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1.プロローグ

よろしくお願いします

「ご主人様、逝かないでくださいご主人様!」


「おい! 俺が最高の料理人になるまで見届けるって言ったじゃねえか!! 約束と違ぇぞ!」


「私たちを置いていかないでください・・・。こんなのあんまりです・・・」


「・・・これが人間とエルフの、寿命の違いというものだ。私たちではどうにもならん。普通の人間よりかは明らかに早い気もするが」


(あるじ)よ・・・、絶対生まれ変わってくださいね。その時はまた俺はあなたのもとに仕える」


「私、まってるから! ごしゅじんさまが生き返ったときに何もおびえるものがないような世界にするから!」



だんだんと薄れていく意識の中俺が横たわるベッドの周りからたくさんの声が聞こえる。

ああ、俺はもうすぐ死ぬのだろう。

何となく自分でもわかる。


生まれ変わる、か。


俺が死の直前までに到達した、いやしきれなかった伝説の魔法『転生魔法』。

一緒に生きることがかなわないとあきらめた俺が最後まで足掻いた末にたどり着いた結論。


僅かな願いを込めてもういまわの際の俺自身に俺が編み出した魔法をかける。

正直成功率は皆無だ。

でももうこれにすがるしか術はない。


それにこいつ等はもう俺がいなくたって生きていける。

いや、最初から俺なんていらなかったのかもしれない。

ちゃんと他のエルフと結婚して、寿命を全うして幸せに暮らしてくれたらそれでいい。


「お前らにもう俺は・・・必要ない。・・・これからは自由だ、自分が生きたいように生きろ・・・。でももし、俺が生き返れたら・・・その時は優しく迎えてくれ・・・・・」


どうやらもう俺のお迎えが来たようだ。

最後の力を振り絞り目を開け俺をのぞき込むエルフたちを眺める。



そう、あれは20年前の事だった。

俺とエルフたちの共同生活が始まったのは。


*******



ハイホルン王国。

それは非常に魔法によって発展した国であり、北には魔王が支配する魔国が、そして西にはエルフたちが暮らすエルフの国に接しており俺はこのハイホルン王国にて生まれ育った。



俺が5歳の時は人間と魔物は常にその境界線で戦い続け、エルフはそれを静観しているだけだった。

国境近くに住んでおり当時幼かった俺は日夜魔物におびえて過ごしていたのは今も覚えている。


そんな中、人間側の魔法や剣術、魔法具がどんどん発展していき国軍や冒険者といった様々な形で魔物を討伐するものが増えていってだんだんと人間が魔物をしのぐようになっていった。

いつしか魔物は金になる、名誉になるための踏み台として扱われていくようになった。



そしてついに当時の魔王は矛先を変えた。

そう、エルフの里に攻め入った。俺が12歳の時だ。


どういった経緯があったのかは知らないが攻め入られたエルフの国はいとも簡単に崩壊し、1年余りで国は滅びた。王国が一枚かんでいたという噂もある。


こうしてエルフの国は崩壊し、西も魔物がはびこるようになってしまったが其れからもあまり人間と魔物の関係性は変わらなかった。

魔物は人を食らうために攻め入り、人は金と名誉のために戦う。


そんな関係だ。

ただ一つ、エルフの価値が変わったこと以外は。


魔国と王国に攻め入られて崩壊したエルフの国にも少なからず生き残った者はいた。

だがそんな彼らには悲しくも人権なんて存在しなかった。


魔物に見つかったエルフはその身を残すことなく食らいつくされ、人間に見つかったエルフは奴隷商会に軒並み売られていった。


もともとエルフの能力は人間や魔物をはるかにしのぐ。

崩壊した理由は周りに関わらなかったからほかの国の発展を知らなかったこと、そして攻め入られないという慢心が招いた結果だといわれているが。



また、男女問わずエルフは非常に美しかった。

だから王国の地下で行われている闇市では日夜目がくらむような高額で何人ものエルフが売られていき、そして考えるのもおぞましいような生活を強いられていくのだった。

何にせよ、彼らに拒否する権利なんてなかったが。





そんな中、俺、フィセルは自分が踏みしめている道路の下でエルフたちが売りさばかれているのを知らないまま25歳を迎えた。

無知とは恐ろしいもので、地下でそんな悲しいことが起こっているとは露知らず、足取りは軽やかでスキップまでしていた。


だが喜ぶのも仕方がないことをわかってくれ。たった今王国に認められたのだ。

自分の作った完全回復薬(フルポーション)が。


「やった、ついにやったぞ・・・・。これで俺も大金持ちだ!」


右手には先ほど王に見せた回復薬、そして左手にはその特許状。

両手に花とはこれの事かと思いながらスキップで家までの道のりを駆けていく。

多分意味は違うし、ここから家までは馬車を使っても3日はかかるからその下手なスキップをやめるのも時間の問題だが。


高等学園を卒業し、大学には進学せずに独学でポーションについて学び7年の歳月をかけた俺の集大成。それがこの完全回復薬(フルポーション)だ。





もともと国境付近で生きてきた俺は常日頃から魔物に脅かされる毎日を送っており、実際に俺の父さんは家族を守るために魔物と戦って、そして死んだ。


だが本来父さんは生きているはずだった。

もし家にお金があって回復薬を買うことができれば、または俺らが作ることができれば。


でも現実は甘くなく、魔物と戦って1週間後に父さんは息を引き取った。


学校に通うお金すらなかった俺は中学3年間を地元の中学校で過ごし、家でひたすら独学での勉強を続け15歳の時に高校受験で見事王国内で一番の学園に入ることができた。

もちろん特待生で。


こうして家を出た俺は寮に入り3年間をすべて勉強に費やした。


この三年間で得たものは何人かの友人、たくさんの知識、そして自分で編み出した仮説。

失ったものは身体能力といったところだった。

剣技の授業だけはそりゃもうひどいものだったがひとまず置いておこう。



こうして3年間で自分がたどり着いた仮説をもとに、大学へはあえて進学することなく地元に戻ってひたすらに自分の研究に没頭した。

完全回復薬(フルポーション)を作るにあたって様々な副産物、例えば中級回復薬(セミポーション)とかいろいろな魔法具を作ることに成功したため、お金は割と潤沢にあったからこそできたことだ。



おかげさまで貧乏暮らししかしてなかった母親に親孝行できた。



そして7年がたった今、ついに完全回復薬(フルポーション)を作ることに成功し、再び王都にもどってきて申請したというわけだ。


もちろんこの完全回復薬(フルポーション)は俺にしか作れないし作り方を教えたからと言って作れるものでもない。それにこれ一個作るのに莫大な金と時間がかかる。


だから俺はこの完全回復薬(フルポーション)を水で何倍にも薄めて王国に売ることにした。

王様は快諾してくれたし水に薄めれば一個からたくさん作ることができるしそのおかげでこれから俺にがっぽがっぽ金が入ってくる。


つまり、俺は大金持ちになれるってことだ。



ただ一つ心残りがあるとすれば、これを完成させる前に母親が病に倒れて亡くなってしまったことだけだ。

あと一年早ければ・・・。



浮かれていた俺は父親、母親の事を思い出して足を止める。


「はぁ、結局一番守りたかった人たちは戻ってこないもんな。さて、どうするか。とりあえずあの薄めたポーション代だけでも一生暮らしていける額はあるぞこれ・・・」


そういって先ほど渡された書類を見る。

生れて初めて見るような額だ。

それだけこの国は回復薬に恵まれなかったと言えることなんだろう、王の嬉しさがにじみ出ている額だ。

まあそれもそうだろう。水に薄めたあの回復薬でさえ、傷にかければ一瞬で治るすごいものだから。



「とりあえず2,3日は王都ウロチョロするかなー」


そう思い、先ほどとった宿に向かおうとした時だった。


「おお、これはこれはフィセル様。この度はわたくしめと契約していただいてありがとうございます」


前から恰幅の良い男性に話しかけられる。

後ろには屈強なボディーガードがついており正直怖い。


・・・確かこの人はさっき城内で俺のポーションを売ることを契約した商人だったはずだ。

王国でもかなり有名な商人らしく、評判もかなりいいらしい。

たしかに、優しそうな雰囲気は出ている・・・と思う。


そして俺はこの先この人からもこれから先大量の金が入ってくることになる。


「いえ、俺みたいな若造が回復薬を売っても怪しがられるだけなのでこちらもあなたと契約出来て嬉しいです」

「そう言ってもらえるとわたしもうれしいです。あとはお任せください。それでなのですが、この後お暇ですか?」


「ええこの後宿にもどって休むくらいです」

「ならばわたくしと地下にでも行きませんか?」


「地下? 地下に何があるんですか?」

「おや、フィセル様はご存じないのですか? それではこの先不安ですね。すみません言葉を変えさせていただきます、この後私と一緒に地下に行きましょう」



・・・地下? この道路の下ってこと?

よくわからないけど行ったほうがよさそうだな。

なにか知っておいたほうがいいマナーとかあるのかもしれないし。


「わかりました。ついていきます」



こうして俺は恰幅のいい男性についていくことにした。

そこで何が行われているかも知らずに。




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