祝福は呪い
―――加護をあげた子に文句を言われた。ちょっとムッときたから自分でも不味いと思う量をくれてやった。
偉大なる神の姿は矮小な人の感覚野では捉えられない。
雑踏を影のように歩いていく魔の大神は先ほどの出来事を思い出してはクスクス笑う。
「面白い子だ、あぁ面白い子だった」
あれだけのちからを与えてもキョトンとしていたのは意外だった。神のちからは人の身に収まるものではない、あれだけのちからを与えれば魂が内側から破裂しても何の不思議もなかった。それは500gしか入らない革袋に百トンの砂鉄を注ぎ込むような行いであるからだ。
「あれに耐えうるとはね。あいつの呪具を持つ子だ、魔王の呪具に相応しい器を持つ戦士だということかな? だから惜しいね」
偉大なる神のちからは強大なちからを持つ反面で人の身に落とした時点で負の側面を獲得する。神ならざる人の心には過ぎた影響力を持つからだ。
ティト神のちからを権能の下賜と呼べるほどに与えられた人は心を繁殖欲求に支配される。それこそ与えたその場で発狂してもおかしくなかった。……だから惜しい。
今は耐えられても時を置けば心は崩れてケダモノに堕ちる。最後には自分が何者かもわからなくなって男女の区別も忘れて襲い掛かる獣に落ちる。それは分際も弁えずに神を挑発した者への神罰となるであろう。
だが……
「リリウス、リリウスね、懐かしい響きだ。……本当に懐かしい、ボクを倒したハイエルンの名前だ」
口に含んで放った声は肉声ではない。
魔法力と呼ばれるものよりもさらに上の周波数で放たれた音波のようにローゼンパームに広がっていき、この背徳の都に潜む魔を怯えさせる。ここは言葉の通り幾多の魔を抱え込んだ背徳の都なれど彼の威圧には何者も抗えなかった。
その淫靡な声を聞けば心底から震えあがり、御前へとあがる蛮勇もなくただただ住処で震えあがるだけだ。
彼は多くの名を持つ王名だ。自らの神族を持ちて多くの神を従えていたこともある神々の王の一つ柱だ。
すべての魔物の神、闘争を告げる者、魔神ティトが光のように加速して跳躍する。その跳躍は海さえも跳び越える跳躍だ。
「キミは明日には狂い死んでいるかもしれない。だがまた会うことがあればボクのしもべにしてあげよう!」
魔神の哄笑が青空に解き放たれる。
彼の眼にはかつて戦った好敵手の御姿が映っていた。
◇◇◇◇◇◇
アシェル・アル・シェラドは元々サン・イルスローゼを中心に活動する鑑定屋だ。
去年の夏に帝国にいたのは鑑定の依頼で呼ばれたからで、出張費込みで何と鑑定一発金貨五百枚を受け取ったらしい。
依頼のあとは観光がてら近隣をぶらぶらしていたが、俺に会ってから何かと不幸が続いたので怖くなって超大国に戻ってきたらしい。
不幸ってまさか夜の魔王の呪いか?
「いったいどんなことが起きたんだ?」
「ちょっと腰が痛くなったりしてね」
それは腰痛だな。
「たまに小指を木箱の角にぶつけたり」
そりゃ不注意だな。
「生魚に当たって腹痛が……」
夏場の内陸で生魚食べるな馬鹿。
俺は言ってやることにした。
「アシェルお姉さん、あなたは馬鹿ですね?」
「あんたはなんで平気なんだい! 逆に! そんだけ禍々しい瘴気の渦の中心にいて!」
「俺には見えねえっつか誰にも見えねえよその瘴気。怖がりすぎて変なの見えちゃってるだけじゃないの? ほーら怖くない怖くなーい」
手を左右に振ると次第に落ち着いてきた。
今度はステルスコートを持った手を左右に振ると泣き出しそうな顔になった。
うん、これ何か見えてるわ。この人絶対何かやばいの見えてるわ。
「頼むからお姉さんいじめて遊ぶのやめておくれよ……」
「アシェル・アル・シェラドってあの有名なハイクラスウィザードのよね?」
「そーよ、うちが誇るSランク冒険者よ。ビビらすの? どんだけ?」
そこ、ひそひそ話しない。
「で、鑑定してくれるよね!」
「……お金あげるからさ、勘弁しておくれよ」
後日俺はSランク冒険者からカツアゲした子供のアサシンとしてローゼンパームに名を轟かせることになるがそれはまた別の話だ。
「お金ください」
「はいよ」
銅貨一枚ゲットだぜ!
舐めてんのか!?
「うわーん! あたし故郷帰るぅ~~~~~」
ってダッシュで逃げんなし! くそ、魔法使いのくせに足早いな!?
◇◇◇◇◇◇
一時間後。
俺は王都から船で脱出しようとしたアシェルを引き摺りながらギルドに戻った。
大泣きするSランク冒険者を引き摺って歩く子供のアサシンとして俺の武勇伝はえらいことになるがそれは後日の話だ。
「ガキんちょに為すすべなく捕まった挙句公衆の面前でおっぱい死ぬほど揉まれてしまったわ……死にたい」
「アシェル様しっかり!」
「鑑定してくれなかったら一生付きまとうぜ。一年後くらいには俺の子供を産んでるからな? むしろ毎年孕ませるぞ?」
そして二人は幸せな家庭を築きました。
「ひぃっ、もう、怖いわねえ! あぁもうわかったわよ。視ればいいんだろ視れば!」
アシェルが訝しそうに首を捻る。
前は鑑定できなかったのに今回はちゃんと鑑定できたから不思議なのだろう。ちゃんとステルスコート脱いでるからね!
「坊や、まさかそのコートが……」
俺が唇の前に指を立ててお口にチャックさせる。
「ど…どうぞ」
『剣術D 商売D ティトの加護SS 魅了D』
これにはさすがに絶句した。
ティトお前はケチ神じゃない馬鹿神だ。頑張って魅了Dなんですか本気出して魅了Dなんですか、戦闘系スキルください!? 魔法習得率アップください!?
くそー今度はどんなに失礼な発言しても出てきやがらねえ。さては逃げたな。
使えねえなあの馬鹿神死ね。
「ティトのSSってどんな効果なの?」
「彼はまつろわぬ神だからねえ、秘伝の書物にも詳しいことは書いてないのさ。……ちょいと拝見」
アシェルが俺のズボンとパンツを一緒に引き下ろす。
なんですと!? 俺のご立派様が正真正銘本物のご立派様に進化してやがる! ちょっと見栄張ってご立派様なんてハッタリこいてたミニサイズの象さんが本物の象さんに進化してやがるぜ! ティトあいつすげえよ! パオン通り越してパオーンだよ!
「これ以上はここではね。ちょいとついてきておくれ」
と言って連れて来られたのはギルドの二階にある客室だった。職員の仮眠室かな?
俺のズボンとパンツを躊躇なく下ろしたアシェルがひどいセクハラを始めた。
象さんとのスキンシップは禁止ではありませんが優しくしなさい! へへ、さすがに興奮せざるを得ないぜ。興奮したご立派様はペットボトルほどもあるくせにミスリルぐらいガッチガチだぜ。
「これはまた見事な物だね……」
本気っぽいんで生唾飲むのやめてもらます?
ベッドに腰かけて足を組んだアシェルが煙管をくゆらせる。エロ格好いいお姉さんの再臨だぜ、さっきの醜態まで眼に焼き付いてるけどな!
「あんたティト神と接触したね?」
「つかあんたの来る数分前までギルドにいたぜ」
めっちゃ驚いてるな。当然だろうなB級馬鹿神とはいえ一応神様だ。
「……ティト神は特別人に好意的な御方らしいからそういうこともあるさね」
でもレザードには泣くほどビビるのにティトにはビビらないのね。あいつ一応無害系なの? めっちゃ怖かったけど?
「元々王都地下迷宮で会ったんだけど逃げたらついてきたんだ」
「逃げた? なんで?」
すげえ怖かったもん。神様だって名乗らなかったら素足きれいきれいしてたぜ俺。
「ま、神ってのは気まぐれな方々だからあんまり関わらない方がいいのはたしかさ」
「同感」
「そう思うなら早いとこそのロングコートは捨てるんさね」
嫌です。ステルスコートさんとはズットモです。
「ま、捨てようと思って捨てられるもんじゃないと思うけどねえ」
「どゆこと?」
「あんたとっくにそいつに魅入られてるよ。呪われたマジックアイテムってのは捨てても戻ってくることが多い。むしろ捨てようなんて欠片でも思えば殺しに来るから、捨てようと思わないのは正解さ」
ステルスコートさん俺のことそんな気に入っているの?
そんで捨てようと思った瞬間裏切られた気分になって反逆しちゃうの?
ヤンデレな君も大好きだよ! だから裏切らないでね!
「相性がいいのかよほど大切にしてきたか、どちらにせよ坊やには危害を加えようとはしてないね」
そりゃ三日に一度は手洗いで洗濯してますから。きちんと陰干しもしてるし痛まないようにオイルも塗ってるからね。俺より扱いのいい主人なんて他にいないレベルだよ。
「おっと、本題はそっちじゃないんだ」
「なんです?」
「そういえば自己紹介ってもんを忘れていたと思ってね。あたしは幸運と英知を司る砂漠の女神アシェラの巫女アシェル・アル・シェラド」
スカートならぬ薄絹の端っこを摘まんで丁寧に挨拶されてしまうぜ。
てゆーか巫女さんなのにエロい恰好して出稼ぎしてるの?
「とっくに出家した身ではあるけど一応フェニキアの第三王女さ」
「王女様なのに公衆の面前でおっぱい揉まれたのか可哀想に」
「坊やにだけは言われたくないねぇ……」
犯人は俺でした。
フェニキアといえばウェルゲート海を挟んだ南の小国だったかな?
この世界には珍しく観光立国のような産業を発達させていて、幸運のアシェラを奉る神殿ともなれば祈願に多くの人々が訪れるそうな。
アシェラ神殿には代々巫女と呼ばれるS鑑定を持つ鑑定師がいて、周辺貴族は嫡子が生まれるとその健やかな成長の祈願も兼ねて大枚叩いて鑑定してもらう風習まであるらしい。
あんたのことじゃねーか! なんでそんなV.I.Pがエロい恰好して出稼ぎしてるんだ!?
「フェニキアは独立国ではあるが実際はサン・イルスローゼの隷属国さ、古くからの取り決めでS鑑定を必ず一人は派遣することになっているわけ」
「ふぅん、色々あるんだねえ。てっきり出稼ぎだと思ってたよ」
「実際出稼ぎさ。うちはこれといって産業もない貧乏国家だしね、サン・イルスローゼはお金持ちが多いから大助かりなんだ」
王女自ら出稼ぎして送金するとか偉いもんだ。
うちのブタ王子なんて駄々こねて税金リゾート作らせたりするゴミ野郎だぞ、と思ったけどリゾートの建設費ペイするどころか巨大資産に仕上げたんだったな。やはり王族って優秀なのか?
「さてさて本題に入ろうか。幸運のアシェラその加護は鑑定、あたしの属するアシェラ神殿には大昔からの仕事があってね。語り部として神々の仕業を市井に語るのと、加護の持つちからを調べることさ。六千年の歴史あるアシェラ神殿でもティトのダブルSは記録にない。つまり代々の巫女の中でも接触者はあたしだけだったわけさ」
なるほど俺は六千年に一人の偉大なるレアスキルホルダーなのか。
すごそうに聞こえるけどゴミスキルなんだよね……
「ちなみにティトの加護の詳しい効果を教えてもらっても?」
「Eクラスでは精力の増強ね」
バイアグラじゃん。医薬品止まりとかマジあの神カス。
「Dなら陰茎の巨大化」
たしかに黒人を凌駕するご立派様に進化したけども。
雑誌の裏にあるいかがわしい広告みたいな効果とか死ね。
「Cなら健常児受精」
たしかに子供は健康に限るけども……
「Bなら異種交配」
はいクソいらねー、動物姦みたいな異常性癖ないです。
「Aなら任意による完全受精制御」
子供で野球チーム作れますね!
って、BAKA! Aでコンドームなの!? Aで避妊魔法と同じ効果なの!? あいつ本気の無能神なの!? 子供欲しい人なら本気でありがたいスキルかもしんないけど!?
「……でSはなんですか?」
「Sクラス以上の記録はないのさ。つまり自分で試してみるしかないねえ」
うわー絶望しかねー。
AでコンドームスキルなのにS以上だからって何を期待すればいいんだ。あいつ本気出して魅了Dの無能神だぞ。やーいティト悔しかったら戦闘系スキルください!? お願いしますから!?
で、アシェルさんどうして脱ぎだしたんですかねぇ……?
「まずはあたしで試してみないかい?」
「喜んで!」
全裸のアシェルに向かってルパンダイブである。
「あぁもう逃げやしないからがっつくんじゃないよ! ……もう」
恥じらうエロいお姉さんも可愛くて好きです。
「坊やなら一発で孕ませることだってできるんだ。だからさ、あたしを孕ませておくれ」
「……さすがに十二でパパになる気はないんだけど」
美味しい展開かと思えば地獄行きの罠でしたか。
結婚は墓場、墓場は嫌です。
「夫婦になれなんて言わないよ。だから子はあたしが貰うけど構わないかい?」
「いいけど。人体実験はやめてあげてね」
まだ見ぬ息子か娘が神殿の地下で切り刻まれるのはやだなー。
「そんなこと許すもんかい。あたしにとっても大事な子供なんだ」
そんなら任せときな。片親でも立派に育つ強い息子を進呈するぜ!
俺は一晩かけてとても口にはできないノーマルな体験をした。
ファラ、遠くまで来たけど俺は元気です。ようやく君を満足させてあげられる立派な男の子になりました。
◇◇◇◇◇◇
とっぷり深まった夜。
シーツを掛けただけの裸身のアシェルは窓辺から月を見上げていた。黄砂のせいか真っ赤に染まったあの月は、おそらく彼女の故郷とよく似ているのだろう。
「ティトは繁殖を司る神、その愛は人のみならず虫も動物も魔物にさえも与えられる。子供の如き無邪気さで全てを愛するティトは愛し合い子を作る生き物を愛でる一方自ら子を為す機能を持たぬを不思議に思い、天を統べるオーディンに問う。他の神はみんな大人の姿をしているのにどうしてぼくだけ子供の姿をしているの? 子供の愛は分け隔てることのない真の愛、そなたは美醜を越えて優しき者達だけを愛しなさい。ティトは天なる父の言葉通り全てを愛し世界は愛し合う輪廻の中にあった」
やはりアシェルの語りは美しい。
澄んだ歌声が朗々と歌う神話の物語は、俺にまだ見ぬ神界の情景を思い描かせた。
「だが千年二千年と時砂を重ねる頃にティトは大いなる苦悩を抱いた。愛を囁けど天の女神には不能者と嘲られ、人は彼の言葉さえも耳にできぬ。ティトは愛を与えたがティトに愛を与える者はいなかった、即ち彼の幼神の苦悩とは孤独なり」
思い返せばティトのしつこさのそれは孤独のせいだ。
あの草原の夜、人恋しさに苦しんでいた俺の前にフェイが現れ、嫌われてもつきまとってしまった。誰もいない草原においてフェイの存在は俺にとってとても大きなものだったんだ。だからティトにとっても俺は、そんな存在なんだろうか……
無能神は言い過ぎたな。お前はやっぱり偉い神様だよ。
だってこんな百戦錬磨そうなエロいお姉さんを垂らし込むくらいのちからを与えてくれたんだからな。
「だがティトの孤独は長くなかった。雨に打たれる幼神を不憫に思い家に招いた人の娘セティとの蜜月の恋が始まった。ティトは瞬く間に恋に落ち二年の蜜月を得た。だが愛せども愛し合えども子の生まれる気配もなく、人は神と違って成長する。輝くばかりの美貌の少女となったセティと幼いままの自らの合間でティトは二つ目の苦悩を抱いた。ティトの苦悩とは何かわかるかい?」
おっと起きているのがバレたか。
聴いているだけでもよかったのにね。
「セティに捨てられるとか?」
「ちがうさ。ティト神が恐れたのは理さ」
「理…か。まいったな、大きいねどうも」
話の尺度が大きすぎてあいつの悩みなんて検討もつかないよ。
「神様の話してるんだ、想像もつかないのは当たり前さね。と言いたいところだけどそうでもないのさ。神が幾星霜を重ねようが不変にして無限なるも理であり、人が老いを重ねいつか必ず死ぬもまた理。男と女が愛し合うのも理であり、愛する者を失うもまた理さ」
「最後のは理かい?」
「二人もいりゃ必ずどっちかが先におっ死ぬもんさ」
からからと笑うアシェルには神秘性のかけらもない。
神秘を語り継ぐ巫女なのに陽気なところもステキだね。ギャップだねぃ。
「そんなティトに影が囁いた。お前は何も悪くない、悪いのは天の理だ、天の悪しきは全て父なるオーディンにあり。お前の協力あらば我れが父を殺し理を書き換えてやる。ティトは影の言うままに影を天界に引き入れた」
なんだってそんなことをしちまったのか……わかる気はするよ。
騎士になれと言われた。冒険者になんかダメだと言われた。でも誰かから言われたってそう簡単に諦められるもんじゃない。きっと、そんな程度の軽い気持ちだったのさ。
「影はティトとの約束の通り輝きの御座にあるオーディンを弑した。だが影は他の約束は守らなかった。憶万のアンデッドと女神を模した十二基のホムンクルスを従え、邪魔する神がいなくなるまで天を乱した。ティトは影へと懇願した、やめてくれ、話が違う、ここまでするなんて聞いてない」
軽い気持ちで始めた出来事が自分の手にあまるほど大きな出来事になり、泣き縋るティトの姿がありありと思い浮かぶよ。
とめたいのにどうしていいかわからない。
とめるちからさえないのに止めてくれって叫び続けるんだ……
「影の名はレザード、不遜にも天なる女神に恋焦がれた人の大魔法使い。影は天からアシェラを連れ浚い、人の身に女神を降ろして愚かにも睦み合うを求めた。ティトは怒りに狂い、天の要である神器を用いて理を書き換えた」
神話の語り部には相応に気力がいるのだろう。迷信深いアシェルならなおさらだ。大きく息をついて倒れ込んできた彼女は俺に甘えるみたいに胸にしがみついた。
「続きは? ティトとレザードはどうなったの?」
「さてね、その続きは神々でさえも知らないってやつさ」
おいそれはないだろう!? 超いいところじゃん、クライマックスじゃん!
ここでお預けって年末一時間スペシャルで完結するドラマかよ!
「アシェラ神殿は接触した神々からパズルみたいな欠片を集め、長い年月をかけて失われた神代の物語を集めてきた。中でもとりわけ終焉に関する資料は少ないんだ。神々でさえも正確には知らない、と言った塩梅さね」
ひでえ……
俺の好奇心をここまで高めといて作者失踪みたいなオチはひでえ……
「祭る神殿もない彷徨えるティト、彼の神と接触できれば答えがわかるかもしれないねえ……」
「それ暗に俺に聞いてこいって言ってるやつ?」
アシェルはすぐに寝息を立て始めた。
想像を絶するほど辛い過去を聞いた今、俺の胸にはある想いがあった。
あの巨根ショタ無能神じゃなくて不能神だったのか可哀想に。
神々の争いなどどうでもいい俺はアシェルの艶やかな髪を撫でながら眠る努力をした。三秒で眠れた。
ティト神の加護には副次効果として病魔や死への高い抵抗力やスタミナ値への高倍率の補正などがありますがアシェラ神殿の掟がありアシェルはそこの説明はしませんでした。
また加護を使いこなせるようになれば筋の良い士族に属する亜人系の魔物から一目置かれる、または従えることも可能ですがこの知識は神殿の禁忌に触れるのでずっと説明されないと思います。




