。しかし予想は裏切った。
読み終わった瞬間に思う。
『これは果たしてハッピーエンドなのか? アンハッピーエンドなのか?』
私は確信しています。これはハッピーエンドなのです。
痛快にーー予想をーー裏切られました。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
前々から気にはなっていました。
無限に『童話』ランキングのトップに載っているのです。私はあまり童話は読まないのですが、ついに根負け(?)してしまいました。
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ある街にザンギという名の、録でなし詐欺師がいた。どうにも褒めるところがなく、人として大切なものをどこかに置いて来てしまったような男だ。
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冒頭読んだ瞬間ゾワゾワゾワ〜ッとして『これはいける……』と感じました。
童話は読まない私ですが、エッセイは無限に読む。というか普段エッセイにしかいない。1位から100位まで目ぼしいものは全部読む。
間違って何度も同じエッセイを読む。最後まで読んでからすでに付けてる『応援ポイント』を発見。
「もう読んでたわ!!」
記憶に関する脳細胞が死んどるのかな?
そんでエッセイは「こうすればあなたの小説はもっと良くなりまっせ」系のいわゆる『指南書』がごまんとあるわけですね。
それに書かれているのが『よく○○話から面白くなりますというあらすじがあるが1話目から面白くしてこい』ってことです。
いんや。本当に面白い話ってのは1話目から良いんじゃないんだよ。
1行目からいいの。
これがその代表格だと思います。小説書く人は全員読もうぜ。マジでガチでおススメするぜ。
あくまで私の持論なのですが、登場人物のキャラクターは物語のなるべく早いうちに出した方がいいのです。
今から例文を書きます。
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Aはポケットから拳銃を取り出すと、Bの額にあてた。
「残念だよ……Bくん……」
「そんな……A……今までの……今までの僕たちの関係でこれはないんじゃない?」
Bの膝がはっきりと震え出した。
「仕方ないんだよ。Bくん……もうやるだけのことはやった。あとは君を『リセット』してやり直すしかないんだ」
Bの命乞いが倉庫内に響く中、『パンッ』と乾いた音が短く鳴った。
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はいこれ。読んではみたけど『ふーん』じゃなかったでしょうか。なんかイマイチ情景浮かばねぇなという。
でもね。頭の中でAを『ドラえもん』Bを『のび太』にしてみてください。
急に
『ええええええええええっ!?』
ってなりませんか。
「そんなー! ドラえも〜〜〜〜〜〜〜ん」
(´;Д;`)
てなるでしょう? なぜか?
最初の文はキャラクターの手がかりがなく、頭の中で補完していただいた文にはキャラクターがあるからですね。
私たちは『キャラクター』がないとなかなか登場人物に心を寄せられないのです。
つまりなるべく早く読者に『キャラクター』を認知してもらい、物語に没入してもらうのが正解なわけです。
それでこの『詐欺師のついた最後の嘘』だ!
冒頭3行で主人公のキャラクターを完璧に説明してる!
すげぇ! 今から『はなまるさん』じゃなくて『はなまる先生』と呼ばせてください!! 『博多はなまる•大吉先生!!』あ! 違った! それ漫才師の方だ!
このお話1904字しかないのですが、米を削りに削って作られた大吟醸(日本酒)のように磨かれてます。
いくらでも御涙頂戴に出来たところ、あくまで淡々と結末に向かうところがまたいい。
そんでラストもいい。全部いい。とにかくいい。
レビューを書くために5回ほど続けて最初から最後まで読んだのですが、最後は泣いてました私。
傑作。傑作でございます。




