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29.愚者。

いつもありがとうございます。

感想、評価、ブクマ、レビューはすべて私の力になっております。

感想についても全て目を通してご指摘された場所は順次直しており、時間が取れましたら返信していけたらと思っています。

これからもよろしくお願いします。

私たちが異変に気付いたのはある一報からだった。


獣人族の長が慌てた様子で私たちの元へ駆け寄ってきてこう伝えたのだ。

ハイホルン王国周辺にいた魔物の大群がたった3人の人間によって、ほぼ壊滅したと。


最初は意味が分からなかった。

この戦争が長引いているように、魔物・エルフ連合・人間の戦いは瞬殺といったことは未だにほとんどなく実力が拮抗していた。

だからこそ一瞬で軒並み消えたというのはおかしな話だったのだ。

最初こそデマだと思ったが、明らかに魔物の量は減っていく。

それは遠回しに私たちへメッセージを送っているかのように思われた。



そしてそのおとぎ話のような連中はエルフの首の根も狩りに来たのだった。



*****


「おっと、まさか次から次へとエルフの方からお出迎えしてくれるとはなぁ。よう、元奴隷ども。ご主人様のお帰りだ」

「あっはっは、まじでうけるんですけどー。エルフのくせにたいそう立派な結界張っちゃって」

「残念だがお前たちに勝ち目はない。許しを請うか死ぬか選べ」


門番から敵の襲来の知らせを聞いてかけつけたダニングを除いた5人に開口一番浴びせられたのは自信に満ちた罵声であった。

私たちを支配していた時代の人間と同じ口ぶりで。

彼らは年代的に私たちが奴隷であった時のことは知らないはずなのに。



どうやら彼らは冒険者の類のようで後ろには騎士団のようなものはおらず、単独のパーティーとして現れたようであった。

・・・まるで私たちが魔物のような態度で。


そして人間の足元には私たちの同胞が血を流して倒れている。

彼らは門番を任せていたエルフたちだ。


「ふーん、お前らがエルフの中でも腕利きってわけか。5人で来たってことはそうだろうなぁ」

「あ、あの男イケメンじゃない!? わたしあいつ奴隷にしようかなー」

「まずは奴らを倒すこと優先しろ。だからお前はあほだって言われるんだ」

「はぁ!? あんたに言われたくないんですけど!!」


目の前で繰り広げられる茶番。

それは向こうがどれだけ余裕を持っているかを表していた。


「バン! すぐにあいつらを・・・」

「ああもう無理だぜ、そいつら死んでるから。いくらお前らが回復薬にたけてても死んだ奴はよみがえらせれないだろう?」


そういって横たわるエルフの頭を足蹴にする。


「なっ!! てめぇ!!!!!!!」

「シズク、落ち着きなさい。・・・あなたたちが最近魔物を殲滅させたものたちですか?」


ご主人様が開発した『エルフの場所が分かる魔法』を発動したが目の前の彼らはレーダーに引っかからなかったというとはそういう事だ。

ここで奴らに近づいては私たちが危ない。


私は湧きあがる怒りを頑張って抑えて目の前を見据える。

いままで戦争で何人ものエルフがなくなったがここまでいら立ったのは初めてだった。


「なんだ、俺達そこまで有名になってんのか。いやー勇者って人気者で困っちまうわ。国王(ジジイ)の命令で嫌々来たけど思わぬ収穫だなこりゃ」


「勇者? それはなんですか?」


「なんだよそっちは知らねえのかよ!! っち、これだからエルフは・・・。いいか、俺たちは王国の中でも唯一スキルをもって生まれた最強の戦士様だ!! お前らなんか敵じゃないくらいには強えぞ。おら、泣いて詫びるんなら今のうちだぞ。まぁ許さねえけどなうちのジジイどもが」


そういって彼は魔力を膨れ上がらせた。

確かに・・・これは人間が持っていい量の魔力ではない。



「おい、○○。多弁は銀、沈黙は金だ。さっさと終わらせるぞ」

「もう××は堅物なんだから。でも早くやるのは賛成! あの男エルフは私のものだからね!」

「しゃーねぇなあ。んじゃいっちょやりますか。◇◇、××、行くぞ! エルフ狩りの時間だ」


「みんな構えてください!!!」



あり得ない量の魔力を垂れ流しながら彼らは私たちに突っ込んでくる。

こうして今も忘れない、エルフと『勇者』との戦いは始まった。



******



結果から言うと、私たちは勝利した。

まぁ当たり前だろう、そうじゃなければ今頃私たちはここにいないから。

辺りの大地は抉られ元の地形がどんなのだったのかわからなくなるほどだ。


目の前に横たわるのは三つの死体。

ここまでするのに私たちは完全回復薬を7本も使った。

向かう人数を私たちだけにしたのは死者をなるべく減らすためだったがまさかここまで消費するとは思っていなかった。

それだけでは足りず多くの魔法具・魔法薬を消費し、何百年も鍛え続けた私たちが人数有利な中でぼろぼろになるまで戦い続けてようやくだ。


さらに代償も大きかった。


完全回復薬も改良を重ねており、あの頃のように発狂して眠りにつくようなことはないがそれでも激痛が全身を支配するしそう何本も一度に使えば身も心もボロボロになる。

回復薬のはずなのにだ。

それでも死の淵から舞い戻るには使うしかなかった。


そしてこの影響で一番奮闘したルリが一時壊れてしまったのだ。

なんせ最後にとどめを刺したのは完全に自我を失ったルリによる一太刀だったのだから。

ルリだけじゃなく私たちは『勇者』に勝利することにはしたものの、絶大なダメージを負ったのだった。


もしかしたらこれが原因でルリは・・・、いやそんなはずはない考えるのは良そう。


この戦いの後もちろん私たちは人間の国を攻め入ることができなかったし、魔物は勇者たちに根こそぎやられていたから動けなかったし人間は人間で勇者がやられたことに対する恐怖心で一旦大きな攻撃をやめたのであった。局地的な戦いは勃発し続けていたが。

それほどまでに彼らは人間の希望であったのだろう。

性格は最悪であったが。



だがもちろん魔物はやがて戦力を取り戻すし人間は新たな、より強力な勇者が生まれる。

そして私たちも回復してさらにほかのエルフや種族には彼らに対抗できるように訓練を強化する。

それ以外にも私たちは人間に攻め入られても大丈夫なように王国内の整備にもかなり力を入れた。


こうした歯車が噛み合いやがてまた・・・衝突する。


このようなサイクルをさらに5回繰り返した後、この戦争は突然幕を閉じたのであった。

戦争が始まってから実に70年が経過していた。

ようやく、人間とエルフとの決着がついた時であった。




*******


「なんでそんな急に戦争は終わったんだ?」


あらかた話し終えたヴェルに疑問だったことを投げかける。

流石にあっさり終わりすぎだ。


「人間が『勇者』探しに躍起になって巨額の金をつぎ込み、様々なことにおろそかになっていとも簡単に決壊したんです。天からの救いの糸をちらつかせられ、それに夢中になって他の事におろそかになるように」


「話にも合ったように6回目の勇者が死んだあと、人間の国は急に攻めやすくなったんだ。なんでも勇者養成学校とかを各地に作ってたみたいだぜ。勇者を探すための装置の開発とか、後天的な勇者の才能とかよくわからないものも作ってたらしいしな。・・・勇者になったやつは特権とかで好き放題やれたみたいだから余計ぐちゃぐちゃになったんだろうよ。だからあんな奴らが生まれたんだ今でも腹が立つ」


シズクが吐き捨てるように言う。

恐らく一番最初の勇者たちの事を指しているんだろう。


「フィセル様・・・。私は人間の国で騎士をしていますからいろいろと事情は分かります。その勇者の今の姿が、騎士(クリーガー)と呼ばれる制度なんです・・・。フィセル様も聞いたことはあるのでは?」


「クリーガー!? まさか、ああそうかそういうことか・・・」



騎士(クリーガー)

それは思春期の人間が一番おびえるもの。

あくまで聞いたことがある程度だが、今の人間の国では15歳の誕生日を迎えた時に突然不思議な能力に目覚めるものがいるらしい。

その後国から通知が来て無理やり騎士団に入れられるとか。

拒否権はないらしい。いわゆる強制徴兵だ。


俺のこれは・・・違うよな、大丈夫だよな!?


「多分フィセル様は違いますよ。今年の子はもう来ましたので」

「そうか、よかった・・・」

「当時の希望の象徴が、今の絶望の象徴とは皮肉なものだな」

「そうだね。あの頃の俺らにとっては昔も絶望の象徴だったけど」

「違いない」


ダニングとバンがしみじみとつぶやく。


「話がそれましたが、そうやって勇者の誕生によって人間の国は簡単に崩壊したんです。最後まで彼らは天に祈ってました。早く勇者を。と」


「それでエルフ全軍で最後は王都を滅ぼした・・ってことか」

「はい。こうして私たちは滅ぼして力で屈服させたのちにエルフと人間の和解条約を結んで晴れて戦争は終わりました」


「最後に人間はその欲深さで身を焦がしたのかもな。でも平等に和解してくれてよかったよ。じゃないと多分・・・」


「次は立場が変わっただけで同じことになってたかもな。でもそれもこれもご主人のためだったんだぜ? ご主人が生まれ変わったら奴隷なんて、そんな物語はだれも望んでいなかったからな」


「和解条約を結んだあと私たちはエルフの国へ戻り国の再建を始めました。まず国としてしっかり立て直さなくてはいけませんでしたから」

「それで初代国王がヴェルになったと」

「はい。そして大体50年前には今のような体制が整い今日まで続いてきたのです。エルフは長生きですから世代交代とかもありませんでしたしね。この辺の事は多分みんな各々で話したいでしょうから私の話はここまでにします」



なるほど、何となくではあるがどんな遍歴があって今の状況になったのかがわかってきた。

そしていくつか俺も思うことができてきた。


「ご主人様、少しよろしいですか?二人で話がしたいので外へ」


考えに耽っていると後ろからヴェルの声が聞こえる。

懐かしいなこの感覚。


「わかった、少し話そうか」

「みなさん、一番をいただきますね」


ヴェルに呼ばれた俺は椅子から立ち上がる。

うらやましそうな顔をする他のエルフにはすぐ帰ってくるからと言ってすでにリビングからは出ているヴェルの後を追う。



俺らは家から出て満天の星空の下、かつて走り回った広場へと向かった。



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