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18.エルフの国

次の日、休日を迎えた俺は馬車に揺られること5時間かけてある場所へと向かっていた。

言うまでもない、エルフの国と王国の国境だ。



王国とエルフの国は強力な魔法結界で分断されているためある一点、俺たちは関所と呼んでいるがそこを通らなければ移動することができない。

といっても人間がエルフの国に入れることはまずないが。



「坊主、なんでまたあんな辺鄙なところに行くんだ? 行っても何もないぞ」


前で馬を操るおじさんに話しかけられる。

ここまで5時間ぶっ通しで操縦してもらっているから若干疲労の色が見てうかがえる。

確かに今の俺らの周りには森しか広がっていないし、宿どころか人工物すら見当たらない。


「ちょっと用事がありまして・・・」

「用事? 見学か何かか?」

「まぁそんなところです」

「見学つっても人間はエルフの国に行けないし、関所に行っても鎧着たエルフと石の門があるだけだぞ? おっと、こういってる間にも見えてきたな」


馬車から乗り出して前方を見てみるとそこにはうっすらと石の門が見えてきた。

間違いない、あれが関所だ。


「帰りはどうする? ここで待っていてもいいぞ。なんてったってここには泊まるところもないし見た感じ野宿する気もないだろうし」

「いえ、大丈夫です。あてはありますので」

「よくわからんがいいんだな? じゃあ俺は帰ることにするよ。ここまででいいか? あんまり近づくとエルフの連中が煩いんだ」


「はい、大丈夫ですありがとうございました。これ料金です。多分疲れていると思うのでどこかに泊まって帰ってください。その分の料金も入れておきましたので」

「へぇ、坊主、子供のくせによくできてんなぁ。有難くいただいておくよ。またよろしくな」


馬車から降りてあたりを見渡す。

前方には門があってあとは森しかない。


馬車を翻して帰って行ったおじさんを見送って俺はその石の門へと歩きだす。

ある程度近づいていくと向こうも気づいたようで周りの空気が変わったような気がした。


「おい、そこの者とまれ!!! お前人間だな? ここがどこだかわかっているのか!?!」


二人いるうちの一人のエルフの騎士が俺にむかって槍を構えて大声を出す。

めちゃくちゃ警戒されている。


「はい、ここは関所ですよね」

「わかっているのなら何をしに来た!? 人間が来ても何の意味はないぞ!!!」

「いえ、少し話がしたい人がいまして来たんです。ここにはえーっと、バン様とヴェル様がいらっしゃいますよね?」

「何を言っているのだお前は!! お前のようなものが会えるわけがないであろう!!! 不相応にもほどがあるだろうが、わかったら早く帰れ!」

「これを見せてもだめですか?」


かたくなに威嚇し続けるエルフに向かってダニングにもらったお守りのようなものを見せる。

これがどんな意味を成すのか俺はよく知らないがおそらく何かしらの意味を持つんだろう。


「おっおい、そ、それは『維新の六芒星』の証じゃないか!! な、なんでお前が持っている!」


急にさっきまで喋っていなかったもう一人が急に取り乱す。

なんだ維新の六芒星って。

よくわからないがどうやらダニングは相当すごいものを俺に持たせたらしい。


「な!? お前これをどこで!?」

「王国にいるダニングというエルフからもらい受けた。これでバン様と会うことは出来ますか? 多分フィセルが来たっていえば通じると思うんですけど」

「おっお前!! 人間なんかがフィセルと軽々しく口にするな!!! フィセルという名は維新の六芒星の象徴なんだぞ!!」


え、なにそれ。

そもそも俺の昔の名前も今の名前もフィセルなんだが・・・。

これから先色々と面倒なことになりそうだなこんな感じだと。

というか今の俺の両親よ、そんな名前を息子につけてよかったのか?

キラキラネームかなんかじゃないのかこの名前?

え、本当に大丈夫??


「おいっ、でもこの証を持ってるってことはなんらかの関係があるんじゃないのか?」

「いやでも人間を通すわけには・・・」

「でもこれで追い返して後でなんか言われても困るぞ」

「それはそうだが・・・」


なにやら二人のエルフが目の前でもめている。

少し時間が経った後ようやく決断したようで再び俺の方へと向き直った。


「わかった、一旦ここにバン様をお連れするからお前はここで待っていろ」

「わかりました」

「何もするなよ? もし私が離れている間に何か変なことをしようとでも・・・」


「いや、その心配はない」


エルフの騎士が話している最中、石の門に魔法陣が急に浮かび上がりやがて黒色の渦が発生する。

そこから一人の男性が渦を通ってやってきた。

というかその門普通にあくんじゃないのか・・・。


「バ、バン様!? お疲れ様です!! ど、どうしてここに・・・」

「お疲れ様。なにやら外が騒がしいようだったから様子を見に来たんだ。・・・思いもよらぬ来客が来たようだけど」

「そうなんです、このものがどうしてもバン様と話したいと言ってきかなくて。どうやら六芒星の証をダニング様からいただいているようで・・・」


「わかった、あとは俺に任せてくれ。君たちは警備に戻っていいよ」

「でもっ、そんな不審なものを通しても大丈夫なのですか!?」

「大丈夫だといっているんだ。いいな?」

「わかりました・・・」


まさに鶴の一声というべきか。

騒いでいたエルフの騎士をたった一言で黙り込ませてしまった。

今俺の目の前に立つ金髪碧眼のエルフこそ、俺に昔仕えていた双子のエルフー。


「主、中に入ってください。ようこそ我らがエルフの王国『エルフィセオ』へ」


アイナの双子の兄、バンだ。


*****



黒い渦を通り抜けるとそこには王都と同じような風景が広がっていた。

王都と違うところといえば、あたりに木が多くて人工物が少ない気がするがさっきの人間側の門とは大違いだ。

そして今俺らはバンが呼んだドラゴンの背に乗ってどこかへと向かっている。

昔と違って今はドラゴンの背にも魔法が掛けられているようで風も揺れも一切感じない。

そういえばアイナのパートナーのドラグは元気かな・・?


「ここがエルフの国・・・」

「そうです、我らが200年かけて取り戻した国です。それはそうと主、お久しぶりです。今心の底から喜びがあふれ出しております。正直気を抜けば涙があふれそうです」

「俺もだよバン。何百年も待たせて悪かった」


バンが手を差し出してきたから俺も握り返す。

その手は俺のなよなよの手と違って岩のような硬さとなっており、彼がどれだけ剣を振るってきたのか痛感させられた。


「この手で色々なものを守って来たんだなバンは」


「はい、全ては主のためですがね。ただまさか本当に転生を成功されるとは・・・。いまだに信じられませんが主の雰囲気は変わりませんね。もし違う顔で転生されたらわかるかどうか怪しいラインではありましたが杞憂で終わったようでなによりです。ダニング殿から証をいただいたということはもうお会いしているんですよね、他には誰と会いましたか?」


「ダニングとアイナだけだな。アイナと会った時はもう俺ら大号泣だったよ。というかバンとアイナは違うところで騎士をやってるんだな」


「ふっ、アイナなら泣くでしょうね。・・・お互い思うことがあって道を選んだのですが其れもまた恐らく後日話すことになると思います」


「みんなそういうね。というかバンとダニングは冷静だな・・・。泣きじゃくった俺とアイナが何だか恥ずかしくなってくる・・・」


「そんなことはないですよ、今だってもう心臓がはち切れそうなほど高まってます。ただ主には凛々しい姿を見せたかったので頑張って抑えてます」


「そうか、いや、なんかもう立派になって・・・。昔も立派だったけど。ところで今これはどこに向かっているの?」


快適すぎてすっかり忘れていたが今俺はドラゴンの上。

ただ目的地は知らない。


「今は王城へと向かっています。俺の勤め先でもありますし、なによりそこにヴェルさんとシズク嬢がいるので」


「っていう事は今バンはエルフの国の騎士なのか。というかシズクも王城にいるんだ」


「今俺はエルフの国の騎士団長を務めさせてもらってます。シズクさんは今宰相、つまりヴェル女王の補佐をやっていますね」


「へー、シズクが補佐か・・・確かに似合うな」


確かにあいつが眼鏡つけてスーツをピシッと来たら似合うに違いない。

絶対厳しいから俺の秘書にはなって欲しくないけど。


「今エルフィセオにいるのはその三人です。っとつきましたね、ここが我らの王国の心臓にして王の城です」


ドラゴンがゆっくりと下降していき庭に着地する。

ドラゴンの背中から降りてその城の全貌を目の当たりにするがまあびっくりするほど大きい。


「中に行きましょう。ヴェルさんとシズク嬢に会いに」






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