シェーファの想い 道を示すため
ルーデット卿と一緒にドンの家に帰ると、何やら仲間たちが勢ぞろいしていた。
逸早く俺らの帰りに気づいたシェーファが嫌そうな顔になった。嫌な奴と出くわしたって顔だ。
「なんでルーデット卿を連れてきているんだよ。追い出せ」
シェーファが中指立てて卿を挑発。やめれ。
そしてフェイまで失礼発言をする。そういやこいつルーデット卿と会った事なかったわ。
「誰だそのオヤジ?」
「恐ろしい発言と態度二連発はやめなはれ。カトリパパだよ」
フェイが驚愕する。
「あ…姉御に父親なんて人間らしい存在がいたのか……」
「いるに決まってるだろ。木の股から生まれてきたとでも思ってたのかよ」
「……少なくとも人の腹から出てきたとは考えていなかった」
マジっぽい風評被害もやめれ。
ルーデット卿の登場で場はシーンとしてる。ユイなんてずっと顔を伏せて身動きもしない。一時はアンセリウムで売られかけたしな。トラウマだろ。
カトリがいなくなったことをみんなに説明する。シェーファが代表して質問してくる。
「で、どうするんだ?」
「ライアードにお願いして養子縁組してもらうさ。なぁに奴には貸しがある、嫌とは絶対に言わせないぜ」
「即位したばかりで地固めが急務の新皇帝が外国人の冒険者を皇帝家に引き入れるわけがあるか」
俺が全力で考えたプランを秒殺するのもやめろ。
「馬鹿なことを言ってないで私の相談に乗れ」
「相談って何だよ」
シェーファがクロノスを引き寄せる。蜂蜜を小壺で買ってもらったらしいクロノスは大人しく蜂蜜を舐めている。父ちゃんお前のそういうところだけは心配だよ。
「確認だがこいつはスキルを消せるんだよな?」
「そいつは確かな話だ」
「クロノスにはすでに話を通してある。だが一応君にも了解を得ておきたい」
「大仰だな……」
こうなるとこの場にいる誰かのデメリットスキルを消したいって感じじゃない。もっと面倒くせえ危険度の高い案件の相談事だ。
「誰に使うつもりだ?」
「加護の呪いに蝕まれ余命幾許もない我が友イルドキアの呪いを解いてやりたい。彼は私と同じだ、大昔の何者かの都合に運命を捻じ曲げられた可哀想な男なんだ」
あぁそうか。
お前もそうなのか。そう考えていたのか。
神のちからなんて重荷を背負わされた事に苦悩し、それを呪いだと、可哀想だと考えているんだな。
闘争の運命から逃げる道もある。お前も逃げていいんだと示すためにもやり遂げないといけない依頼だな。
「コッパゲ先生、危険度はどんなものですか?」
「砂の魔獣ザナルガンドは加護ではない。呪いでもない。あれは砂の血統に寄生する宿主タイプの怪物なんだ。取り除くことはできる。だが無意味だ。アシェラ様がどうして砂の脅威を把握しながら根本的な解決を行わなかったか、それがこの行いの無意味さと困難さを物語っている」
コッパゲ先生がイルドキア延命の方法を教えてくれた。
その困難さが無謀を通り越して不可能である事と、誰にもできない事も含めて。
だが全てを聞いたシェーファはそれでもやると言った。俺も言葉を覆さなかった。彼には借りが幾つかあるしな。
方法はいつも通りさ。砂のイルドキアを救うため、砂の魔獣ザナルガンドを倒すのだ!




