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窮地の魔術大会

たいへん遅くなりました。

窮地の魔術大会

 【魔法】と【魔術】は違う。ここに至るまでユートは気付かなかった。


 ユートや皆が日頃使用しているのはイメージを具現化する【魔法】。魔力と引き起こす現象の強いイメージが紡げれば働く力。

 一方【魔術】は引き起こす現象を理屈をこねくり回して方程式で解説する。つまり呪文と魔法陣が必要な術。

 分かりやすく言うと【魔法】は意味が通じればいいおばちゃん英会話、【魔術】は学校でクソほど学ばされる英文法、という具合である。

 つまり【魔術大会】と言うのはどんだけクソつまんない文法を覚えたかを競う大会、という事だ。

 教師はちゃんと授業に出てれば余裕ですよとか言ってるよはは。

 …その授業に碌に出てなかったのだユート達は。


 とにかく依頼を山ほどこなしていたので。依頼やってると授業免除になるってんで山盛りクエストに集中してた。


 ああああああああああああ‼︎‼︎


 ⁈ レンちゃん?なんで君そんな余裕あるの? え?

君の使ってる補助系や回復系の呪文は【魔術】⁈ ちゃんとおばあちゃんから習ってて良かった? …ソウデスカ…


 『魔王の眷族』崩壊の大ピンチ。リィカはそもそも【魔法】も無縁だ。【魔術】など今まで意識した事などないらしい。

 ユートは今まで感覚だけで【魔法】使ってた。アホの所業。


 ユートとリィカ二人で(正確にはミヤマさんもいるが。なんで教室にいるんだ?)で頭を抱える。するとクラスの委員長を名乗るウサ耳獣人の女の子が声をかけて来た。そういや委員長なんていつ決めたんだ⁈…ひと月前ですか…ソウデスカ…


「わからないなら貴方達も勉強会に混ざる?みんなで

復習やろうって言ってるんだけど…」

「「お願いします‼︎」」


 ユート達は素直にわかるクラスメイトに教えを乞う事に決めたのだった。




 付け焼き刃とも言う勉強会を経て魔術大会の当日を迎えた。


 ユートの目標は『無難にやり過ごす』、だ。


 顔を売るにはもってこい?誰だそんな事言ったやつは⁈ げふんげふん。


 付け焼き刃は付け焼き刃だった。ユートはともかくリィカには過酷すぎた。本能で生きる龍には勉強会は向いてない。本当に向いてない。ユートはリィカの頭を撫でてやる。アホ可愛いというやつである。

 だがミヤマさんに余裕があるようだ。何か取っておきの手があるのかな。

 ユートは全く余裕は無かった。だいたい魔術で唱える言語はこの世界の古代語だ。魔法陣は古代文字。現代日本人のユートにはお手上げだ。四大元素の初級魔術しか覚えられなかった。


 そして向かえた魔術大会の当日。

 学院は会場に街のスタジアムを借り上げていた。もう超満員である。この街にはギルド学院ファンが多い。多すぎるわ。

 そして中央の貴賓席にキンキラキンのローブを纏った30代くらいのイケメンがいる。どうやら彼が魔導王サークライらしい。舐めるように学院生を見てる。なんでそんな仕事熱心なんだこん畜生。


 当日を迎えてもユートにはこの窮地を乗り越える良い手が何も浮かばなかった。


ーくすくす。随分しょげてるわねぇ。ー


項垂れてる俺の頭に知っている声が響く。

これは…風の精霊?


ー貴女さー。ハイエルフの基本スペック知らな過ぎじゃないのー貴女にはあたし達四大元素の精霊がついているのよー


(あ、はい…)


ー精霊はその元素の【魔術】を全て理解しているの知ってる?ー


(…え?)


ーごにょごにょごにょー


(‼︎)


 マジか‼︎そんな方法があったのか‼︎

ありがとう精霊達ー!!




 大会が始まる。 クラスメイトが次々と覚えた魔術を行使する。中には中級以上の爆炎魔術や高度な飛行魔術を使う生徒もいて驚いた。みんな努力してんだなぁ。

 おいおい魔導王、さっきから欠伸止まんねえぞ?傍付きの姉ちゃん口説いてないかアレ?ひどい態度だな…まあ学生の魔術なんか興味ないだろうがな。


 そしてレンの出番が来た。きっちり大仰な呪文を唱えサークルを丁寧に描き教科書通りの回復魔術を行使して見せる。美しい輝きを伴って視覚効果もバツグンだ。やがて会場から爺さん達が叫び出す。


「こ、腰の痛みがのうなった‼︎」

「わ、わしの脚が動くぞ‼︎」 

「あたしの偏頭痛も治まったよ⁈」

「おお⁈」


続々と会場から歓喜の声が上がる。かなりの範囲魔術だな。癒しの力がスタジアム全土に広がった。

 観客の歓喜、そして自然に巻き起こる大喝采。

 レンはめっちゃバツが悪そうにはにかんでいそいそ退場する。だいぶインパクトあったんじゃないか?魔導王サークライも身を乗り出して見てたぞ。羨ましい。


 次は問題児のリィカだ。どう切り抜けるつもりだろう?

 …やりやがった。やらかしやがった。


 リィカの瞳が光り、その場でドラゴンに変身した。どよめく観客。その時俺の傍らにミヤマさんが現れてドヤ顔で解説を始める。


「龍族はですね、龍形態であれば本能で属性の魔術式を扱えるんですよ。本能というか血ですね。」


ドラゴンリィカの足元に光り輝く魔法陣が浮かび上がる。解読出来ない古代語の文章が龍の口に紡がれる。

空気が猛烈にチリチリしてくる。アイツ何の魔術ぶっ放すつもりだ?


「ただ問題はお嬢様、アレで龍の街ひとつ消滅させてるんですよね…」


ナニイイイイイイイイイイィィィ⁈


「会場に同時に結界を張るように係員にきつく言っておきましたので…忘れてなければ多分大丈夫だと思うのですが。」

「多分じゃねえよおおおおお‼︎‼︎」


そして魔術式が完成しリィカの爆裂魔法が炸裂する。


 猛烈な爆炎と閃光が会場の人々に迫る。どう見ても会場に結界は間に合ってない。このままだと大惨事だ。


 すると貴賓席にいた魔導王が手をかざす。会場全体に結界の幕が張られる。観客は爆炎が目の前で見えない壁で止まっているのを見てアトラクションが何かと思っているようだ。たちまち拍手が巻き起こる。魔導王あんな事も出来るのか。


 リィカが少女の姿に戻って礼をする。心なしか顔色が悪い。あいつミヤマさんから説教だな。


 ん?魔導王、リィカを睨んでるのかと思ったら俺の方を見てる。…んー知ってる。ありゃ女を値踏みする目だ。巨乳か?巨乳のせいなのか?くっそ舐るように見やがって…ユートは魔導王の目が気になった。。


 次はユートの番だ。さっきまでテンパってたユートだったが、精霊のアドバイスにより裏技を手にして。すっかり落ち着いている。


 スタジアムのど真ん中まで歩を進める。


 エルフは風と水の精霊に愛され自在に使役出来る種族。その上位種のハイエルフは四大元素の精霊に愛され使役出来る種である。

 愛され使役出来る…手段として自分に憑依させる事も出来るらしい。

 精霊は自己の属性から派生する魔術式を自在に操る事が出来る。

 つまり、自分に精霊を降して後は精霊に任せればよいのだ‼︎ わはははは‼︎


 「風の精霊…来い来い来い…」


 意識を集中させて大気の中の精霊に呼びかける。

 緑色に包まれたワンピースの少女が現れる。ユートを見て微笑んでいる。

 ユートは風の精霊の手を取り自分に降ろす。ユートの身体に精霊が溶け込んでいく。風の匂いに包まれて気持ちいい。テンションが上がる。

 続いて土の精霊も呼び込む。 

 土の精霊は無口なおとなしい少女だ。

 優しくユートが土の精霊の手を握ると彼女もユートの中に溶け込んでいく。大地の匂いにも包まれる。

 風と土で森の力が生まれる。混合魔法陣が足元に勝手に描かれ、ユートの口から勝手に術式が唱えられる。唱え終わった時、それは発動した。


 スタジアムのグラウンドに一斉に木の芽が芽生え、見る見るうちに木は育ち、大木となって果ては樹海のように生茂る。瞬く間にグラウンドが森林地帯に変貌した。


 呆気に取られる教師陣。観客は思わぬ森林浴で心身共にリフレッシュ出来て気持ち良さそうだ。ユートは満足だった。


 風と土、二人の精霊にお礼を言う。にこやかに微笑んで去っていく。


 ユートは揚々と退場しようとすると担任の虎先生に呼び止められた。


「こらぁ‼︎ このままにして帰るな‼︎」


 どうやらまだ大会は続くので片付けていけ、という事である。 みんな喜んでるのに。めんどくさいなぁ。

 ユートは森の中央まで跳んでいく。それから両手に気◯斬もどきを発生させ縦横無尽に飛ばす。

 大木は細かく断ち割り薪サイズにする。薪はFクラス常時クエストの常連さんだ。いつでもどこでも買い取ってくれるくらい市民には需要がある。

 あらかた木々を伐採した後、纏めて土魔法で整地する。グラウンドも元どおり。


「皆さん、お帰りの際に好きなだけこの薪をお持ち帰り下さい!」


 風の拡声魔法でアナウンス。観客大歓声。まあまあのインパクトは与えられたかな?


…何ニヤニヤしてんだよ魔導王?気持ち悪りいなぁ。



 結果。

 魔術大会はレンが優勝で終わった。貴重なヒーリングをきちんとした術式で再現した誠実さが評価されたらしい。

 リィカとユートはサークライ特別賞というのを頂いてしまった。


 龍化とか精霊憑依とかが教師陣には【魔術】としては肌はだ疑問だったらしいが、サークライが一言。


「いいじゃないですか。面白い。学生がない知恵搾って編み出したスキルだ。認めてますよ」


という事で賞的な物を貰ったのだった。


…なんか目を付けられただけの様な気もするけど。


 まあいいか。という事で『魔王の眷族』は街の甘味屋で祝勝会を開くのであった。 

もちろん優勝者のレンの奢りでだ。

次は来週以降です。すみません。

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