リターナー・リベリオン②
北の森の攻略を断念したわたくしリリウス・マクローエンはファトラ君から貰った隠れ家に潜みつつ、復調を待つ日々である。
今回ばかりはさすがにダメージが大きすぎた。オーヴのルナちゃんに治療してもらいながら、二日ばかりのんびりした。
その間もドレイクが通い続けてくれる。書類上この民家は彼の魔導工房になっており、頻繁に出入りしても怪しまれないのである。
天上の争いとは無関係な木っ端役人の息子が中層街に持つ小さな家だ。騎士団だってノーマークってわけだ。
ドレイクの役割は俺への差し入れだ。食材やら薬やらを配達してくれるのだ。
今日もドレイクがやってきた。新型スカイグライダーの図案まで持ってこなくていいんだぞ。意見も聞いてこなくていいんだぞ。
ドレイクは差し入れを置き、世間話も置いていく。
「知ってるか、ラサイラで動きがあったらしい」
「ラサイラで? なんで?」
「一昨年まで生徒会会長をやってたサフィーノ王女殿下が収監されてるからな。解放しろってデモをやってるそうな。うちの学校にも参加してほしいってビラを撒いてたぜ」
「ふぅん」
ドレイクが一枚のメモ用紙を差し出してきた。ファトラ君からのお手紙だ。
騎士団によるラサイラ生鎮圧事件は彼の世界においても起きた事件のようだ。約二日間にも及ぶ激しい騒乱になり生徒側に死者27名が出る。現生徒会長マウザー・ディスワードの死亡によりディスワード男爵が政権に強い不信感を抱くとある。
ディスワード男爵は黄金騎士団の重鎮だ。加えてシュテルの盟友でもある。
見殺しにした方がアルシェイス派が困りそうなもんだが、お手紙が来たってことは助けろって事だろうな。
「美人か?」
「一目見れば恋をして、二つと見れば杖を捧げたくなるって有名な才媛だぜ」
「そいつはいいな、本当に恋にしちまうかどうか一度拝んでくるとしよう」
「ついでに格好いいとこ見せてこいよ」
ミッションスタートだ。
迷宮化した森の中で②の後書きに人間不信スキル解説を追加しました。
タイミング的にあそこが一番いいと今更気づいたのです。ご興味のある方は戻ってみると、コーネリアスやクラウ戦での苦戦の理由がわかるかと思います。