敗走、そして目的地への到着
里の様子はもう人がエルフがとか言っていられる状況ではなかった。
俺とフェイは手分けをして生き残ったエルフを助けて回り、燃え残った住居(おばばさまの住居だけ無事だった)に移して手当をして回った。等級は低いがフェイが回復魔法を使えるのは助かった。
二日ほどの救助活動の結果判明したのは元は百人程度が暮らしていた滾々と湧き出る泉の里の人口は男性二名、女性三十四名まで減少していたという目を逸らしたい現実。レテの親父さんは無事だった、どうやらおばばさまの家で酔い潰れていたらしい……
俺達は多少の感謝を頂戴しながら、救助活動も一段落し、他の里からも応援が来だした夜にステルスコートを使って出ていった……
感謝を口にされる度に己の罪が自責なり押し寄せてくる。助けたはずなのに数時間も立たずに息を引き取る者を見れば己がどれだけの罪を犯したのかと苛まれる。
心が限界だった……
なお戻ったらフェイの馬の黒竜号は魔物に食い散らかされていた……
ひでえ。
「僕の黒竜号がぁあああああああああああああああ!」
お空の星になった黒竜号の在りし日の雄姿を思い浮かべる。
さようなら黒竜号、お前の鈍足は忘れないぜ。
「ユークリッド大樹海ではひどい目に遭ったよ……」
「全部お前のせいだからな!」
「アクセルのやらかしは俺のせいじゃねえよ!?」
不毛な争いを続けながらの近場の町へ。宿を取り俺達は泥のように眠った。
明け方、宿をこっそりと出たフェイは近隣の農村から野菜を売りに来た農家に話をつけて馬を売ってもらう商談を取り付けていた。
荷馬車に乗って農村まで向かうフェイと、透明化してこっそり荷台に載ってる俺。
逃がさないぜ!
俺達はズットモだぞ!
ユークリッド大樹海の大惨事からはや三ヵ月半。
中央文明圏に入った俺達はとうとう世界一の超大国サン・イルスローゼの王都ローゼンパームに到着した。四月の始めに帝国を出て、十月手前に到着したから約半年の旅だった。
別名を空中都市と呼ばれるローゼンパームは二層構造。裾野のように地上に広がる猥雑な下層街と、浮遊する諸島の上に造られた上層街。魔法大国の名に相応しい王都である。
鎖で大地に縛り付けられた標高300メートル程度の上層街までは石の橋が架けられ、馬車や飛竜が行き交っている。ファンタジーすぎる。
でもベルサークの後だから感動が三分の一くらいだ。
下層街とはいえ世界一の大国の下層街だけあって素晴らしく文明的な都だ。一歩踏み入っただけでテンションあがってきたぜ! おいおいフェイのやつ泣いてやがる。そんなに嬉しいのか、可愛いやつだな。
「ふぐ、ぐ……この疫病神と縁が切れると思うと涙が」
可愛くない野郎だぜ、死ね。
「フェイ」
「リリウス」
互いに別れの握手を交わし……
「「死ね!」」
罵倒してから互いの道を歩き始める。男の友情なんてこのくらいが丁度いいのさ。
っと、俺もそっちだからすぐに引き返してフェイの後ろを行くぜ。でも気まずいからカフェにでも入ってお茶を楽しんでからにしよう。
茶葉の良し悪しなんて何もわからないがいい茶葉使ってるね!