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俺、エルフの里に里帰りする

 ユートが高山地帯の天使族の里から魔王都に戻ってしばらく。

余りにエルフと天使族の仲の悪さが気になったユートはエルフ側にも事情を聞きたくなって来た。

 一度エルフの里に顔を出して見ようかと思う。

いわば里帰りだ。



 がっつりお土産を買って帰ろう。エルフは何が欲しいだろう? 手に入りづらい食材とか香辛料とかがいいかな?異世界と言えば香辛料だよな。


 ユートはギルド学院女子寮の寮母さんに里帰りする旨を伝え風の精霊を纏い高速で魔王都上空をエルフの里に向けて飛んで行く。最初の頃は跳び跳ねるように飛んでいたのに今はスムーズに高速移動できる。精霊が身体にだいぶ馴染んだからのような気がする。


 朝出てその日の陽が沈む前にエルフの里に着く。行きは5.、6泊した経路を1日で移動できた。すごいな風の精霊の力は…ユートは改めて感謝する。


ーどういたしましてー


身体の内側から返事が帰ってくる。ユートは自分はいつも精霊と一心同体なんだと嬉しくなる。



 さて迷いの森の奥、エルフの里には結界が敷かれているがハイエルフの姿だと素通りである。ユートが里の結界に触れた瞬間見張りのエルフ兵が現れる。


「お、ユートではないか。久しぶりだのう。」


火の魔法を教えてくれたカイナだ。見張りの当番らしい。


「お久しぶりです。みんな変わりはないですか?」

「まあな。平穏なものだ。さあ入れ」


里の中に入るとすぐに子供達に見つかり引っ張りだこになる。


「ユート‼︎ 久しぶり‼︎お土産はー⁈魔王都の珍しい食い物持って来たかー⁈」


思ったとおりである。

ユートはまず『収納』から撒き餌をするように子供たちに甘いものを配る。駄菓子屋で買ったかりん糖・金平糖・ふ菓子だ。魔王都には何故か売っていた。


「やったー‼︎また甘い物が食べられるー‼︎」

「ユート、ケーキ作ってー‼︎ 生クリームいっぱいのー‼︎」


子供たちは食い物の事しか言わない。久々に洋菓子が食べたいという子もいる。


「待て待て、長老に挨拶してからな。」


そういってユートは長老の屋敷へと向かう。


長老は相変わらず面倒な奴が来た風な態度でユートを迎える。


「なんじゃ戻って来たのか。どうじゃ元の世界に帰る手段は見つかったかの?」

「あー…。見つかった、というかなんというか。それが割とどうでもよくなったというか…」

「? あんなに帰りたがっていたのに 何があった⁈」


ユートは長老に言う。


「長老、グリュエラっていうハイエルフ、知ってる?」


驚きと嘆きの相まった表情を見せる長老。


「⁈会ったのか⁈ … 知ってるも何もあのバカはわしの孫じゃ。若い時にエルフの里を飛び出してそれから一度も里に寄り付きもせん。噂では冒険者になったとは聞いたが…」


は? 孫? グリュエラさんが長老の孫⁈


一呼吸おいて告白する。


「私、グリュエラの息子…だった。もともとエルフのハーフだったんだ。」

「はああああああっ⁈」


 腰を抜かしてその場にへたり着く長老。立てない長老を背負って屋敷に入る。

屋敷でお茶を飲んで落ち着いた長老が続ける。


「…グリュエラは元気かい…?」

「ピンピンしてるよ。 こないだも武闘大会で私が息子と解ってても笑いながら本気で攻撃して来て叩きのめされたよ」

「相変わらず好き勝手かい…。 お前がいた世界に一緒に住んでいたんだろ?どんな経緯でそんなことになったんだい、あのバカ…」


ユートは申し訳なさそうに切り出す。


「あの…他に母ちゃんの身内…例えば両親はいないんですか? …もしかしてもう亡くなって…」

「何言ってんだい! そこにいんだろ! ほらリュミエラ、ジゼル‼︎ 孫が来たよ‼︎」


長老の家のお世話係だとばかり思っていた若いエルフ二人が爺ちゃん婆ちゃんだった!

…苦笑いする二人。ごめんなさい爺ちゃん婆ちゃん。

わかんないよ見た目若者だもん。20代後半くらいにしか見えないよエルフ。


「エルフは長寿だからの。あの二人で300歳くらいわしで700歳じゃ。グリュエラが100歳くらいかの?」


…な ん だ と …⁈


「あの…私になると…どんだけ生きるんでしょうか?」

「ハーフエルフだと300歳くらいかの? しかしお前ハイエルフだから…1000年は生きるじゃろ?」


はいいいいいいいいいい⁈⁈

めっちゃ長寿でしたー‼︎

そんな長い人生、考えたくない!!


 ユートは爺さん、婆さん、曾祖母さんを交え、今までの地球での生活の事、魔王都に着いてからの事、そして…父親が【魔王】である事など積もる話をひとつひとつしていった。

 母ちゃんがこの里に寄り付かないと言ったが、当時好き勝手に生きて挙げ句の果てに魔王の子供を身篭った母ちゃんを長老が許すはずもないだろう。

 …魔王の子供であるユートの存在も許さないかもしれない。

だが長老は何も責めるようなことは言わない。

穏やかに微笑んでくれる爺さん婆さんを見るとおおっぴらには喜べないが優しく接してくれる…気がする。曾祖母さんの本心は…どうだろう。


 「…異世界で母子二人きりかい…辛い目に合わせてすまなかったね…ユート…」

「ごめんねユート…」

「寂しい思いをさせてすまなかったね、ユート…」


ユートは初めて身内から優しい言葉をかけてもらった気がして思わず目頭が熱くなった。


「で、ユート、魔王都のお土産あるんだろ⁈」


曾祖母ちゃん…台無しです。


親父…魔王の話をしたらさらに驚かれた。


「ま、魔王モンマかい…‼︎ あんたの父親?! …人間相手に戦争吹っ掛けて勝つような男だろ?!え、あんた魔王モンマにそっくりだって?! エルフのくせにのっぺりした顔だと思ったらそうかい」

 

後半なんとなくディスられてる気がしたユートだった。


「そりゃ魔王が相手なら怒るよね。一人ならともかくグリュエラさんの他に6人嫁がいるんだもん。そんな男、私だって父親なんて呼びたくないよ」

「「「………‼︎」」」


え? どしたの? …まさか…魔王に嫁7人いるの知らなかったの⁈


「魔王め…ブッコロス…」


ジゼル爺ちゃんがなんか鋭い目つきでショートソードを研ぎ始めた…リュミエラ婆ちゃんは投げナイフを磨いている…エルフも意外と武闘派揃いだった。

 

ユートは話題を変えようと思ってこないだ天使族の里に行った話を振った。


ものすごい罵倒が始まった。


「殲滅天使! あの脳筋共めが‼︎」

「エルフと見れば何処でもケンカを吹っかけてくるクソ共じゃ‼︎」

「四大属性が使えないからってエルフを目の仇にしてるのよ‼︎ ウザいったらないわね‼︎」

「遠い昔に世界樹様に棄てられた事を未だに恨んでおるのじゃ。みっともない」


曾祖母ちゃん達の罵声が止まらない。なるほどどっちもどっちだったか…。


 

ゆは世界樹とは関わりをもちたくなかったので特に挨拶はしないでおきたかった。

しかし、大樹を目にした途端光に包まれて見覚えのある場所に転移する。

世界樹の祭典だ。


祭典から聞き覚えのあるいけ高々で存在な声が聞こえる。


「わしには土産はないのかの?」


世界樹の祭壇にカステラを供える。一瞬で消えておかわりを要求される。

何回か同じやり取りをしてようやく満足したのか世界樹が語り始める。


「お主に言っておく事がある。『ハイエルフは世界樹の守り人』である事は理解しているのう?」

「まあ、大まかには。」

「だから緊急事態には儀式の時のように問答無用で呼び戻す時がある。頭に入れておけ」

「…何か気になる事でもあるんですか?」


怪訝な表情で尋ねるユート。いきなり転移で呼び出されたのではかなわない。


世界樹はためを作って話す。


「この世界の理を壊そうとする存在【悪魔】が世界のあちこちに【破壊者】を送り込んでいる。それは【勇者】と呼ばれている。理のひとつである妾…世界樹も狙われている。その内【勇者】がこの里を襲撃するかも知れない。」


 【勇者】か。【スタンピード】を起こし緑の迷宮の迷宮核を破壊した人間の帝国の手先。人間以外の生き物の命をなんとも思っていない圧倒的な暴力。ユートは背筋が寒くなった。その時自分はどうするのだろうか。


「だから出来るだけ強くなってほしいのだ。早く日と月と金の精霊と仲良くなるのじゃー」


そう言ってまた世界樹の声は聞こえなくなった。気付けば元の大樹の根元にいた。


「日と月と金の精霊?! なんだそれ」 


ユートの知らない精霊の名が出てきた。



 ユートはエルフの里を眺めながら思う。

母1人子1人だった人生にいつの間にか大勢の家族、血縁者、護りたい人が出来た。この数ヶ月懸命に生きて来た。それだけは胸を張って言える。


里ではちょっとした歓迎会のようになっていた。どっちかというとユートのほうがもてなしているようだが。

 里の子供達に甘い物を作り、大人達には魔王都で覚えた最新の料理を振る舞う。オムレツ・ドリア・スパゲッティ。


「うま〜い‼︎ もう一つちょーだい‼︎」

「あ、それ俺んだぞー‼︎」

「ユートさん、このレシピ教えて‼︎覚えればユートさんがいない時もみんなに作ってあげられるから‼︎」

「おほう、街ではこんな物食っとるのか。美味いのう。」


 曾祖母さんがバターと羊乳たっぷりのふわふわオムレツを頬張りご満悦だが脂と塩分には気をつけてな。10皿も食うもんじゃないから。


 ユートはみんなの笑顔が嬉しかった。


 そんなユートの前に里の警護をしてるエルフ兵が飛び込んで来た。


「長老‼︎ 人間です‼︎ 人間が猛スピードでこの里目掛けて進んで来ます‼︎」


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