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2 俺、性転換⁉︎

本日2話目です。ちょっとストックがあります。

吸い込まれた光の中には一人の少女が待っていた。鷹揚な態度でユートを上から見下ろす。


「ふむ。見た目は下賎なハーフエルフのようだが生来通り女と産まれておればハイエルフとなっておった素体のようじゃな。どうじゃお主、ハイエルフにならんか?わしには早急にハイエルフの祈りが必要なのだ。」


下賎なハーフエルフ?誰の事だ?ユートは首を傾げる。


「ハイエルフになる?どういう事?ならなかったらどうなる…んですか?」


つい丁寧語で訪ねてしまう。どう見ても見た目通りの年齢ではない圧力というかオーラを感じるのだ。母親と似た逆らってはいけない系の何かを感じる。


「ならなかったらこの世界樹様の結界に弾き飛ばされ消滅するだけじゃ。」

「消滅って!!それ実質一択じゃないですか!!」


完全に罠に嵌められた模様だ。ここは素直にハイエルフになるのを承知するしか生き残る術はない。


「わかりました。ハイエルフとやらになりましょう。」

「では胸を出せ」


ユートは恐る恐る制服のブレザーを脱ぎネクタイを取りシャツの胸元を開く。しかし少女はいい顔をしない。


「それも全部脱げ」


下着が邪魔らしい。ユートは上半身裸にされた。少女が緑色の宝石っぽい何かを持ち出しユートの胸元の中心に押し付けた。


「な、何ですそれ?」

「これは世界樹に実ったエルフシードじゃ。これがあればお前の持つエルフとしての潜在能力を引き出してくれる」

「は、はあ…」


身体が熱くなってくる。何か血のようなモノが身体を駆け巡り始めたのを感じる。そして…爆発するような熱と光に包まれるユート。


「ほうら新たなハイエルフの爆誕じゃ」

「こ、これでハイエルフになれたのか…ん?」


声の調子がおかしい。自分が話し声ではない。まるでどこぞの女子高生の声だ。目を開けて石が埋め込まれた胸元を見る。あり得ないものが胸元の宝石の両端に存在していた。脂肪の塊が二つ。いわゆる乳房、通称おっぱいだ。

ぷるんぷるんのやつが二つ揺れていた。


「な、何じゃこりゃ~っ!?」


驚いて飛び上がったユートの動きに合わせて胸もさらにぶるんぶるん揺れる。意外と大きい。母より大きいのではないか?と不謹慎にも思うユート。


「お前がハイエルフの遺伝子を最大限に活用出来る女性型に身体を変えた。だがそのままではまだ唯のエルフじゃ。森に行って精霊と契約して参れ」


「は?」


女に無理矢理性転換された上に何か余計なミッションが追加された!


「ハイエルフとはエルフが火水風土の四大精霊と契約したものが到達できる上位種じゃ。契約の仕方は里のエルフどもに聞くがよい。四人の精霊と契約して再度ここに戻って来るのじゃ。ほら、急げ」


世界樹の少女は言い終わると光る世界樹の中からユートを追い出してしまった。ユートは上半身マッパでエルフの民の前に放り出された。驚いたのは里のエルフ達だ。人間の男がいつの間にか女になって現れたのだ。

水辺に映る自分の姿を見て改めてショックを受けるユート。…地味子だ。まるでどこぞの喪女だ。

ちなみにユートはハーフでありながら純日本人顔の黒髪の一重目蓋の地味目な少年であった。そして女になって美人になった…と言うことは特になかった。地味な日本人顔のまま女顔になっていた。これはかなりショックだった。なんせエルフの民はみな西欧風美形ぞろいなのだ。どうせエルフにするならなんで輝くような美人にしてくれなかったんだ!?

そんな慟哭の中上半身マッパのユートがさすがにかわいそうになったか長老が慰めるようにエルフの服をユートの肩にかけ話しかける。


「お主と世界樹様の会話は我らの耳にも届いておった。儀式の為じゃ協力してやろう。ニナとカイナとゾンデよ出て参れ」


長老に呼ばれてあの幼女と見張りのエルフだった男エルフが二人現れる。


「ニナは風と水の精霊魔法の使い手。カイナは火の精霊魔法、ゾンデは土の精霊魔法が使える。彼らにそれぞれの精霊との付き合いを学ぶといい」


ユートは更に詳しく精霊について話を聞いた。エルフは精霊と契約して魔法を使う種族なのだそうだ。水魔法を使いたければ水の精霊と、火を使いたければ火の精霊と契約するのだという。精霊達は水なら水辺に風なら樹木のそよぐ中に存在し魔力のあるエルフにならすぐに見つけられるものだという。

試しに村の真ん中の灯籠にカイナが魔法で火を灯す。すると灯りに寄せられるように光る浮遊物が漂い始める。あの光が精霊のようだ。


「後はお前が火の魔法を行使して精霊と会話すればよい。ハイエルフになれる身体ならば火の精霊と契約出来る適正はあるはずだ」


カイナに言われる通りユートは全身に魔力を回す。エルフの身体になった時に感じた全身を駆け巡ったあの謎の感覚が魔力だ。腹の奥から全身に回しそして右手の指先に力を集中させる。それから火を灯すイメージをする。

ユートの指先にろうそくのような赤い火が灯る。しかしユートの灯には精霊が近寄って来ない。魅力に乏しいという事か。

ならばとユートは炎のイメージを変える。ガスの炎のような高温の炎を。赤くゆらゆら揺れる炎が徐々に青い炎になり指先から激しく燃え上がる。さらに意識を集中させると白い炎に変わる。まるでバーナーの炎だ。


「近づくなよ腕が焼け落ちるぞ」


 そう言って灯籠の側に転がる岩に炎を向けると岩をレーザービームで貫いたかのように綺麗に真っ二つに割った。岩の切断面はガラス質に変質している。

 異世界でも物理法則は通用するようだ。

 ユートの作った白い炎に光る浮遊物が集まって来る。すると光の中から声が聞こえてくる。


「何、この炎。こんなのドワーフの起こす炉くらいでしか見た事ないわよ。エルフが起こせる温度じゃないわよ」


 光の球の集合体から女の子が現れた。12歳くらいの少女だがエルフとは様子が違う。赤い髪を逆立てて瞳も真っ赤に染まり赤いワンピースに身を包んだ少女だ。少女はユートの放つ白い炎を掴もうと手を伸ばした。


「危ないぞ君‼︎」


 ユートは慌てて白い炎を消そうとするが少女は構わずむんずと掴んでしまう。そして恍惚の表情を浮かべる。


「美味しいこの炎!極上の炎ね!気に入ったわ貴女。あたしが貴女についていてあげる」

「き、君は?」

「あたしは火の精霊の一柱。名前はないわ。好きに呼んで」


 呆然とするユートの周りのエルフが歓喜の声を上げる。まさかこんないとも容易く精霊と契約を結ぶとは。しかも火。エルフという生き物は水と風には適性が高いが火は苦手な者が多い。なのでカイナを初めとして数人しか火が使えるエルフはいないのだ。

 ユートが世界樹様に認められたハイエルフ候補である事をまざまざと知らされたのだ。


「貴女の炎は吸って覚えたからこれからは呼べばいつでも貴女の前に現れるわ。じゃあねマスター」


 そう言って火の精霊は姿を消した。ユートはまだ呆然としている。そのユートの腕を掴む幼女エルフがいた。ニナだ。能面のような表情で言い放つ。


「森に出よう。風と水の精霊を捕まえるんでしょ。ほら急いで不細工」


ニナがユートに冷たいのはエルフにあるまじき地味な日本人顔のせいらしい。何しろエルフは全員が美形ぞろいなのだ。


 ユートの腕を引っ張って強引に里の外に出るニナ。仕事に特化したシニカルな幼女だ。


 川縁の開いた土地に出る。高い木が何本も生えている。気持ちいい風が吹いている。

 何故川縁なのかというと水辺には普通に精霊達が集まって来るからだとニナは言う。


「あいつらチョロいから簡単だよ」


 ニナは魔石を洗った時のようにポンと手のひらに水球を浮かべる。すると川辺から蛍のような蛍光球が飛び交い水球の周りに集まって来る。こいつらが水の精霊なのだろう。ユートも同じように水球をイメージしてみる。出来た。なる程エルフにとっては火より水の方が扱い易いようだ。

 だがニナと同じ水球では精霊の興味は惹かないらしい。火の時と同じに無視されるようだ。これは先にやった方と違う事をしないといけない罠だな。ユートは更に考えて水球を変化させる。水球はどんどん温度を下げていきやがて氷の結晶を水球の中心に作り出す。まるで水晶細工の工芸品のように中の氷の結晶がキラキラ光を反射する。


「すごいわねそれ。水をそんな風に使ったエルフは初めて見たわ」


 ユートの側に水色の髪をしたこれまた12歳くらいの少女が立っていた。水色の瞳に水色のワンピース。この子も水の精霊なのだろう。


「綺麗ねー気に入ったわ。あたし貴女のパートナーになってあげる」


 そう言ってユートの作った氷の玉に触れてにっこり微笑む。


「これで貴女の魔力は覚えたわ。好きな時にいつでも呼んで!」


 そう言ってスッと消えていった。

 ユートが余韻に浸る間もなくニナが次の行動に移る。例の気◯斬ぽいアレを手の平に浮かべる。すると樹々の間から蛍光球がいくつも飛び交って来る。奴らが風の精霊なのか?

今わかってる事はニナと同じ気◯斬では精霊の気は引けないという事だ。ではどうするか。

 ユートは風に乗って飛ぶ事を想像した。

 彼の周りに静かに風の渦が巻いていく。優しく優しく。強い風だと気◯斬のように肉体を切り裂いてしまうからだ。身体を浮かせる優しい風。やがて静かに空中に浮いて行くユート。ニナはユートの姿を見てびっくりしている。風の魔法が得意なエルフも風で空を飛ぶ発想はなかった。危険な攻撃魔法としか使って来なかったからだ。空中に浮かぶユートの周りに蛍光球が群がる。やがてその中から緑色の髪をした少女が現れる。緑色のワンピースを来た可憐な少女に見える。風の精霊のようだ。


「貴女面白いわね。そんな風魔法の使い方滅多に見ないわ。」

「そうなの?」

「エルフは排他的だから威嚇や狩猟に魔法を使いがちなのよねー」


それで何が悪い、って表情のニナ。なるほど当たってるらしい。

風の精霊は浮かぶユートの前に立ちその身体にユートの起こした風を浴びる。そして満足した顔で消えていった。

無事に風の精霊とも契約出来たようだ。


後は土の精霊だけかな。

次回は木曜の予定です。

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