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1 俺、突然森の中。

前作「俺、ハイエルフになりました‼︎〜夢の妹パラダイス〜」は自由に書きすぎて山場の乏しい終着点のない物語になりかけたので思い切って中断しました。テーマを見つめ直し、進むストーリーの中で飛ばしてしまった大事なことなどを足して新たに構成し直しています。なので大まかなストーリーは同じでもずいぶんとテイストが変わっていると思いますがさてどうか。体調と相談しながらの執筆なのでまた期間が空いたらすみません。

 彼、門馬優斗もんまゆうとはごく普通の15歳。厨二を少し乗り越えた中学3年生。フリーライターの母ちゃんと二人暮らしの母子家庭だがありがたい事に金銭的にそう不自由はしていない。アニメとラノベとソシャゲに夢中なごく普通の生活を送っている。ただ家事は全て彼が賄っている。想像以上のズボラなのだ。母が。


 彼は母以外の家族に飢えていた。特に可愛く気の回る妹とかいれば文句なしの生活だった。

 彼の母ちゃんは金髪の美しい外国人でルックスがかなり整っていてそれに歳より若く見えるから引く手数多だし、いつでも再婚して妹作ってくんないかなーっと思ってるんだけど彼がそれを口にする度に鉄拳が飛んでくる。しかも母ちゃんの鉄拳は武道でもやってんじゃないかって程痛い。最近はとみに機嫌が悪くなだめるのも後々大変だ。

 もしかして…まだいなくなった親父が好きなのかな?

 

 そんな日々だったのだが。




 「えーと?俺今日は何してた?」


 今朝は母ちゃんの弁当を作って着替えを用意して起こして無理矢理仕事に送り出し、それから学校へ向かい授業を普通に受けて昼休みに無課金でソシャゲに耽り、放課後、夕食のメニューを組み立てながら帰りに何買って行こうか考えてた。それがいつもの門馬優斗の日常。今日も変わりなく過ごしていた。はずだった。


 家の近くの雑木林から突然風が吹いて来た。視線がふっと木々の中に移る。すると…いきなり周りの景色がぐんにゃりー曲がった。何かに引っ張られる感覚と不快感。



気づけば森の中。鬱蒼とした森の中。今まで街の中にいたはずなのに。あれ?なんだこれ?なんか知ってる森と違う。全く見た事ない植生の木々。明らかに今までいた街じゃない。どういう事だ⁉︎ 俺昔から木とか好きだったからわかるよ。これ日本の木じゃない。え?じゃどこ?

 スマホで位置確認…出来ない。繋がんない。ググれない。ソシャゲも出来ない‼︎ 電波も繋がんないとこかよ?


 周りを見渡す。獣道らしき道すら見当たらない。すると ガサガサッと音がする。慎重に音のする方向に近寄る。そこには…幼女がいた。おお!幼女‼︎ 妹にしたい!彼は不謹慎にもそう思ってしまった。幼女は外国人ぽく銀色の髪をしてしかもとても美形だった。 ん?

 ようく見ると耳が尖ってる。綺麗な銀色の髪。うーむ日本人じゃないな。てか人間じゃないんじゃね? え?え?どういう事⁈

 ガサガサッ 幼女の前に突然熊みたいにバカでかい猪が現れる‼︎ なんだと⁈

  うわ、ヤバい!あの子ヤバい!何とかしないと!しかし現代日本でも猟銃でもないと猪は熊に次いで危険な獣だ。何も手が浮かばないままあわあわするユート。


 次の瞬間。幼女がニヤリと笑って両手にまるでク○リンの気円斬のようなものを作る。それを猪に向かって投げつける‼︎ 瞬く間に猪の首が吹っ飛んだ‼︎ あらやだスプラッタ!

 どんなZ戦士だよ⁈てか現実か⁈これ⁈

 彼が唖然としてると今度は幼女は彼の存在に気付き彼のいる方向へ振り向き気円斬的なアレを発生させた。彼を見てニヤリと笑う。

 あれは新たな獲物を捕らえた顔だ。


「人間? なぜこのエルフの森にいる⁈」


 エルフ⁈ エルフって言った⁈

言葉は通じるようだ。異世界じゃないのか?


「待って!あ、怪しいものじゃない!」

「この森に人間がいる事自体怪しい」


幼女は全く臆する事なく先程の猪を殺っ目でこちらを見据える。


「ダメだ飛んで来る!死ぬ!ごめんな母ちゃん。俺幼女に殺されるとは思わんかったよ。」


「待ちなさいニナ!」


 突然、声と共に周りの木々から弓矢を構えた男たちが現れる。スラリと背が高くスタイルもルックスも良いイケメン揃いだ。ただどうも人間ではなさそうだ。全員耳が尖ってる。エルフの団体さんだ。おいおい気配なんかなかったぞ。何だこの集団。


 その奥から1人の婆さんが歩み寄って来る。髪が銀色でこの人も耳が尖っている。婆さんを見てニナと呼ばれた幼女は気円斬を降ろして消滅させる。

 婆さんが俺の側まで近寄る。


「ふむ。召喚術の残り香がする。こやつに間違いない。しかしどういう事だ?人間ではないか…」


(召喚術?俺、召喚されたの?)


「わしらの世界樹様が召喚なさったのは高位のエルフ…ハイエルフのはずなんじゃがのう。儀式を滞りなく行える能力を持ったハイエルフを呼んだはずなのだが」

「世界樹様がお間違えになられたのでは…?」


側に立つ男のエルフが婆さんにそう問うが


「ご自分のお命に関わる召喚をお間違えになられる筈がなかろう。」


婆さんはにべもなく答える。

ハイエルフ…そうなのか…?


 尖った耳、弓を操り森に住む種族。

あらゆる物語でお馴染み中のお馴染み。この人達、エルフだ。今エルフが現実に目の前にいる。

ここはエルフのいる世界。


 (異世界⁉︎ ここ異世界なのか⁉︎ マジか⁉︎しかしなんで人間の俺が違う世界から呼ばれるんだよ?

間違い? 召喚事故か何かか⁈

てか戻れるのか?

どうすんだよ母ちゃんの飯⁈)

 

 彼は母親に黙って飛ばされた事が一番の心配だった。


 茫然と立ち尽くす彼の横でニナと呼ばれた幼女エルフはナイフでサクサク猪を解体している。すごい手際だ。あっという間に肉の部位と臓物、皮に別れた。心臓からなんか鈍い色の石が取り出される。

 呪文を唱えると突然水の玉が宙に浮かぶ。アレだよく宇宙船の無重力実験とかで見るアレ。水の玉に石を突っ込んで洗う。

魔法だ。彼は生まれて初めて魔法を目にした。いやあの気◯斬もどきも魔法だったのかも知れない。

 魔法の水で洗われた石はキラキラと美しく輝く。 幼女はその輝きを見て満足そうだ。


 ユートは驚きながら問いかける。

 

「な、何それ⁉︎」


 ユートは水の玉の事を聞いたつもりだったが 


「?魔石を知らない?そんな人間いるの?」


 幼女は石の事に夢中だ。魔石⁉︎あれだ。異世界定番のヤツだ。ユートの厨二知識の中にあった。魔石が宿るケモノだから魔物。

あの猪魔物だったのかと悟るユート。どうりで異常にでかいと思ったのだ。

 ここは魔物のいる世界。

 そしてエルフがいる世界。


 ユートを眺めながらエルフの婆さんが首を傾げながら零す。


「お主は我が守護神である世界樹様が召喚した客人じゃ。だが世界樹様はエルフの巫女…ハイエルフを必要としたはずなのだが…お主、人間でしかも男じゃ。どういう事かの…?」


どうやら本当に間違いで召喚されたらしい。

お互いが頭を捻りながらユートはトボトボ後ろを付いていくしかなかった。


取り敢えずエルフの里で保護してくれるという。周りのエルフの男達が騒めく。どうやら人間を村に入れたくないようだ。幾人か反対をしている様だがリーダーらしき男が諫めている。村の長の命令厳守らしい。


(何だよ⁉︎何でこんなことになってんだよ!?

家に帰してくれよ!

さっさと家に帰らないと母ちゃんにどやされる!)


 周りの緊張感など何のそのユートの心は家に帰らず飯を作らない自分への母の怒りだけが心配だった。


「とにかくエルフの里の世界樹様にお伺いをたてよう。わしは長老をやっておる。お主なんと呼べばいいかの?」

「ユート。門馬優斗です。」

「ん?お主…純粋な人間ではないな?…」


?変なことをおっしゃる。俺は何の取り柄もない人間だぞ?ユートはいぶかしがる。


 少々気にはなったがユートもエルフの集団と共に森の中を歩き始める。エルフの集団の突き刺す様な眼が怖い。自分も獲物の様な気分になる。

 

 ユートは不思議だった。森の中は遊歩道などないので正直めっちゃ歩きにくいはずなのに不思議と辛くない。むしろ身体が嬉々として動いている。気持ちもなんとなく上向きになって来る。恐ろしい魔物の住む異世界の森がまるで子供の頃から馴染みがあるかのような感覚に囚われていた。

なんでだ?彼にはわからなかった。


 やがて遠くに何か光に包まれた集落が見えて来た、


「綺麗な光だなぁ。あれがエルフの里?」


 そうユートが呟くとエルフが一斉に驚く。


「見えるのかユート?まだ結界は解いとらんに⁈」


 長の言うところではエルフの里の結界は人間の目には見えないものらしい。エルフだけが視認出来るらしい。


「へーあの綺麗に光ってるのは結界なのか。」


 ユートは何故か高揚した気分のまま里の中に入る。

 見張りが一瞬ユートを見て弓を向けるが先頭のエルフが手を挙げるとすぐに光の明度が下がり門が開いた。


「お帰りなさいませ。その人間は?」

「世界樹様の客人じゃ。まあ騒がんようにな。」


そっけなく呟く長老。

 やはりこの村に人間はタブーのようだ。それに幼女ですら使えるあの力…ユートは生殺与奪の権利を彼らに奪われていると気付き急に恐ろしくなって来た。


 エルフの集落は木々のあちこちに木造の小屋が作り置かれている。少ない平地に農場と鳥・羊等家畜が遊んでいる。牧歌的だ。とても現代文明など期待出来ない。ああ、異世界…出来れば風呂とトイレは現代文明がいいなあ…俺、この世界で生きてけるかなぁ…ユートの気分は更に下降していく。


 集落の中央に巨大な樹がそびえる。数百メートルはあろうか。遥かに高い葉の間に光が瞬く。まるでエルフ達に反応している様に見える。ユートか今まで生きて来て初めて見る巨大樹だ。


「あれがお主をここに呼んだ世界樹様じゃ。」


 長老が続ける。


「我々には定期的に世界樹の祭壇に高位のエルフが祈りを捧げる儀式が必要なのだが、今たまたまこの里に儀式が執り行える高位のエルフ…ハイエルフが不在でな。どいつもこいつも我儘言って世界中を飛び回っておる。全く腹の立つ…いやいや。でな、世界樹様とその使いであるハイエルフは根本で繋がっておってな。世界樹様が呼べばその御力で強制的に転移させる事が出来るのじゃ。」


それが何故か人間のユートを呼び寄せたと。完全に事故案件のようだ。


「ランダムにハイエルフが呼び戻されるはずが…すまなんだのうユート、関係のないお主を巻き込んで。どうにかしてお主を元の居場所に戻す方法を考えねばなぁ…」


え?


「方法…ないんですか?」

「ない。こんな事態初めてじゃもん」


「じゃもんって…ええええ⁈何でそんな軽いの?

お茶目に言ってもダメだよ婆さん!」


 元の世界に戻る方法がない。ユートは一気に絶望の淵に突き落とされた!


ズゴゴゴ その時突然地響きと轟音が響く。


「⁈」

「長老、世界樹様が‼︎」


 慌てて皆屋敷の表に出る。振り向くと巨大な世界樹が光に包まれ震えている。只事じゃない様子だ。エルフの住人がそこらかしこで悲鳴を上げて逃げ惑う。


「長老、これは…」

「いかん、世界樹様が儀式はまだかと催促しとる。まだハイエルフがおらんというのに。早過ぎる!」


戸惑う長老達だが解決策が浮かばないようだ。


ー来るがよいー


(?誰?)


ユートの頭に女性の声が響く。


ーそのまま妾の中に来るがよい…ー


 振り向くと光る樹の根元の祠の向こうから声がする。

思わず近づいて手を伸ばすユート。


「いかんユート、人間が近寄ってはいかん!結界に弾かれて人間如きでは身体が吹き飛ぶぞ‼︎」


しかし ユートは構わすそのまま光に飲まれて消えて行った。

一人称を三人称に変えただけとか言わないで(笑)

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