龍っ娘と鬼っ娘
本日2話目です。
ユートは項垂れつつ割り当てられた部屋に入る。四人部屋らしい。二段ベッドが二つある。
一人女の子が先にいた。青い肌をした鬼…の子のようだ。
「は、初めましてでござる。某、レンと申す。鬼族の者でござる。」
ござる?この世界の鬼は武士なのか?
「私はユート。よろしくね。」
「エ、エルフでござるか。初めて会う種族でござるよ!! 」
テンション高めに途端に気色ばった笑顔と黄色い声で反応する鬼っ子。
なんか近視感ある。クラスメイトにこういう子居たな。自分の事拙者とか我輩とか言っちゃう女子。もしかして武士ではなくそっち系の子かな?
レンと握手をしているとドアが開いて新たに女の子が入ってくる。
赤毛のちんまりした女の子だ。10歳くらいに見えるがギルド学院は13歳以上だから13にはなってるんだろう。瞳に特徴がある。黄金色の虹彩。縦に黒い瞳孔。いわゆる龍眼だ。
品のある立ち居振る舞い。育ちの良さを感じる。
そして高らかに宣言する。
「お初にお目にかかる。我はリィカ。誇りある龍の血族である。愚民共よお前達には我の側付きを許す。光栄に思うように! くはははは‼︎」
ごすん! いきなり殴られる龍っ娘。
後ろにメイドらしき猫耳眼鏡女史が立っている。猫耳がヒクヒク動いてる。猫獣人って事か。
「なんですかそのご挨拶は!お嬢様、ご同室のご学友は側付きメイドではありませんよ‼︎」
「いたいぞミヤマ」
ミヤマと呼ばれた眼鏡女史はユート達の前に頭を垂れる。
「失礼を致しました。ご同室の皆様、龍族の姫故に我儘にお育ちになられたリィカお嬢様ですが心身ともに頑丈ですので多少乱雑に扱われてもかまいません。よろしくお願いしますね。」
「は…はあ」
猫耳眼鏡女史はまだ頭をかばっている龍っ娘に向かって
「お嬢様、ご学友にあまり我儘を仰られると嫌われてしまいますよ。しっかりお勉強なさってくださいね。私はいつでも見ていますから。では。」
言うだけ言ってふっと消えた。消えた⁈ 忍者か⁈この世界忍者がいるのか?ユートは異世界侮りがたしと思うのだった。
龍っ娘は1人になるとなんか恥ずかしいのかモジモジし始めた。
「…リィカじゃ。よろしく頼むのじゃ。」
照れながらご挨拶。うむ可愛い。ユートは思わず頭を撫でてしまった。妹好きの悪い癖だ。
「な、な⁈」
「あ、ごめん。私はユート。エルフっぽい何か。よろしくね。」
「某はレン。鬼族でござる。」
どうやらこの部屋は三人部屋らしい。ベッドの位置を割り振り、居場所を決める。ユートは背が高いほうなので下段に落ち着いた。龍っ娘は特に我儘を言わず大人しく従っている。借りてきた何とかのようだ。
その後三人で食堂、浴場、トイレを確認。トイレはエルフの里のように水洗とスライム浄化システムの組み合わせだ。紙ではなく尻拭き用の葉っぱがこの世界には普及している。使用感は上々だ。かぶれもしない。
学院のカリキュラムは明後日から。ぽっかり時間が出来たユートは『収納』の中を整理する事にした。とにかくなんでも突っ込んでここまで来たし。一応成績優秀者を目指すが保険として学費分は何とか捻出せねばなるまい。売れるものは根こそぎ売るのだ。
学院内には生徒が依頼等で手にした素材を買い取るギルド分店があると聞いてさっそく出かける。
本校舎内のギルド分店は大きい解体場が併設されているのですぐわかった。
「おっちゃん、獲物を買い取ってー」
おっちゃんはいなかった。
職員は全員女性だった。
妙齢のおばちゃん達ががっすがす獲物を捌いてた。
「なんだい失礼なエルフの嬢ちゃんだね。何の用だい。」
怒らせてはいけない。ユートは深々と謝る。ごめんなさいお姉さん。
「狩った獲物と素材を買い取って欲しいんだけど。」
「どんなの?捌いてあるの?」
ムスッと答える妙齢のお姉さん。
『収納』にはエルフの里で狩ったまだ解体を覚える前の獲物が山盛りだった。
「未解体の魔熊とか魔猪とかワイバーン。」
「ワ、ワイバーン⁈」
「うん。」
全部『収納』から出す。魔熊が5、6体、魔猪が15体、ワイバーンが3体。あとは…
「ま、待って待って!」 おばちゃん仰天。
「ち、ちょっとみんな、手を貸しておくれ!ヤバい奴が来たよ‼︎」
「なんでワイバーンなんか抱えてんだい‼︎こんなのCランククエの獲物だろ‼︎」
ヤバい奴って…他のおばちゃんらがわらわら寄って来て鑑定を始める。みんな笑顔じゃん。なんで嬉しそうなの?
聞くとここは学院だから大抵FランクEランクの小型魔物ばかりでこういう大物は滅多に回って来ないそうだ。なるほど。まあ喜んでいるならいいか。
「ちょっとあんた、どれもこれも狩ったばかりみたいな鮮度じゃないか!どうなってんだいあんたの収納?」
うん、時間凍結してるよ? そういうものじゃないの?『収納』って。え、違うの?大抵ただの収納箱?たまに冷凍できる人がいたりするの?へー…。個人個人違うんだなぁ。ユートは『収納』にも個人差があることを初めて知った。
ん、ワイバーン最初の一体をサンダーブ◯イク…いやエルフブレイクで黒コゲにしちゃってますね。価値が落ちますか。ふむふむ。反省。
他には鹿の角とかエルフの里のキノコとか薬草の原料とか生成したポーションとかぽろぽろと提供してみる。
売った獲物を解体して肉を幾ばくか貰い『収納』に戻す。食肉用のストックだ。自分で料理をするのだ。そういや売った素材が高いのか安いのかユートにはわからない。物の適正価格を把握していないのだ。
その内街に買い出しに行こう、とユートは思う。
「はい、全部で35万7000ゴールドだね。ワイバーンとか街中のギルドだともう少し高値で買ってくれると思うけど向こうは冒険者免許がないと買い取りはしないからね、これで勘弁しておくれ」
申し訳なさそうなおばちゃんだがユートはこれが適正金額かどうかわからなかった。なので特に気にしなかった。
ユートは新たな気持ちで寮へと戻るのであった。
次話は明日予定。




