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謁見とイカ退治

 ユートは妹に会いに海の里に来たのだけど、楽しく語らいさあ本題に入ろう、というところで女王の近衛兵に身柄を捕捉された。

 王宮の謁見の間に案内された。数段高い位置に玉座があり、そこに白髪・皺だらけの随分お年を召した人魚が座っている。ドラ◯エに出て来るグラ◯スの様なルックスのお方だ。


「地上からの客人よ。何故この海の王宮にやって来た? 目的を包み隠さず言うがよい。」

「家族内のプライベートなお話なので…出来ればお人払いをお願いしたいのですが。」

「構わん。ここで話せ。」


あくまで高圧的に来るグラコ◯ババア。ユートは諦めて続ける。


「私ユート=モンマ。【異界の魔王】の長子です。この城に我が妹がいるというので会いに来たのです。包み隠さず答えました。これで満足でしょうか?」


 城内が騒然とする。女王の顔も蒼白だ。


「ま、魔王の子供だと⁈」

「い、妹に会いに来た⁈」

「まさか姫が妹だというのか…⁈」


 もしかして公には王女の父親は公開されていなかったのかも知れない。『何処の誰か知らない男の子供を宿して戻ったシトリージュさん』として扱っていたのかこのババアは。ユートはだんだんムカついてきた。


「いえ、妹の所在をご存知なシトリージュさんがまず王女殿下にお会いするというのでたまたまご紹介頂いていた途中でこちらに呼び出されたのですよ」


わざと遠い言い回しをしたユート。

ババアは落ち着きを取り戻したようだ。


「妹御にお会いして如何なさるおつもりか?」

「いえね。来春辺りに我々兄妹全員集まって父上を驚かせよう、というごく身内の家庭内イベントを企画しまして。兄妹が全員集まるのは初めての事なんですよ。ぜひ叶えさせてやりたいんですがね。女王様、ご協力頂けませんか。」

「…………。」


 長考の後、口を開く女王。


「…我が国では未成年の者は地上に上がってはならぬ掟があるのだ。」

「それは保護者同伴でもですか?」

「でも…だ。」

「保護者の方はお母様でもお祖母様でも構いませんよ。もしかすると父に言ってやりたい事が山程お有りになるかも知れませんしね。」

「‼︎」

「滅多に人前に現れない父に会える又とない機会なんですよね…」


 会って文句言うなりぶっ飛ばすなりご自由に、と言って見た訳だ。結構魅力的な提案だと思うんだけどな。ん、シトリージュさんが青い顔してる。


「…分かった。考慮しておこう。まだ時間はあるようじゃからのう。 してユート殿。其方、ハイエルフである事といい精霊を使役して海中世界を自由に移動出来る事といい、相当な手練れの冒険者とお見受けしたがどうですかの?」

「いえいえ、まだギルド学院生で只のCクラス冒険者の若輩者です。」


 話題を変えてお茶を濁そうとしてるな。だがここで確約が欲しい。なし崩しに聞かなかった事にされないように。


 因みにこの間の【迷宮スタンピード】を乗り越えたうちの学生全員が1クラス昇格した。なので『魔王の眷族】は全員Cクラス冒険者になったのだ。


「が、学生がCクラス⁉︎」

「あの歳であり得ん…」


ザワザワと居並ぶ魚人達の喧騒が収まらない。

 そんな中に謁見室に魚人の近衛兵が入って来る。


「女王陛下、北の壁にまたクラーケンが接触しました!現在討伐軍が対応中!」

「またか。シーズンとはいえ今年は多いのう。」


 クラーケンは夏から秋にかけて赤道付近から発生し(この大陸はこの惑星の南半球に位置する)毎年海流に乗って魔王国のある大陸の北側を襲う。進行コースが大体決まっているのでクラーケン予報とか事前予測も発展しているのだが、年によってスーパークラーケンも発生するので油断は大敵だ。


 今回来襲した9号は【小型で並の】クラーケンらしい。ただ、連続して9、10、11号の3つのクラーケンがやって来てるらしく対応が大変だ。


 そんなやり取りを聞いている中、新たな使者が謁見室に飛び込んで来た。


「女王陛下、大変です‼︎ 11号が9号.10号を取り込みスーパークラーケンに進化してしまいました‼︎ 現在【超大型で猛烈な勢いの】クラーケン。近隣住民に緊急避難警報発令、現在出勤している討伐軍の装備では抑えきれない模様です‼︎」


 にわかに騒がしくなってきた。


「国内及び【クリイド】の冒険者ギルドにも応援要請を‼︎ 外壁を越えさせるな‼︎」


 対応に右往左往する宮殿の官吏、女王も真剣に対処している。緊急事態だ。むう、放っておくと妹・マリージュの住むこの国が危ない。

 ユートの『妹防御センサー』がフルに働く。

 女王に提案をしてみる。


「女王陛下。私がそいつを何とかします‼︎」

「な、何⁈ いや…うーむ、まあお客人の手を煩わせる事案では…」

「このままでは妹の住むこの国が危ない‼︎ どうかご命令を‼︎」

「おお‼︎ さすがハイエルフの冒険者‼︎ お手をお貸し頂けるか⁈」


勝手に近衛長らしき武人が喜んで答える。アチャーっという女王の顔。ユートはニヤリと笑う。


「う、うむ…ではユート殿、お願い出来るかの…?」

「わかりました! では退治してまいります‼︎」


オオオオ‼︎ 一斉に城内に歓声とどよめきが上がる。是非、と期待する声、若いハイエルフが無謀な事を、という声もある。 反応は様々だ。だがしかし。見せつければよいのだ。ユートの実力を。妹がかかったユートの力は半端なかった。主にスイーツ面でだが?

 何か言いたげなシトリージュさんに目配せし、ユートはクラーケンが現れた北の城壁へ向かう。


 城壁を今にも越えようとしている全長100mはある巨大なイカが多腕を振り回し魚人の討伐兵を吹き飛ばしている。魔法兵は結界の維持で手一杯、槍も魔法攻撃も有効打にならないようだ。


 ユートは討伐方法を思案する。得意の風刃で腕を斬り落とせれば早いが海中では威力が劣る。エルフサンダーを海中で放つのは住民に被害が及ぶ。やっぱ海中は色々不利過ぎるな。そばにいた討伐兵に通常はどう退治しているのか聞いてみる。


「手足を拘束した後、槍術の使える者がクラーケンの弱点の魔石を打ち抜いて倒すのですが…」


現状手足の拘束もままならない様である。暴れる足ひ吹き飛ばされてはしがみつく討伐軍の数も200人は超えてる

 兵士達と綿密に打ち合わせをする。


「えっそんな事が可能なのですか⁈」

「ええ、ですから…」


 そして作戦開始だ。


「討伐兵は手足への攻撃の準備をしつつ構え‼︎魔法兵は壁の維持に集中‼︎ 始めるぞ‼︎」


号令と同時に俺は海上に飛び上がる。大規模魔法なので精霊の力を借りる。風と火の精霊を降ろす。風の力で夜目を強化。 火の魔法で海水温を跳ね上げる。大量の水蒸気を発生させ上空に積乱雲を起こし風魔法で巨大なサイズまでに育てる。台風の発生だ。いや、多分この辺りは南半球だからサイクロンか。やがて海上に渦が巻いて来る。それが狙いだ。風の精霊の力でそれを強烈に育てる。巨大竜巻の完成だ。

 同時に水の精霊の力で海中で暴れるクラーケンを水流に包む。洗濯機の様にぐるぐる回す。慌てるクラーケンは10本の手足で岩場や壁の突起にしがみつくがそれを待ちかねていた討伐兵がガシガシ手足を削っていく。手足が無くなったクラーケンが渦に巻き込まれ海上に上がっていく。


「総員壁まで撤退ー‼︎」


もぎ取ったクラーケンの足を抱えて兵士達が急いで結界の中まで逃げる。海上の渦と巨大竜巻を繋げる。クラーケンは今巨大竜巻のど真ん中だ。そして巨大サイクロンは雷エネルギーの宝庫。全力全開で放つ‼︎


「エルフサンダーッ‼︎‼︎」


猛烈な雷エネルギーが竜巻の中を貫き100m級のクラーケンが丸焦げになって落ちて行く。


さあ後片付けだ。サイクロンをこのままにしたらクリイドに上陸して被害大だからな。サイクロンに向けて風の精霊の力を全開にしてかめは◯波っぽい何かを放つ。


「10倍界◯拳だああああー‼︎‼︎」


ちょっと調子に乗ったがかめ◯め波っぽい何かはサイクロンを跡形も無く吹き飛ばし竜巻も消滅した。

ミッションコンプリート!


 海中に戻ると巨大なイカの丸焼きが海底に沈み、大勢の魚人が解体に勤しんでいた。利用する分には問題はないらしい。



 宮殿に戻って女王の前に顔を出す。大歓迎の大臣達。苦虫を噛み潰した様な笑顔を見せる女王陛下。何か言おうとするが…


「あーいえいえ女王陛下、この褒美は妹の外出許可でお願いしますね。」


釘を刺して置く。シトリージュさんには王都の冒険者のハイエルフが海の里の危機を救ったと精々派手にアピールしてもらおう。半年後女王が拒否出来ないように。

 『魔王の眷属』の卒業式に併せてマリージュに魔王都まで来てもらう。そこで兄妹カミングアウト…の予定だ。


 許可を貰ってもう一度マリージュに会いに行く。一緒に夕食を取る事になったのだ。


「ユート様が【超大型で猛烈な勢いの】クラーケンを退治なさったというのは本当ですか⁉︎」


テンションが上がるマリージュを落ち着かせるシトリージュさん。先程渡したクッキーの効果もあったかだいぶ好感触だ。うんかわいい。

 その日はそれからうちのパーティー『魔王の眷族』の冒険のアレコレをマリージュに話して聞かせた。主にリィカのやらかした事中心にだが。同じ姫様だし。


そしてその夜は王宮に泊まった。


 翌朝、陸に上がるシトリージュさんに併せて地上に戻る。マリージュとは再開を誓って別れる。また来てくださいね、と笑顔で言われてユートはついにやける。ホントに妹に弱い。

【クリイド】は平和なようだ。昨夜のサイクロンの影響はほぼないらしい。シトリージュさんの領事館に主な被害の報告はなかった。一安心。


こうしてユートは3人目の妹への訪問を終えて魔王都に帰るのであった。

土産にクラーケンの肉を抱えて。

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