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妹は…町工場の娘。

ユートが目を覚ました時、目の前には魔道王サークライがいた。


「まったく無茶をするねユートくん。君、ちょっとの間死んでたよ?」

「…ここは…?」

「魔王宮だよ。…エルフの里から転移魔法陣で搬送して来たんだ。 …グリュエラのご両親が里から私に知らせに来てくれてね。」


 里から滅多に出ないであろう爺さん婆さんが魔王都まで…里が大騒ぎだったのは容易に想像出来る。あれから里はどうなったのだろうか。エルフのみんなは大丈夫だろうか?


「【勇者】と戦ったんだってね。無茶をする。あれは【魔王】すらタダで済まない相手だよ?」

「…12歳くらいの少女でしたよ? リィカ達くらいの。」

「神殿で純粋培養されるからね【勇者】は。グローザムの為だけに働く戦士。他国の道理も理屈も聞き入れない。洗脳…とまでは言わないがまあ頭が硬い連中だね」


 ユートは切られたお腹を調べてみたが傷がまったくなかった。。本当にサークライは蘇生魔術が使えるようだ。魔道王は伊達じゃないってことか。


そのままユートは里での出来事を報告する。


「聖剣をへし折ったぁ⁈ 勇者の聖剣って…確か…」

「確か…?」

「いや、何でもない。」


口ごもるサークライ。? 何かあるのだろうか?


「まあ、しばらくここで療養したまえ。相当血を流したようだからまだ起きるのは辛いだろう。 エルフの里には君の無事を知らせておくから。」

「エルフの里は無事なんですか? あの後勇者達は…」

「現れた形跡はないよ。聖剣を折られて割りに合わないと思ったんじゃないかな。勇者は気まぐれだからな。」



 魔王軍のほうからも勇者の動向の監視を強化しているそうなのでユートはそのまま3日ほど魔王宮で寝て過ごした。


 魔王宮は魔王の城のはずなのに魔王が居着いた事がないらしい。貴族制度ではなく、魔王都民の地区代表から公務員として職員が運営しているそうだ。要するに魔王宮はでっかい都庁、サークライは副都知事、みたいなもんだ。で、都知事が留守がちと。


 ユートの体調が戻り魔王宮を出ようとしたら、サークライから新たな情報がもたらされた。


「ふう、ようやくグリュエラが吐いたよ。【ドワーフ】の嫁、ミカの行き先」


「母さんが…?どうして」


「ミカとその娘は君のいた異世界…地球ににいるんだ」


ユートは耳を疑った。


「は⁈」


 ドワーフのミカさんは相当の変わり者らしい。ドワーフは周知の通り鍛治と採掘を生業とした山の民である。ミカさんも優れた鍛治職人であり元々は強力な剣や防具を製作していたそうだ。

 だが魔王に出会ってしまった。魔王は異世界から様々な機械…メカニックを持ち込んだのだ。時計、電話、自動車、発電機…ドワーフであるミカさんはたちまち近代メカのとりこになった。分解し、構造を理解し、ネジと歯車に夢中になった。

 その真髄、技術を手にする為に異世界にわたったのだ。

 その事をマイマザー…グリュエラさんは知っていた。


「元の世界って…どうしたらいいんですか⁈」

「行って来たらいいんじゃないかな?【転移門】あるし」


はいい? 

【転移門】…使っていいんですか? 国家級の魔道具じゃないんですか?


「グリュエラは毎日通うのに使ってるし。別にいいよ? 今から行くかい?」


まさか。予想外の事態。こんなに呆気なく元の世界に帰れるなんて。


 


 魔王宮の地下。仰々しい防御結界に囲まれた部屋に魔法陣が描かれている。あれが【転移門】だ。


「使い方は覚えたね?向こう側の【簡易転移門】に魔力を流せば起動する。よろしく頼むよユートくん。」



【転移門】に乗る。魔力を流す。陣から光の柱が立ち上がりユートを包む。



目を開くとそこは…ユートの自宅の家の玄関だった。

こんなとこに【転移門】あったのかよ‼︎


 自分ちだ。何ヶ月振りだろう…。そう言えば居なくなったあの日、中学卒業の直前で高校受験を控えていたんだよ。世の中はどうなっているんだろう。ユートなんだか急に怖くなった。おいてかれてるような気がして。

 自宅は変わっていない。グリュエラさんは掃除をしない人なのでその分荒れているようだが。ユートはいつもの日課のように掃除を始める。ふと鏡を見るとエルフの女がそこにいた。ユートは自分を鏡で見ることは滅多になかったので自分の姿に慌てた。

 そういえばこの世界でも魔法は使えるのだろうか?ふとユートは考えた。

試しに魔力を全身に流してみる。うん、回るのを感じる。魔法を使ってみる。指先から炎が出る。少し風を纏うと宙に浮く。…こちらの世界でも魔法が使える。

『収納』を開いてみる。ちゃんと中身を確認出来る。

なるほど、魔力の概念を知らなかったから以前は使えなかった訳か。

 

 掃除を終え、『収納』にあった食材で軽い夕食を作り置いていつもみたいにグリュエラさんにスマホで連絡入れようとして気付く。とっくに電池が切れたスマホを充電器に。


ユートの頭の中に疑念がひとつ浮かぶ。

グリュエラさんはこの世界と異世界を好き勝手に移動していたよな?

そういえばグリュエラさんに電話をかけるといつもちゃんと繋がったぞ?

どういう事だ?異世界でも通話できるのか?


 そこまで考えているとヒュン、と魔力が動いた感覚がした。玄関だ。


「フーンフフーン♪」


部屋に入っていきなり服をこちらの世界の普段着に着替え出す女。

グリュエラさんだ。


「お帰り。母ちゃん。」

「おや ユート‼︎ 帰ってたのかい‼︎」


平然と答えるグリュエラさん。どうやらまたサイゼ◯ヤに外食に出掛けるつもりだったようだ。危ないとこだった。たまには自炊しなさい!

 ぶーたれるグリュエラさんと久しぶりの母子の夕食を摂る。そうだ久々にテレビも見れる。…が、今さらこの世界のニュースはさっぱりリアリティがない。


 ユートはグリュエラさんにドワーフのミカさんの居所を聞く。機械にのめり込んだミカさんはなんと隣町で町工場を経営しているらしい。…ワンオフの特許技術も持った世界シェア90%を誇る特殊なネジを作ってるんだって。異世界から来たのに…ドワーフの技術力ハンパないっす。



 翌朝、グリュエラさんに手紙書いてもらい、土産にさすがにこの世界の住人に手作りスイーツは申し訳ないのでお気に入りの駅前のスイーツを購入してミカさんの元へと向かう。

移動は電車だ。文明の利器久しぶり。


 ミカさんの工場は見た目は普通の町工場。だが飛び散る火花や機械音の周りにすごい魔力が宿ってる。間違いない、魔法の工房だ、ここ。


「すいません、ミカさんはいらっしゃいますか?」


奥から身長140cmくらいの中学生に見える女の子が出て来る。


「あいよ。あたしがミカだけど…」  


ミカさんはユートの顔を見て固まる。 わかりやすい。魔王にそっくりだもんな。


「魔王…」

「そんなに似てますか。まったく迷惑だ。」

「‼︎ お前さん、グリュエラんとこのユートくんだね‼︎

でっかくなったねえ! おばちゃん覚えてるかい?前会った時はこーんなにちっちゃかったからねえ。ん?なんで女エルフの姿してんだい?昔は男の子だったろ?」


カラカラ笑うミカさん。いや女子中学生にしか見えないんですけど。おばちゃんって言われても…

ちなみに家にも何度か遊びに来た事があるらしいが…2、3歳の頃だって。そりゃ記憶にない。

 ユートは預かった二通の手紙…グリュエラさんとサークライからの物、を渡す。あ、途中で買ったケーキも。


「あ、お茶でも用意させるよ。おーいカナコ‼︎お茶入れておくれ。三人分な‼︎」


工場の端の方から返事が聞こえる。ミカさんに工場内の事務所に案内されると、お茶を持って今度は小学1、2年くらいのちんまい女の子が入って来た。


「はい母ちゃん、お茶。」

「あんがとカナコ。お前も座りな。ほれ。」


手紙を一通り読んでミカさんは顔をユートに向ける。


「お前さん、勇者の聖剣をへし折ったのかい⁈」

「え、ええ…」


話すのを躊躇っているとミカさんが


「あ、いいんだよ、あっちの話をしても。この子は全部知ってる。紹介まだだったね。この子がカナコ。お前さんの妹だね。ほらカナコ。ご挨拶しな。」


目を丸くして驚いてる少女。どう見ても初耳っぽいんですけど⁈

こちらから挨拶してみる。


「初めまして。私は門馬優斗もんまゆうと15歳。君がどこまで知ってるかわからないが私達には兄妹が大勢いる。七人兄妹だよ。私はその長男。よろしくね。」

「あ…。は、初めまして。あたしは門馬可奈子もんまかなこ。14歳。向こうの世界に兄妹がいるのは知ったけど…お兄ちゃんがお姉ちゃんになっていたのは知らなかったよ…。」


14歳⁈ 半分くらいにしか見えない。 ドワーフは成人しても子供に見えるとは聞いていたけどここまでとは…


「14歳か。じゃあカナコが長女。妹が五人いるよ。みんな可愛がってあげてね。」

「会えるの?妹達に?」


ユートはあちらの来春…季節が反対でこちらは今が冬だから来秋か。来秋にある卒業の祭典で親父と対面するイベントの話をする。息をつくカナコ。まだ見ぬ親父に想いを馳せているようだ。

 するとミカさんが話の続きを振る。


「ユート。サークライの手紙だとお前さん自分で打った剣で戦ってたんだってね。少し見せてくれるかい?」

「? はい、いいですよ。」


ユートは『収納』からボロボロのセラミックソードを取り出して渡す。セラミックソードをじっくり眺めるミカさん。


「なるほど、打ったと言うより全ての工程を魔力でゴリ押したっていう剣だね。…四大精霊が味方するとここまで出来上がるのかい。ある意味嫉妬するねえ。」


ミカさんの目が怖い。鍛冶師の目だ。


「何しろこのあたしが打った【勇者の聖剣】をへし折ったハイエルフの得物だからねえ。」


なんですと…? あの勇者の剣をミカさんが打った?


「正確には前勇者にだけどね。勇者は親から貰ったって言ったんだろ?」


そう俺はサークライに報告した。心当たりがあったわけか。うーむこれは…謝らないといけない案件か?


ユートは申し訳なさげに頭を下げようとするが


「ああ、折ったのは仕方ないよ。そういう時もある。

ただね、手紙にユートに鍛治を教えてくれって書いてある。」

「は?」

「見よう見まねで自分の身を守る武器を作らせるのは危険だと判断したんだろ。 ただね、あたしはもう剣は打たないんだよねぇ。」

「は?」


ミカさんは今は電子精密機器とかロケットのバルブとかに熱心で鍛治は休業中らしい。代わりにとカナコを推薦された。


「カナコはこう見えて金の精霊に愛されたドワーフ期待のホープさね。あたしの鍛治技術の全てを叩き込んである。材料もあるよ。この工場にはオリハルコン・アダマンタイト・ミスリル銀等向こうの山で採掘した素材が山盛りだ。こちらの素材、カーボンもチタン合金もあるよ。まあ必要なのはお前さんの魔力だけどね」

「は?」

「打つのはあくまでもお前さんだからね。カナコ、面倒見てやりな」

「うん」



 ちなみにグリュエラさんの手紙はいつか都合の良い日にママ友ランチしようという内容だったらしい。…メールでいいじゃん…



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