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スキル屋のルー

「俺もとうとう加護持ちかあ……」


 俺は念願の加護を手に入れたぞー!


 からのティトって何の神様やねん……


 レザードの怨霊を殺しにくるぐらいだから相当強い神様だろうな。見た目細っちいショタだし武術系ではないだろう、ならやはり魔法系かな? 


 いいねいいねティト神いいね。俺期待しちゃうよ。


 俺は万感の期待を込めてギルドに向かった。ギルドなら良いスキル屋さんを紹介してくれるだろう。


 期待からスキップしちゃうぜ、神様直々に気に入られて加護を貰ったのだ。こいつは絶対にダブルSクラスの加護だぜ、いやっふううううう!


 ギルドに行くとなぜかカトリたんが泣きながら酒を煽っていた。


「リリウス君に家出された……」

「一日で愛想尽かされたのは最短記録ね。そう気を落とさないの、新しい恋だって見つかるわよ」

「無理ぃ~~立ち直れないぃ~~~」


 そしてシシリーに慰められていた。


 そういえば忘れていたがダンジョン突入から丸一日経っていたね。普通に失踪認定されるレベルだぜ。

 だが任せな、何を隠そう俺はダブルS加護を持つ無敵のナイスガイだぜ!

 子供ぶって開幕から抱き着くぜ!


「カトリたん!」


「「リリウス君!?」」


「心配かけてごめんね、道に迷っちゃってさ!」


「「そうだったんだ!?」」


「王都広いもんね! 大変だったね!」

「あわわあわわ、だ…大丈夫だったの!?」


 いやいやチョロすぎだろ、ありえねーよ。

 五歳児ならともかく小六は丸一日迷子なんかならねーよ。てゆーか俺そんなアホの子に見えます?


「でもカトリたんと再会できて嬉しいよ!」

「あたしも(号泣)!」

「お姉さんも!」

「いやシシリーはなんでだよ!」


 二人がチョロくて助かったぜ。てゆーかシシリーさん完全に昨夜の記憶失ってますね。

 そんなこんなで大円団を迎え、ビールと果実酒で乾杯した後で尋ねてみた。


「鑑定屋さん知らない?」

「安いの?」


 鑑定屋はそのスキルに応じて金額も変わる。


 例えばCランク鑑定スキル持ちならBランクまでのスキルまでしか鑑定できず、他に何かスキルあるみたいな曖昧な表現となる。だがSランク鑑定持ちなら最高位のダブルSランクスキルまで判明する。当然S鑑定への報酬はけっこうなものとなる。ランダーギアにいたS鑑定のお姉さんは確か鑑定一回金貨三枚だったな。ファラのおごりで助かったぜ。


「安いのでいいよ」


 ダブルSが確定している以上知りたいのはティトなる神がどのようなちからを与えてくれるかだ。鑑定屋なら確実に知っているだろう。


「ルー!」


 シシリーが受付カウンターにいた同僚を呼びつける。


 浅黒い肌をした小動物系な少女が、頭に疑問符を浮かべながらとことこ寄ってきた。もしかしてこの子もジプシーなんですかね。とりあえずコートを脱いで待機するぜ。


「この子見てあげてよ」

「もうシシリーさんってば、うちの一族の秘術は宴会の見世物じゃないんですよぅ」

「いいからいいから。こないだお仕事代わってあげたでしょ?」

「も~~~、ほんとなら銀貨四十枚は貰うんですからね!」


 ということはB鑑定あたりかな?

 安いな、ルーは安い女だぜ。


「ふ…む……? 珍しい加護持ちですね、私初めて見ました!」


 はぁ~~~(クソデカため息)


 なんかもうクソスキルでがっかりしてたのが遠い昔に思えるぜ。


 ゴミみたいなスキルしかない俺さようなら。

 こんにちは無双チートスキルを持つ俺。


 世界の中心サン・イルスローゼで、俺の真の物語が始まるぜ!


「ティトの加護がなんとBです!」


 なんだと!?

 気に入ったとか言っておいてBだと!?


 嘘だろ嘘だろティト、お前あんな笑顔でBとかいうしょっぱい加護くれたんかいな!? ケチくせー! そういえばあいつカフェも俺に払わせたなケチ神だなケチ神!


「お…おい、あのガキがティトの加護持ちだってよ……」

「マジかよ……」


 だがなぜかギルドの男性冒険者どもが恐れ戦いてるぜ。

 その眼差しに尊敬みたいのが混ざってるけどやはりティトはすげー神様だったのか? Bクラスでも十分戦えるすげー加護なのか!?


「あの子ティト持ちだってさ」

「しかもBクラス(ゴクリ……)」

「きゃー、一度でいいからティト持ちに相手してもらいたかったんだー! あの子クランに入れようっ、ね、ね?」

「馬鹿! あたしんとこに入ってもらうわよ!」

「ちょっとあの子入れようって言ったのあたしが先でしょ!」


 え、逆に女性冒険者からは情熱的な眼差し浴びちゃってるけど!? 俺を巡って女達の醜い掴み合いが始まっちゃってるけど!?


 ティトあんた本当に何者なんだよ!?


 教えてルー先生。お前の安っぽい解説待ちだぜ。


「ん~と! 慈悲深きティトは人々を愛しております。神の愛に善悪はなく、特にティトは誰彼構わず愛することで有名です」


 そのツルツルペッタンペッタンなスタイルと一緒で、語り口調まで幼稚でストーリー入ってこねえぞ。さすが安い女だな。


「ティトが司るは本来繁殖ですが、人が知恵を得るとその本質は変化しました。愛する恋人達を応援するティトの権能は性愛。つまりティトの加護を持つということは男女の営みにおいて無類の強さを得るのです!」


「は?」


 おい、それだけか?


 つまりセックスが上手になるだけなのか?


「ルー頼むよ、お願いだから魔法力アップ的な効果がないかも教えてくれよぉぉお!」

「ありませんよ!」


 ちっくしょぉぉぉぉおおおおお!


 騙されたー! あのB級ケチ神に騙されたー! 気に入ったとか言ってストーキングしておきながらまさかのBクラスまではまだいいよ。だが加護の効果ひどすぎんだろゴミじゃねーか!


「ひどい言い草だなあ」

「ティトさん!?(ビクッ)」


 ひぃ、突然背後に現れるんじゃねえよ。

 へへ、先ほどの失礼な発言を忘れてくれるなら指の一本一本丹念にペロペロさせてもらいますぜ、へへへ。ワックスだって塗らせていただきますぜ?


「加護を与えた人間に文句言われたのはさすがに初めてだよ。わかった、ぼくも男だ、ちゃんと一番いいスキルをあげるよ」

「最初からそうしろ」


 セックス特化みたいなゴミスキル最初から与えんなし。


「加護を与える人間にこんなに偉そうにされたのも初めてさ。ま、そういう君を気に入ったんだけどね?」


 ティトが俺の胸板に触れる。今度は何をしているのか見えた。ティトの指先に集まる光の粒子が俺の中に流れ込んでいる。すげえ、すげえ力を感じるぜ!


「今度こそバイ、君の人生に幸福のあらんことを」


 ありがとよティト。


 神との対話という恐るべき偉業を成し遂げた俺を待っていたのは……

 明後日の方向を向いてブツブツ独り言いってる可哀想な子供というレッテルだった。


 そういやこいつ俺にしか見えてねえんだった。くそ、どうせ心読めるんだから口に出さなくてもよかったんじゃねえか。失敗した失敗した失敗した。


「り、リリウス君どうしたの? もしかして転んで頭打ったりなんか……」


 そんなおそるおそる聞かんでもええがな。


 でもカトリーたんええお姉さんやな、これが俺の腹筋狙ってる変態じゃなければな。


「ルー、もう一度俺の鑑定をしてくれ」

「だから銀貨四十枚貰う秘術なんですってば。そうそう気安く秘術の安売りなんてできません(プイッ)」

「そういうなよ安い女」

「誰が安い女ですか!?」


 怒鳴った後で俺を凝視し始めたルーが尻もちを着く。いや君のパンチラとかいらんがな。


「うそ……私の鑑定スキルを越えちゃってる?」

「どういうこと?」

「知りませんよ、ただ急に私のスキルでは見えなくなるくらいティトの加護が増大したとしか…………でも、でもそんなことはありえないし!」


 いいね、その理解不能な強者に怯える視線じつにいい。

 優越感ってこういうことなんだな。頂点からの視点ってこういうものを言うんだな。


「ふっ、ルーお前のような安い女じゃ俺の最高のスキルは見えねえぜ。早くS鑑定を紹介しな」


「おや、あたしをお呼びかい?」


 やけに聞き覚えのあるエロい声だな。


 振り返れば、やけに布地の少ない煽情的な民族衣装のエロいジプシーのお姉さんがギルドの入り口に立っていた。あー、名前出てこねえけど去年の夏に帝国で会ったお姉さんだ。


「アシェル様!」


 そうだアシェル・アル・シェラドだ!


「鑑定はあたしら一族の血の一滴。求めるなら相応の対価を……(ビクッ!?)」


 この人いつも俺に怯えますよね、こんなに可愛い可愛い妖精さんなのに。一部では悪魔という仮説もあるけど。


 アシェルさんは俺の顔を見るなり腰を抜かし、はわはわ言いながら……おいコラ逃げるな。


 四つん這いで逃げるアシェルの足を掴んで引くと……泣いた!? なんで!?


「勘弁しておくれぇ! 坊やの面だけはもう見たくなかったんだよぉ!」

「ええい観念して大人しく俺を鑑定しろぃ!」

「うわーん、ぜったいにやだー!」


 だだっこか!?

 恐るべき事実であるがギルド内の面子は前話と変わりがない。

 バトラの目線から見たシリアスな世界とリリウスの目線から見るコミカルな世界の落差。

 両者の精神性に大きな差があるゆえでしょう……

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― 新着の感想 ―
[一言] ええ・・・本当にご立派様だったのかよ
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