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迷宮化した森の中で①

 夜の森は真の暗黒に閉ざされ、見えるものは存在しない。

 俺の前方二メートルの位置で相対位置固定した灯火の魔法も意味をなさない。梢に揃った葉も大樹の幹も何も見えない。まるで森全体が暗黒の色のついた霧に覆われているようだ。


 風に乗ってくる邪霊の笑い声が薄気味悪くて最低だ。俺達で遊んでいるつもりか?


「ハゲまじで知らないの? ただのダークゾーンだぞ。ほら、デスきょがよく使うあれ」

「当たり前のようにデス教団の技を知ってる前提の話をすんな。要人暗殺のエキスパート集団なんか知るか」


 ほんとは昔ちょっとだけ揉めた事があるけどこんな技見たことない。

 下水道に死の町を作って住んでるの見つけたから泥棒してただけだ。あいつら金持ってるんだよなウケケケ。


「そなの? じゃあなんでデスきょのブラックリスト載ってるの?」

「え、俺ブラックリストに載ってるの?」

「載ってるどころか教敵として優先暗殺対象の扱いだったけど……」


 下町の宿に泊ってる時にも度々刺客が来ていてベティが適当にあしらっていたらしい。


「しつこいもんだから王都の下水道にあるデスきょのアジトに潜入したんだけど」

「そこまでの大冒険をするなら俺にも声をかけろ」

「アビーに夢中だったし悪いかなーっと思って」


 そういう時期もありましたっと。

 俺の名誉のために本件に関しては黙秘させていただく。


「アジトに潜入したらデスきょが呪殺儀式やっててさ。生贄を七人と祭司までいたしハゲも死んだかなーって思ってたらあいつら勝手にバタバタ倒れてったん。仕掛けた呪殺がハゲの魔法抵抗力に弾かれて返ってきたんだ」


「そういう事は報告しろ」

「だってあれ以来大人しくなったし。アジト全滅したし。呪殺返しで死んだデスきょから死返しが飛んでいってまた返ってきてとえらい事になってたし。あれ絶対かなりの巻き添え起きてるし」


 なんてはた迷惑な連中なんだデス教団。俺は悪くねえ。


「やっぱりデス教団の復讐か?」

「死霊術師がいる時点でそう判断したけど、冥府の王に捧げるはずの貴重な改変力に手をつけるかな? これデスきょからしたらかなりのタヴーだぞ」


「つまり俺という強敵を倒すためになりふり構っていられなくなったか」

「どうだろ。ローゼンパームの隠し神殿を全滅させるような敵なら禁じ手を使うかもしれない。でも神への供物に手をつけるのってハゲが考えてるより大きな話だよ」


「何が言いたいんだよ」

「命令が上から出ているかもって話。最高司祭とかその辺りの大物じゃないと―――」


 ベティの声が不自然な途切れ方をした瞬間に前方に違和感。

 沈黙のフィールドだ。ってことは足音や茂みを掻きわける音を隠して襲撃が来るな。


 手強そうなリビングデッド・ソルジャーが五体同時に掛かってくる。ベティを背後のサポートに回して鎧袖一触で打ち破る。……今のかなり危なかったな。


 剣士二人に重装甲歩兵三人の危険な構成ってのが闇夜の奇襲をよく理解している。対処できずに圧殺されてもおかしくなかった。


 ベティが俺のケツをスパンスパン叩いて注意喚起。沈黙のフィールドのせいで声は出ないが「まだまだ来るぞ、気をつけろ」ってとこか。


 左右から暗闇の属性のマジックアローとかいう雑魚が使ってきたらメーカーに電凸必死の大炎上間違いなしの飽和攻撃がやってくる。まぁ魔法抵抗力の高さで弾けたわ。アンデッド魔導師ならこんなもんだろ。


 未だ姿を見せぬ死霊術師の操り人形どもの襲撃を退け、前進を続ける。


 死霊術師も自身の位置隠蔽はやっているが俺とベティを出し抜けるほどじゃない。並みの戦士なら死霊術師が目の前に居ても気づけないだろうがな。


 死霊術師発見。距離は40メートル先の枝の上。練習中のあれやってみるか。


「――――!(食らえ、必殺のクラウ・ソラスじゃボケぇえええ!)」


 なんとわたくしリリウス・マクローエンは鍛錬を重ねる事により超級攻撃スキルを使えるようになったのである。シェーファには「投擲スキル持ってない奴のクラウ・ソラスはコスパ悪いぞ」とか言われたけど気にすんな。超級スキルは憧れだったんだ。


 アロンダイクの大戦斧が射線上の木々をダイナミック伐採しながらネクロマンサーへと迫る。

 ネクロマンサーが大慌てで地面に降りた。回避された大戦斧がブォンブォン言いながら飛んでいき……


 夜の刃を束ねた腕でキャッチ&流星落としだ! ネクロマンサーの胴体が真っ二つ! 勝った!


 と思った瞬間にアンデッドソルジャーの大軍から奇襲を受ける。第一波は切り抜けたけど囲まれてるぜ。……森一個迷宮化させておいて術師が一人ってわけはねえよな。


『やるじゃないか、クラッスス家門の死霊術師を苦もなく倒すか』


 思念がやってきた。

 腐肉のような汚らわしい思念には覚えがあるぜ。


『コーネリアス・レイダー……俺が殺しに行くのを待ちきれなくなったか?』

『まぁ待てども待てども来ないってのは気分が悪いしね。でも今回は別件さ』

『別件?』


 祈りの都のオースティール魔導学院に潜伏するコーネリアス教授は大罪教徒だ。私怨でなければ組織の命令か。


『別件は別件さ。無論どういうところから命令が出ているかを教えてやるつもりはない』


『ではどうして声を掛ける。無言でかかってくればよかっただろ』


『キミには痛い目に遭わされた事もあるしそれは味気ない。まぁ特別言いたい事があるわけでもないが―――精々苦しんで死んでくれ。苦しみが長いほど、怒りが強いほどゴーストは強いちからを持つ! 死後の安息なんて生温いものはあげないよ。擦り切れるまで丹念に使いつぶしてあげるよ!』


『その種の雑魚っぽいセリフは死亡フラグだぜ?』


 アンデッドソルジャーどもが一斉に襲い掛かってくる。

 馬鹿なやつだ、長い会話のおかげで歪曲空間による物理反射フィールドは完成してる。そういうところだぜコーネリアス。お前が俺に勝てないのは傲慢さから来る余裕のせいだ。


 祈りの都ではゾルタンの横槍で逃がしたが、今回は確実に仕留めてやる!

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