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悪役令嬢の手下Aだけど何か質問ある?  作者: 松島 雄二郎
竜の谷 死竜の迷宮 編
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野良犬 VS バトラ

 弟との対決を決意したバトラ。

 負けられない戦いを前に、ふと思い出したのは故郷での出来事である。

 積雪に閉ざされた極北の地マクローエンは冬の日。春の訪れを感じながらも一向に溶けない積雪と、昼間なのに夜のような曇り空。


 昼夜の区別も曖昧な日。何気なく玄関に降りると父上がいた。リリウスとファウスト兄貴もいる。


 遊びに出かけるという雰囲気ではない。父は聖銀の鎖かたびらを編み込んだコートを羽織っている。袖の厚みを見れば手甲や脚甲のような鎧まで装備しているのは明らかだ。


「父上どちらに行かれるのですか?」

「リリウスが森の深部で巨大な蜘蛛を見つけた。瘴気の谷の魔物の可能性もあるんでな、ちょろっと片づけてくるよ」


 散歩にでも行くような言い方だ。

 バトラは父が戦装束を着こんだ姿を見たことがなかった。父ファウル・マクローエンはこの地における最大戦力だ。魔物の群れなど笑いながら蹂躙する最強の男だ。その父がきちんと備えをするとは珍しい。この時はその程度にしか思わなかった。


「俺も行きます」

「ん? ……バトラは屋敷を守ってくれ」


 同行を断られるなんて微塵も思わなかった。

 父上の傍にはファウスト兄貴とリリウスがいる。なのに自分だけ行けないなんて……


「屋敷にいるアルドと母様を守ってやってくれ。これはお前にしか任せられない」

 父は優しい理由を口にした。


「バトラ、私達が敗れた後の処理を任せる。バイエル辺境伯を頼り、バートランド公の派兵を願うのだ」

 すがるように目を向けた兄から拒絶のようにそう言われた。


「バトラ兄貴はこない方がいいよ。あれを相手に守ってやる自信はない」

 格下だと思っていた弟から屈辱的な扱いを受けた。


 バトラは食い下がるように、最後の矜持を守るように父へと問いを投げる。


「俺では足手まといですか」

「そうではない」

「じゃあ何でリリウスには同行を許すのですか」

「発見者だからだ。そうでなければ幼い我が子を瘴気の谷の魔物のいる場所になど連れて行かない」


 父は優しい。あまりにも優しすぎて痛いくらいだ。

 だから兄貴が言ってくれる。厳格なファウスト兄貴は事実を曖昧にしない。厳しいが誰よりも家族を想ってくれている、そういう人なのだ。


「リリウスなら最低限逃げ帰れるという算段だ。今回の魔物は大物だ、私とて確認以前のこの段階では交戦許可が降りていない。実力的に劣る者を連れて行く余裕はないのだ」


 はっきりと告げられたちからの差。

 拳を握りしめるバトラは北の空へと飛び立っていく三人を家族を睨み上げながら、忌々しいこの想いを吐き出した。クソッタレの一文字に込めてだ。



◇◇◇◇◇◇



 リリウスの手の内ならわかっている。百を数えるほどにやり合ってきた。圧倒的なスピードで敵をかく乱するバトルスタイルで、技能面は子供のように稚拙だ。攻勢に回ると凶悪だが受けは苦手。


 片手斧で切り込んできたリリウスの攻撃を渾身の一撃で弾き返し、バトラが攻勢に出る。


(さあ消えてみせろ。潜伏魔法を行使したお前は必ず背後に回る。その瞬間こそが俺の勝機だ!)


 劣勢に陥った弟は必ず消える。勝機はそこしかない。弟が保有する最大の脅威はハイド&シーク。誰にも見破れない潜伏魔法だ。何人もの冒険者達がこれに破れてきた。……当然これへの対策を練ってきた。リリウスに勝利しようと思えばステルスコートを見破る手段は避けて通れぬ最難関だ。


 だがバトラはリリウスの呼吸を知り尽くしている。直感と経験で背後に回るタイミングを見抜く程度できないはずがない。


 しかしリリウスは消えない。勇敢にもバトラの猛攻に応じ手を繰り出し、しのいでいる。

 リリウスは強くなっている。以前のこいつなら全力の振り落としには抗えなかったはずだ。力点をズラして受け流す技なんて使えなかったはずだ。


 バトラの剛力と真正面から打ち合い、鍔競り合いに持ち込むなど不可能だったはずだ。


「透明化はどうした、俺ごときには使うまでもないか?」

「そんな余裕はないよ」


「本気で来い。全力を出せ、俺の知らない技があるなら使え! 俺は知っているぞ、お前が本気を出せば俺なんか敵ではないと思っている事をな!」


 魔剣を振り抜いてリリウスを弾き飛ばす。羽根のように軽い手応えだ。剛力を受けるのではなく先に後ろに飛ぶことでいなしたようだ。


 だがこれは紛れもなく弟らしい戦闘行動だ。不利を悟ればとりあえず距離を取る。透明化の予兆のような行動だ。


 これを先読みしていたバトラがリリウスが飛び退る速さを上回る速さで先回りする。


「お前は劣勢になれば必ず距離を取る。悪癖だぞ!」


 だが予測は外れどころか覆る。飛び退りながら空中を蹴ったリリウスが弾丸の速度で突進してきて、バトラの顎に膝蹴りを入れたのだ。バトラはさほどの痛みも感じなかったが脳が揺れたのか足運びに迷いが出た。


「ぐぅっ」

「距離を取れば必ず最速で詰めに来ると思っていたよ」

「はっ、悪癖は互いに承知ってわけか!」


 ふと言葉遣いに稚気が混じる。

 今バトラはグランナイツのリーダーではない。バトラ・マクローエンとしてここにいるのだ。


 リリウスが攻勢に出る。バトラも攻勢に出る。ガードは不要だ。互いに攻撃の先にこそ勝利がある。防御なんて生易しい選択肢は彼らの間には存在しない。昔からこうやって互いを高め合ってきた。


 数年の時を置いての今回の決闘はかつてのようにはいかなかった。

 バトラの剣はリリウスまで届かない。魔剣ラタトゥーザは空を切るだけ。積み重なる痛みの中で振るった剣はリリウスの影を斬るだけだ。


 リリウスのスピードは圧倒的だ。知覚を凌駕する速度で連撃が飛び交い、目では奴の姿を捉えられない。黒い影と戦っている気分にさせられる。


「兄貴は強い戦士だ、格下だなんて思ったこともない!」

「そうか? 俺はずっと思っていたぞ。本気を出せば俺の方が強い。殺し合いなら俺が勝つ。お前など俺の敵ではないと!」


 バトラが大振りと見せかけてからの小手先の四連突きを繰り出す。カンカンと軽く弾かれた後はカウンターで腕を斬りつけられた。だが聖銀糸を縫い込んだシャツの袖は斬撃を通さず打撃にしかならない。


 攻撃は通らない。そう見抜いた弟が四連突きの四発目に合わせてバトラの顔面に手斧のみねをたたき込んできた。鼻血を噴き出したバトラだが攻撃の手を休めない。


「だが現実はこれだ! 俺の全力でもお前には届かない。磨いてきた技が意味を為さない。現実にこれがお前と俺の差だ! 俺は何だ!?」

「何って……」


 戸惑う弟が初めて隙を見せた。だが意味のない隙だ。バトラのスピードでは弟の知覚を出し抜けない。いま攻勢に出てもカウンターを貰うのがオチだ。


 格がちがうのだ。万に一つの奇跡も起こり得ないほどの実力差だ。……そんなものは初めからわかっていた。


 無敵艦隊総艦長ライアード・バーネット。アシェラの悪徳信徒グリードリー。イルドシャーン王子の英雄の兵団。イルスローゼを襲った大罪教徒。どれを取っても第一級の戦果だ。この内一人にでも勝利すれば英雄の資格ありと見做される大物ばかりだ。

 弟の手柄話を聞く度に、この胸に疼いたのは羨望だ。


 弟は世界を股にかける大戦士なのに兄はどうだ? 太陽の片隅で細々と暮らしている木っ端冒険者だ。Bランク冒険者になれば貴族からも一目置かれる? 弟はすでに太陽の王家から目をかけられ、五大国の王族とも知己を得ているのに?


 かつては孤独だった弟の周りに人が集まり始めている。たかがクランハウスの転居パーティーだというのに獣の聖域の王侯が集い、AやSランク冒険者が祝いに来、S鑑定まで遊びに来ている。ラサイラの教授や名高き銀狼の長までもだ。


 何よりルーデット卿に認められている。貴族にとって娘を差し出すというのは最大級の賛辞だ。お前だけは敵に回したくないという公表に等しい。


 王都三大クランのトライデントやグランドマスター・ブラストからも祝い酒が届くような弟の兄がこの様など誰が信じる?

 納得などできない。他ならぬバトラこそが一番納得できない。


「お前にとって俺は何だ? 弱く頼りにならない兄でしかないのか?」

「そんなことないよ」

「本気も出さずにか?」

「手加減なんて……」


 つまらない嘘だ。嘘というつもりさえ無い無意識の侮りだ。

 弟にとって最大の武器であるステルスコートを使わない。これが侮りと言わずに何と言う!


「俺は全力で来いと言ったはずなのにちからを隠しやがって。俺はお前にとって全力を出す価値もないのか!? 全力で来い! 俺を兄だと思ってくれるなら本気を見せろ!」

「……まいったな」


 弟の全身から妖気が溢れ出す。

 戻ってきた時も感じたがリリウスの放つ邪悪の気配がさらに増している。耐性のない者では目線を向けることさえ苦痛なほどだ。反射的に目を逸らし、通り過ぎるのを待ちたくなるような威圧感には覚えがある。

 ハイエルフの女王ウルドの気配だ。これに似ている。


「魔王の呪具を使えってわけだ。……強すぎるから嫌なんだよ」

「武器だってお前のちからだろうが」


「最近はそう開き直りもしてきたけどさ、これは俺には制御し切れないちからなんだ。身内に向けるのは本当に怖いんだぜ」

「俺だって似たような魔剣を使っている。俺には応えてくれない不義理な魔剣だがな」


 苦笑する弟の姿が変わる。深い夜の色合いをしたコートが肉体に巻き付き、肉体をギリギリと締め上げていく。無数の包帯で全身を隅なく締め上げていった姿は全身甲冑を装備しているかのようだ。


 弟のバトルスタイルに合わせたようなスマートな姿だ。敏捷性を活かす形で足りない防御力を補ったと見るべきか?


 自前の手斧を大戦斧に変形させたリリウスが何度か素振りをしている。筋力の増強もあり、使い勝手に出た違和感を修正しているのかもしれない。


「兄貴、一つだけ忠告しておく。まずはガードに徹してくれ」

「わかった」


 バトラが受け太刀の構えを取る。リリウスが突進前のイノシシのような低い体勢になる。バトラがリリウスの姿を捉えられたのはここまでだった。


 次の瞬間には全身を貫く強烈な衝撃と青い空。気づけば青空を仰いだまま呆然としていた。

 クランハウスの周囲を流れる水路の中で、ただただ呆然としていた。


 見上げれば塀に空いた大穴から弟が顔を出している。随分と心配そうな顔をしてくれるもんだ。


「生きてるよな?」

「納得がいった」


 弟が不審そうに顔を歪ませる。


「何の納得だよ」

「さて何のだろうな」


 納得した。俺は戦士としてリリウスには敵わない。

 納得がいってようやく言える言葉がある。もし戦いもせずに口にしたなら、バトラは一生後悔したはずだ。


「クラン『ゴッドイーター』だったな?」

「お…おう?」

「格好いい名前だな。俺も入れてくれよ」

「兄貴!」


 弟が手を差し出し、兄が弟の手を取って立ち上がる。

 感動的な拍手が二人を包んだ。


 その余韻も残る頃にだ、ルピンがこんな事を言い出した。


「リリウス君と戦えばクランに入れるのかい?」

「ルピンさんあんた引退してるんじゃ……」


「僕は現役のつもりだよ。大冒険もだいたいやって飽きたと思っていたんだけどね、リリウス君のクランならまだ見ぬ冒険ができそうだ」


 ルピンはそう言った。でもリリウスは信じていない顔をしている。


「大師ブラストから俺の監視でも命令されているんですかね?」

「協力しろとは言われたね。冒険者ギルドはリリウス君の後援を正式に決定した。その第一段として僕が派遣されたと考えてほしい」


「監視は?」

「不利益な報告はしないと誓おう」


「そんならいいかな。加入目的なら戦う必要はないけど……やるんでしょ?」

「うん、僕も君の実力には興味がある。連戦で悪いが疾風ルピンのお相手を願おう」


 弟がそのままルピンと戦い始めた。イルスローゼ最速の冒険者を自称するルピンとの激戦は大地ではなく空が舞台となる。


 空渡りを駆使して戦い合う二人を見上げていると、嫁さんが寄ってきた。バトラ自慢の料理が下手な嫁さんだ。


「最初からこの形にするつもりだったんでしょ~~」

「よせ、俺は本気だった。本気でぶつかって負けただけだ」

「じゃあ勝ってたら?」

「俺に負けるようじゃ不安だから守ってやったさ」

「なるほど、いいわけが変わるだけか。いつから?」


 その質問には多くの意味があるふうに思えた。

 相談もせずグランナイツを解散させて弟のクランに入った理由とか色々。彼が何に思い悩んでいたかも含めて色々。ラトファも察しはできても言葉が欲しかった。


「クラウがいなくなってからだ」

「そっか」


 クランの火力を担っていた魔導師の欠落はグランナイツに大きなダメージを与えた。これまで難なくこなせていたクエストで苦戦するほどのダメージだ。

 バトラは欠員を埋めなかった。大切な仲間の代わりになる奴なんていないからだ。

 グランナイツの魔導師はクラウだけだ。代わりなんていないし、要らない。


「リリウスの敵は大罪教徒だ」

「うん」

「連中と戦っていればクラウの消息も掴める」

「なるほど」

「……あっさりした返事だな?」


「そりゃあね。うちの魔導師枠はクラウしかいないもん。最初から連れ戻すつもりでしょ?」

「おう、勝手に抜けるなんてリーダーとして許せないからな」


 バトラは最初からこうするつもりだった。クラウを取り戻すために活動域を広げる必要がある。そこはリリウスのフィールドだ。


「クラウを取り戻す。グランナイツはそれまで活動休止だ。……勝手に決めてすまない」

「ふふん。オーケイ、リーダー」


 満面の笑みを浮かべるラトファはいい女で、足りない自分をいつも支えてくれる。まったくいい嫁を掴んだものだと笑みしか出てこない。


 しかしリリウスとルピンのバトルは長い。もう数分は経っているのに未だ終わる気配すらない。


 あの戦いを見上げるフェイは感じ入るものがあるようだ。抑えきれない闘争心の高ぶりを固めた拳で示しながら、じぃっと睨み上げている。その姿に興味を抱いたのはユイだ。


「どうしたんですか?」

「リリウスは変われない奴だと思っていた」


 フェイの目に映るリリウスは臆病な少年だった。強い者に怯え、弱い者には強気に出る、そこいらに転がってるチンピラも同然の少年だ。そのくせ戦えば誰にも負けないほどの強さを持っていた。


 フェイが知る限りではリリウスが勝てなかったのはハイエルフの都を守護するハゲ人狼くらいのものだ。


「身の丈を知るのは悪いことじゃない。ただリリウスは自身のちからからすれば臆病すぎた。病が付くくらいだ、心の病気か何かだろってずっと考えていた。あいつはいつも言っていたよ。強くならなくちゃってな。僕にはそれが自分に呪いをかけているふうに聴こえていた」


 ジベールで再会してからのリリウスは妙に焦っている気がした。強くなろうから強くならなくちゃいけないと変化した想いが心身のズレとなり、不安定な感じがしてどうにも気味が悪かった。


 リリウスはたまに馬鹿だが本質的には賢明な少年だ。勝てない戦いはしない。勝てる相手、無礼を働いても怒らない相手、相手を見て行動する保身に長けた部分だけは感心していた。


 だから保身を捨て去ったあいつがすぐに死にそうな気がして怖かった。


「臆病な性質はそう簡単には治らないようだ。口では何と言っていても必ず臆病で慎重な選択をする。……あいつはそれを間違いだと嘆き、選んだ後にいつも後悔して自分を罵倒していた」

「なんて?」


「ふざけんな臆病者、死んでしまえって自分にな。怖いだろ?」

「独り言としては怖いですね」


「そうじゃない。僕が怖かったのは、あいつがいつか自分の命を投げ出すような無茶をしでかすんじゃないかって怖かったんだ」


 長い時をリリウスと過ごしてきた。

 あのレンテホーエル大平原で出遭った少年とたくさんの冒険を成し遂げてきた。時の止まったハイエルフの都で修行だってした。そういう時を過ごした仲間に起きた奇妙な変化がどうしようもなく怖かった。


 フェイが怖かったのはリリウスの不安定さもあったが、リリウスに置いていかれるのも怖かった。

 実際は逆で恩寵符のちからで体術SSスキルを得たフェイが先にいった。生じてしまったちからの差ゆえに先にいかなければいけなかった。

 フェイはこれに心苦しさを感じていた。


 共に歩むはずだった苦難の道を一人だけズルをしてショートカットしてしまった。そういう気持ちだった。だからリリウスをどうにか引き上げてやりたいと考えていた。


 しかし上空で戦うリリウスのあの姿はどうだ。ルピンは紛れもない強者だ。本人は引退したなんて言っていたがSランクの号に相応しい武の到達者だ。経験と技能、身体能力のどれをとっても未だフェイの届かぬ頂にいる。リリウスが互角にやりあっているのはそういう男なのだ。

 その姿を見上げるフェイは誇りさえ抱いている。


「あの臆病なリリウスがいまはどうだ? バトラを完封し今はSランカーを相手に堂々と戦っている。軟弱だったあいつの心身には意思と気迫が満ちている。常に逃げ道と正道の間をうろうろしていた意思薄弱なリリウスはもういない。あいつは己の呪いに打ち勝ち、ウェルゲート海の英雄となる道を選んだのだ。……僕も負けてはいられないな」


「素直に喜んであげないんですか?」

「馬鹿を言え。僕にも兄貴分としての矜持がある。リリウスが英雄になるというのなら僕はその先にいなければならない」


 ようやくリリウスらの勝負が終わった。

 結果的にはルピンの体力切れからのギブアップだ。堂々と握手をする二人を囃し立てる人々と、次の挑戦者として名乗りをあげる者までいる。


 少年達が未来へと進む。

 積み上げた経験と武錬が一輪の花と咲き、己だけの成果と成った。そういう光景を見ているユイもまた傍観者では居たくなかった。置いていかれるのは寂しいからだ。


「わたしもクランに入りたいな。入門試験になるのかな、お願いしてもいい?」

「おう、お前も少しは強くなったようだし見てやるよ」


 時の大神から貰ったハイパーハンマーを突き出すユイが、フェイの向こうにある未来に向けて走り出す。

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