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妹は天使 後編


「ではお兄様。早速対戦と行きましょう。武闘殿に案内いたしますわ。」


揚々と立ち上がるアリエル。自信に溢れている。

ユートは仕方なく告げる。


「私、Cクラス冒険者なんだけど」


15歳でCクラスになった冒険者はいない。ユートの自信の源だ。


「望むところですわ‼︎ むしろ燃えますわ‼︎」


ユートの手を掴んで外へ出る。武闘殿とやらの建物の前には翼人達の物凄い人だかりがあった。大歓声が揚がる。なんでみんな待ってんだよ。


 仕方ない、とユートは覚悟を決める。


ーくすくすくす。聴こえる?ー


声がユートの身体の内側から聞こえる。この声は炎の精霊だ。


(なんだい、精霊様?)


ー天使はエルフの宿敵だからね。ちょっとアドバイスをしようかとー


(相手は妹だよ?! )


ー甘いわね。天使族はエルフを確実に殺しにくるよ!ー


 マジか…


ー殱滅天使は近接武器、もしくは弓・飛び道具と魔法で攻撃する。エルフとよく似たスタイルね。だけど使う魔法が違う。ー


(魔法が違う?四大属性じゃなの?)


ー彼奴らが使う属性は【光と闇】。どっちか一つかも知れないし両方使えるかも知れない。妹さんは相当優秀らしいから最初から気合入れて行きなよ⁈ー



ユートは思わず息を呑む。対峙しているアリエルが気合を入れると頭の輪っかが光り輝く。神聖性のバフ魔法のようだ。


「安心して。死んでもお母様の蘇生魔法で生き返るから!負けた方が勝った方のゆうこと聞くこと‼︎ 行くわよお兄様‼︎」


と言うと同時にアリエルの全身が眩しく輝く。姿が見えない。太◯拳か⁈ ユートは思わず目を手で庇う。すると光の中から何束もの光の線=レーザービームが飛んで来た! 

速い!! 避けられない!ユートは水の壁で出来るだけレーザーを散らす。水の中に砂利や鉄粉を混ぜているので辛うじてビームを拡散する。が数本ユートの身体を掠る。エルフ服が焼け皮膚の焦げたような臭いがする。間違いないアリエルはユートを殺しに来てる。こりゃ手なんか抜けない。慌てて四大精霊に語りかけるユート。


 アリエルに向けて氷の矢を飛ばす。周りの光に吸い込まれた途端消滅する。岩石矢を飛ばす。溶けるように消滅する。あれは光魔法か。まるで光のバリアーだ。


「ヒャッハハハ死ぬが良い‼︎ 下等なエルフ風情があああ‼︎」


どこの悪者かというような台詞を吐きながら高速飛行で突っ込んで来るアリエル。むう。悪い子だ。お兄ちゃん許しませんよ!

 

アリエルの光バリアーとユートの風バリアーが衝突する。アリエルの手が伸びて来てユートを掴む。アリエルの手には闇の粒子が浮かんでいる。掴まれた途端にユートの魔力がごっそり持っていかれた感覚に襲われる。これは闇魔法か! どちらも使えるという訳か!


光魔法と闇魔法両方使える天使。こりゃ強そうだ。


だがユートもアリエルを捕まえた。掴まれたタイミングでユートもしっかりアリエルの両手を掴む。ギョッとするアリエル。その頭の上から…滝のような大量の水が降り注ぐ。バラエティ番組の罰ゲームみたいな大量の水流だ。ちょっとミネラルが豊富なミネラルウォーターだ。息が出来ないくらいの。水は周りにも溢れ武闘殿の武舞台を水びたしにし、観客も巻き込んで流していく。奴らは羽があるから大丈夫だろう。


 一通り水流が収まるとアリエルが纏った光は消え、ずぶ濡れで立っている。羽根は濡れて萎れ、頭の輪っかも水に流されて行方不明だ。涙目でげほげほ咽せながらそれでも食ってかかるアリエル。


「な、何すんのよっこのクソエルフっ‼︎」


まだお仕置きが足りないようだな。死なない程度にアレを落とす。

ミネラルウォーターはこれのための布石だ。


「エルフサンダー!!︎」


ずぶ濡れのアリエルの全身を雷が駆け抜ける。不純な水は実によく電気を通す。


幾分煙を吐きながらアリエルが倒れた。意識は飛んでるようだ。ユートは妹をそっと抱き起こす。


ユートは空中で様子を見ていたガブリールさんを見つけ声を掛ける。


「ガブリールさん、手当てお願いします。」



「私の勝ちですよね?」


ユートを一瞥しながら答えるガブリール。


「エグい攻撃をする。さすがグリュエラの息子というところか。うむ、思う所はあるが貴様の勝ちという事にしておこう。」


薄く微笑んでるよこの人。なんか…闘争心に火が着いた顔してるんですけど。


「ガブリールさんとはやりませんよ。自分の母ちゃんにボロ負けする私が貴女に敵うわけがないじゃないですか。」

「うむ、そうか…? まあのう。ククク。」


まあ納得してくれたようだ。


アリエルに回復魔法を放つガブリールさん。目を覚ますアリエル。そのアリエルに微笑みながら近寄るユート。


「勝った方のいう事聴くんだったな?」


涙目になるアリエル。さあユートのターンだ。




 ユートは腰にエプロンを巻き、ガブリールさんの屋敷のキッチンを借りてパンケーキとクッキーを焼く。得意技だ。


「う、うまー‼︎‼︎‼︎」


口の周りを蜂蜜と生クリームだらけにしたアリエルがムシャムシャ頬張る。むっちゃいい笑顔だ。この顔が見たかった。


「よいのかユートよ。なんでも言う事聞かせるのではなかったのか?」


パンケーキを頬張りながらガブリールさんが言う。


「だからこうやって甘やかせて私の思い通りに可愛がっているんですよ。」


むふー。至福の時。


「む、むう、エルフは好きくないがお姉は好き♡」

「そうか! よければ夕食も作ろうか。アリエルは何が好きなんだ?」

「えとねー、グラタン‼︎」

「そーかそーか。ユート特製のグラタンをご馳走しよう!」

「やったー‼︎」

「甘々の駄目兄だな貴様…」


その日はガブリールさんの屋敷に泊まって来春の予定を話した。もちろん妹を世話しながらだ。アリエルは来春ギルド学院に入学するつもりなので早めに魔王都に来てもらって卒業式に来てもらうという事で。天使族は特に龍族や鬼族と仲が悪いという事もないのでリィカ達と仲良くなれるだろう。合わせるのが楽しみた。


こうしてユートは4人目の妹と魔王都での再開を誓うのだった。


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