表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/713

狂戦士たちの宴 そしてチンピラは最強の武器を手にした

 カトリたんが一撃で十層階層主をぶっころした二分後、上の階層からバトラとラトファが慌ててやってきた。


「ジャイアント・アントが消えたからもしやと思えば」

「うひゃー、いったい誰が?」


 みんなしてカトリたんを見る。

 化け物を見る目なのに照れてるのはなんでですかね?


「少年諸氏は恋しちゃっていいのよ?」


「恋をする気はないが」


 さすがだぜフェイ、カトリたんを一撃でへこませやがった。

 この化け物メンタル弱いですね。


「見事な技能だと賞賛させてもらおう」

「賞賛するなら恋しよっ?」

「勘弁してくれ……」


 でもフェイの奴あんまり嫌がってないね。


 人格はともかく強者には敬意を持つとかいう格闘家特有のアレかな?


「それじゃあ次の階層にレッツゴー!」


 いつの間にかカトリたんが音頭取ってるけど誰も文句言わない。


 だって怖いもん。その気になればこの面子全員無傷で殺せるもん。俺だって見た目麗しくて俺の腹筋狙ってなかったらビビってるよ。


 お久しぶりの十一層到着。

 ここからはゴーレム系が多いかな?


「よっ、ほっ、はっ!」


 壁から次々生まれる人間形のゴーレムが、カトリたんの短剣の投擲で次々四散していくぜ。

十一層エンカウントの四十七体全部を余裕の遠距離狙撃でコロコロしやがった。


「マジかよ、あの姐さんマジか……」

「フェイ、そろそろお腹綺麗に磨いとけよ」

「腹筋舐められるくらいで済むなら安いもんだ……」


 声に恐怖出てるぜ?

 ま、誰だって初めては怖いもんだ。合掌。


「童貞卒業おめでとう」

「そこまでは許してないぞ!?」

「冗談じゃないから安心しな」

「マジかよ……」


 安心しろ、そこは冗談だ。

 でもネタバレはしない。ダンジョン終了後までフェイで楽しむためだ。


「カトリたん」

「なぁに?」

「張り切りすぎ。ちょっと抑えて他の連中にも魔物回してやってよ」

「かしこまり!」


 ダメな子一号がお元気な返事。


「つまり僕の出番か」


 俺の話聞いてた?


 十二層のゴーレムが出現するとフェイが単騎で飛び出していった。


 なんか一人が一つの階層の雑魚を順番に担当するみたいな、クレイジーな空気になってるけどそんなんできるのお前らだけだよ。

 フェイ、お前にだってその七体のゴーレムは無理だろ?


「魔円斬ッ!」


 一直線に突進してきたゴーレムを一撃で全滅させやがった……

 こいつも化け物じみてきたね……


 そして十二層を抜けるとフェイがバトラにハイタッチ。

 お前ら熱い意地の張り合いするんじゃないよ。


 不幸な事故が起こる前にバトラを説得してみたが、頑固として拒否しやがるんだ。


「俺は口では強くなると言いながら、安全な戦いを選んできたのだな」


 リーダーとしては正しいよ?

 冒険はおうちに帰るまでが冒険だよ。冒険者は冒険しちゃいけないよ?


「無理・無茶・無謀を笑いながら駆け抜け、狂気に身を委ねてこそ人外のちからが手に入る! カトリーエイル嬢はそう言っているんだ!」


 いや、ダメな子一号は手加減未搭載なダメな子だよ。

 それだけだよ? 深い意味とかないよ?


「往くぞ、魔剣ラタトゥーザよ俺に道を切り開け!」


 悲劇の戦士設定に酔いしれるバトラが単独突撃していった。

 そういえばこーゆーのあいつの好きなシチュだったよね……

 やっぱバトラはバトラだわ……


 十三層を抜ける頃にはバトラがなんだかカッコよく見えてきた。


 無数の返り血を浴びながら鬼気迫る迫力で、屍山血河を乗り越えたバトラが一つ上の男に見えてきたぜ。やっぱ気のせいだわ。


「リリウス!」


 え、次は俺がやるの?


 カトリたんとフェイに丸投げしようとしたらちから強く頷いてやがる。

 これやらないとダメな奴だな。


「任せろ!」


 十四層は開幕からステルスコート先生にご降臨いただいて蹂躙じゃボケぇぇぇ!


 こっちに気づいてもない無害な狼系の大男をチャージド・ストライクで一撃死させる。入り口から出口まで一気に駆け抜ける!


 みんなには後からついてきてもらうんだ。


「また死んでる……」

「戦闘音が何もしてないわねー……」

「あの新入りどんな手品使ってるんだ……」

「こちらは三体同時、全て一太刀で仕留めてますね……」

「フッ、頼もしい奴だ」

「リリウス君こんなに強かったんですか……? カトリーさんとどっちが?」

「いや、あたしもリリウス君には勝てる気しないから」

「ほへー、すごいね!」

「あいつならこのくらい当然だろうな」


 出口でしばらく待ってたらみんながやってきた。

 顔色が悪いけど何体か打ち漏らしたかな?


「へへ、じゃあ次の十五層だけど」


 おいお前達目を逸らすんじゃないよ。


 クラウとユイちゃんには魔法力温存してもらうしハンス君は論外。美少女エルフは大事にしたいッッ!

 残るは一人だな。


「トキムネ君頼むぜ!」

「へっ、任せろや!」


 トキムネ君が颯爽と十五層に降りてくぜ。


 カッコいい背中だな、本日のハイライト決定だな。次の階層に出るのグラードトロルとかいうやべー魔物だし。以前俺が手も足も出なかった奴だし。


 愛刀、二条守兼定を手にグラードトロルとかいう鋼肌の巨人に走っていくトキムネ君を背景に、本日はここまで。


 来週も見てくれよな!





 来週って言ったな、あれは嘘だ!


 トロル、またトロールと呼ばれる巨人種の魔物の多くは身長3~3.5メートル程度。

 人族よりだいたい二倍背が高いんだ。身長が二倍になると体積は八倍、つまり種族全員スモウレスラーのやべー奴らだ!


 日本人ならこのやばさわかるよな、白〇や把瑠〇みてーな連中が武器持ってマジで殺す気でかかってくるんだぜ!? 勝てるわけねーよ!


 しかもこのグラードの称号付きは半端ねえんだ。

 鉱物食(グラード)、つまりこいつらのメシは金属なんだ。化学的な理屈は謎だが鉄を食べて体表が鋼鉄化したり骨が鋼鉄化してるんで、普通の武器なんかで戦ったら折れるわ曲がるわ刃が零れるわと冒険者泣かせなんだ。ミスリル武器持ってない奴はお呼びじゃねえんだ。


「うおおおおおおお! 月光牙ァ!」


 トキムネ君の放った遠距離斬撃波がグラードトロルの首に命中! やってないな!

 だってカキーンって弾かれてるもん。


「っちぃ、鋼食いか!」


 トキムネ君の全身が黄金に輝き出す。

 えっ、お前身体強化に属性付与できんの!?


 こん棒を振り上げるグラードトロルの背後に一瞬で回り込んだトキムネ君が大上段に振りかぶり、黄金に帯電する刀を―――


「斬鉄!」


 ザンッと切り裂きやがった。


 脳天から股間まで一刀両断の脳天唐竹割りとかマジかよ、やるじゃん。


 先の二又に分かれた道の両方からグラードトロルが二体おかわりのようですね。


「幻影身!」


 トキムネ君が三人に増えたぞ!?

 馬鹿が増えて誰が得するんだよ!


 走るトキムネ君×3がグラードトロル二体とすれ違う。と同時に分身消失。


 トキムネ君が刀を鞘に納めると、グラードトロル二体の首が落ちてその巨体が倒れる。


「マジかよトキムネ君やるじゃん」

「トキムネは強いぞ。短期決戦向きで持久力はないが」

「つまり根性ねーんだな」

「一瞬ですべてが出せるというのも才能さ」


 発見、バトラは案外人の良い部分を見つけるのがうまい。経営者向きだな。

 俺逆に悪いところ見つけるの超うまいけど。


 通路の奥からさらにグラードトロルが三体出てきた。

 ガンバレー、トキムネ君ガンバエー! 俺らまだ入り口から二歩しか進んでねーぞー! 地面に膝ついてる場合かー!


「ば…バトラァ~~~!」


 トキムネ君めっちゃ情けない顔でバトラを呼んでる。


「トキムネ君研究の第一人者のバトラ氏、あれはどういう感情表現ですか?」

「もう限界だから助けてって奴だな。いくぞ!」

「仕方ねえな! フェイ、一番左の頼む!」

「やれやれだ」

「カトリたんは右の頼む!」

「お前も働けぇぇぇぇ!?」


 へへ、やだ。


 グラードトロルを倒しにいったはずのフェイが引き返して俺のシャツ掴んで前後にガクガク揺らし始めた。


「お前も! 働け! 働くんだ!」

「さっき働いたじゃねーか」

「手の内を、見せろと言ってるんだ!」


 へへ、フェイの情緒不安定つっこみも懐かしいぜ。


 こいつのつっこみは迫真だから好きなんだよね。ギャグばっかりやってる漫画より全編シリアスなのに唐突にギャグ挟む漫画の方が面白いのは進撃の巨〇が証明したからね。


 俺とフェイがいつもの漫才やってる間にバトラとカトリたんが全部倒してトキムネ君に肩貸しながら戻ってきた。


「次は休憩スポットだし、みんなで普通に攻略しない?」


 この後めちゃくちゃサクサク進んだ。


 なおギドーなるドワーフから慰謝料代わりにいただいたミスリルの大戦斧使ったら普通に倒せたぜ。

 やっぱり攻撃力高い武器ってイイネ。





 十六層はダンジョンさんの小粋な計らいご休憩スポット。


 一面の大草原さ。


 青空に浮かんだ塔をぼんやり眺めながらユイちゃんとお茶してる。


「何を考えているんですか?」

「別に大したことじゃないんだけどさ、やけにしっくりくるなって」


 十五層のグラードトロルにミスリルの大戦斧をぶちこんだ時の感覚がまだ手のひらに残っている。


 なんとなく意図的に避けてはいた。


 ゲーム『春のマリア』に登場するリリウス・マクローエンの武器が正に大戦斧だったからだ。

 身長190を越える長身で自分ほども大きな大戦斧を使うとかいう強者感だしておきながら、雑魚だったチンピラのだ。


 今まで斧だけは避けてきた。


 でも今日初めて使ったのに生まれた時から使っていたみたいにしっくりくるんだ。


「相性がいいんですね」

「そうだと思うんだがね……」

「苦手意識でも?」

「だって悪党の武器じゃん」

「私はカッコいいと思うなあ」


 なんですと?


 ゴロンと横に転がってユイちゃんを押し倒す形になる。


「俺カッコいい?」


「……斧がね。…………リリウスもカッコいいですよ?」


「めっちゃやる気出てきた!」


 そのままユイちゃんを抱きしめる。

 戸惑う女の子をギュウっと抱き締めながら幸せ気分に浸っていると……


 ガン!


 超痛い投石が飛んできた。

Name: トキムネ(真田小十郎時宗)

Age: 19

Appearance: やさぐれ浪人

Height: 182

Weight: 68

Weapon: 二条守兼定(B)

Talent Skill: 刀術A 身体強化B 魅了E

Battle Skill: 藤堂夢幻流(D) 投げ刀子(D)

Passive Skill: 博徒C 自信喪失C 刀鬼の血統B


LV: 20

ATK: 288(同ランク前衛E級冒険者の平均値160)

DEF: 245(180)

AGL: 187(140)

MATK: 0(0or60)

RST: 134(120)


 酒に博打に女遊びに溺れ鍛錬を怠った結果、生来の優れた才能が完全に潰れている。この馬鹿者についてこれ以上語る必要があるとは思えない。

 自信喪失の発芽で自覚があるらしい事は分かったがだからどうしたと云うのか。結局才を活かすも殺すも本人が決める事なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 戦斧使いになるのかならないのか…?? 更新ありがとうございます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ