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悪役令嬢の手下Aだけど何か質問ある?  作者: 松島 雄二郎
番外編 神々の世紀 火薬の園の魔王
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始まりの救世主①

 目覚めてみればホテルの部屋だった。


 ベッドで大の字になっていた俺はココハドコ私ハ誰の気持ちで室内を見渡す。窓ガラス突き破ってフェイが寝てんじゃん! あいつの寝相どうなってんだよ!


 俺のふくらはぎを抱いて眠るユイちゃんがいる。そんなユイちゃんのお尻にしがみついて眠るシェーファがいる。で、シェーファに蹴られたのかサリフが近くに転がっている。相変わらず不憫な女だ。


 てゆーか部屋にいるの大半は知らない人なんですけど……

 クライシェはどうなったの? イザールは? アシュリーとオデは? 箱庭戦争は?


 え、夢オチ?


「嘘やん……」


 そして枕元に転がる一枚の紙きれ。重要なアイテムと見た!


『請求書 本日は銀狼ホテルサプライヤーのご利用まことにありがとうございます。請求額は諸々をひっくるめて388ユーベルでございます。ご起床後はフロントまでお越しください』

「きえええええええ! ざっけんなあああああ!」


 見た瞬間に請求書を引き裂いてやったぜ!

 金貨388枚ってどういう事だよ! Aランク冒険者の装備が丸々揃うぞ! もう銀狼グループは使わねえぞ。絶対だ!


 え、待って待って。心がついてこない。クライシェはどうなったの?


 と…とりあえず部屋を出よう。室内は乱痴気パーティーの事後みたいになってて足の踏み場もないくらい大勢がぶっ倒れている。漏れなく全員殴り倒された痕跡があるんですけど……

 犯人はフェイだな。たぶん。


「うわー、うわー……」


 足の踏み場もない部屋から出ていく。廊下も惨状だ。酒くせえ廊下に所狭しと酔っ払いどもがぶっ倒れている。

 何だよこれ。何がどうなってんの?


 酒くせえ廊下を歩いていると神と出会った。鑑定のアシェラとかいうアシュリーが窓辺に腰かけている。


 面影は…なくもない。長き年月を経て磨き、苦悩によって輝きを落としたアシュリーだ。青空を見上げる彼女の横顔にハッキリとそう思った。


「アシュ……」


 声を掛ける瞬間、アシュリーが振り返り、微笑む。

 こいつだけ随分と大人になっちまったんだなあ……


 俺にとってはほんの数日前の出来事なのに、もう随分と会っていない友達と再会した気分になった。


「あん、あぁリリウス君か。昨晩は良い夢を見れたかい?」

「夢?」

「何だよ覚えていないのかい。せっかくボクが珍しい夢を見せてやったのに」


 は?

 夢を見せてやった?


「若い頃のボクはけっこう可愛かったろ? ふふん、惚れたかい?」


「は? あれが夢?」

「そうだけど。ボクの記憶から再構成した夢だけど」


 は?

 は…………


「はああああああ!? じゃああれか、全部夢だったってのか!?」


「そ…そうだけど」

「ざっけんなああああああ!」


 俺はこのあとメチャクチャ不敬にも女神様にガチ説教を垂れてやった!

 こいつのことを可愛いとか思っちまった自分に自己嫌悪だ。最悪だ! 死ね!



◇◇◇◇◇◇



 すげえ怒っているリリウスが大股で歩いていった。それを見送る鑑定のアシェラはぽかーんとしている。

 なんでポカーンとしているかっていうとあいつがワケのわからねえことばっか喚き散らして去っていったからだ。


「ザナルガンドの封印? クライシェ? あいつは何を見たんだ……」


 アシェラが掛けた夢いざないは古い町並みや当時の暮らしぶりを投影した箱庭の映像体験でしかなかったはずだ。なのにあいつはワケのわからないことに文句をつけてきた。

 ハザク神と戦った? ありえない。アシェラはハザク神を見た事が無い。見た事のないものを見せられるわけがない。


 その時アシェラの足元でぐっすり寝ていた信徒ファティマが目を開いた。


「もしや夢誘いの呪いに抵抗されたのではないでしょうか?」

「う~~~ん、完璧にキマったと思ったんだけどなあ。でもあいつの抵抗力馬鹿みたいに高いしそっちかもね」


 ちょっと自信なくすなーなんてせせら笑うアシェラは普段よりもずっとご機嫌だ。宿敵であるディアンマを倒したせいだろうか?


「そういえばボクも懐かしい夢を見たよ」

「あら、アシェラ様の夢ですの。どのような夢でしたの?」


「まだガキの頃の夢さ。あの頃はボクも小さかったし大人たちは怖いしで……あぁそうそう、懐かしい奴もいたなあ。名前は忘れちゃったけどトンデモナイ奴なんだ。どんな問題だってこう殴って解決しちゃうトンデモナイ奴でさ、馬鹿だけどとにかく強いんだ!」


「ふふふ、アシェラ様が何だかとってもお楽しそう。よほど好ましい方だったのですね。どういった方ですの?」

「名前なんて覚えてないってば。もう九千年かそこいらは前の話だぜ。……あいつは何だったのかな、親戚かなんかだったんだろうけど思い出せないや」


 でも、そう区切ったアシェラが大昔を懐かしむように頬を赤く染める。


「いま思えばあれがボクの初恋だったのかもね」


 神話の時代は遠く、長き年月が記憶を塞ぎ激情から熱を奪い去った。

 それでもかつて紡いだ友情を思い出して懐かしむ贅沢だけは時にも奪えやしない。鑑定のアシェラは遥かな過去に置いてきた恋の想い出一つを口に出し、あの巻き毛の少年の笑顔を思い出しながらフフッと微笑む。

 始まりの救世主と鑑定の女神の間に『朽ちぬ絆』が結ばれました。

 恋は蜜のように甘く、友諠は錆びぬ鎖がごとく強く両者を惹きつけます。


 好感度が更新されます。44→74

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― 新着の感想 ―
[一言] 30か…だいぶ上がったな。 好感度最大値は100なんだろうか?
[良い点] リリウスはエンタメを忘れない…榊遊矢かな。 [気になる点] >好感度が更新されます。44→74 >好感度最低値が更新されます。min60 この情報は一体? [一言] ヒロインレースにアシェ…
[気になる点] ハイエルフリリウスの顔面偏差値はトールマンリリウスより高かったんですか? オデが泣いた理由はリリウスを覚えてたから? イザールにとってクライシェはヒロイン?
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