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奇跡のない街 奇跡を願う者ども

 六年前、ベイグラント東部の城塞都市ブリングギア。


 諸侯は凍えるような冷たさの謁見の間に整列し、王を仰ぎ見るかのように石の玉座を見つめる。そこには聖銀の王冠を頭上に戴くロード・クレルモンが座している。誰もが脳裏に思い描く古き王そのままの姿で、玉座から臣下を睥睨している。


 諸侯の前に並ぶはロード・クレルモンの七人の息子。これは次なるロードを決定する儀式。居並ぶ七人の息子を見下ろすクレルモン公は静かさを湛えた面差しで。


「ディモス、参れ!」

「はっ!」


 公の長男ディモスがクレルモン公の隣に招かれ、公から肩を抱かれると同時に気の早い拍手が巻き起こった。


 次代のロード・クレルモンはディモスだ。彼の名を叫ぶ諸侯の唱和がロードの振り上げた手仕草一つでピタリと止む。

 この畏怖も統率力もアルチザン家に次ぐ名家クレルモン健在を示すものであろう。


「次代のロード・クレルモンはこのディモスである。異論のある者は剣を掲げよ!」


 大陸東部は未だ興武の気性が根強い。意見があれば剣を抜け、臆病者に発言権はない。そういう凝り固まった中世然とした生き方が東部男の生き様だ。


 反対する者はなし。であれば儀式は次へと進む。

 ディモス・クレルモンは東部十六侯の信任を得た。であれば次に示すべきは彼の器量である。


 クレルモン家継承の儀式において次代は己に試練を課し、その達成を以てロードとしての価値とする。俺はクレルモン家並びに十六諸侯にこれだけの利益をもたらすのだと結果で示すのである。


 東部の男は口だけ達者な軟弱者の下になど決して付かない。己では敵わぬ王者なればこそ頭を垂れる。……過去には達成できぬ大言を吐いて失敗し、笑いものとなった継承子もいた。器量を示せぬ男にロードは務まらない。失敗は廃嫡と同義である。


 賢いのは無難な試練を自らに課す事だ。だが小賢しい男と侮られれば諸侯は手のひらを返して剣を抜くだろう。古く雄々しく武骨な男社会である。


 すでに王者の面構えをするディモスが口を開く。重々しいバリトンだが落雷のように強い声だ。


「俺はクレルモンに王座をもたらす」


 どよめきが場をこだまする。明らかな大言に聴こえた者は戸惑い。名案に聴こえた者はその先見の明を賞賛し。アルチザン家憎しで凝り固まった者どもは拍手する。


 様々な反応にも揺るがぬディモスはすでに王者の威を備えている。ならば後は結果で示すのみ。

 ロードは頼もしき息子を見やり。


「可能か?」

「マイロードよ、それは俺の器量を疑うものか? アルチザン家は今が食い頃だ。さしたる人もおらぬのに諸侯の心を失っている。勝算はあると見ている」


「お前の見ている者はわたしにも見えているつもりだ。だが儀式の試練とするにはいささか壮大だ。時間もかかる」

「時間がかかるからこそ先んじて始めるべきだ。体勢を盤石にしてから取りかかるので機を失いかねない。我が父ロード・クレルモンよ、俺にこの一大事業を行う時をいただきたい。クレルモン家の総力を傾けた十ヵ年計画を行う許可を」


 試練とするには大きすぎる。だが総力を尽くす許可まで求めてきた東部男が読み違えるはずがない。東部男ならば恥を掻くくらいなら自殺を選ぶ。


 機を逃しかねない。勝算はある。次代のロードと見込んだ息子がここまで言った。これを退けるのは臆病者だけだ。


「ふっ、十年でアルチザンの支配を覆せるのならやらぬ手はないな。ディモス、お前の好きにするがよい!」

「必ずやクレルモンにアノンテンをもたらすと約束する!」


 諸侯が声をあげる。兄弟達も声をあげる。彼らはディモスに栄光の座を奪われた形となったが御家の栄達を望んでいる。東部最大の門閥貴族クレルモン家の重鎮からベイグラントの王者になる。そのためにだ。


 こうしてクレルモン家の十ヵ年計画が始まった。その最後に御家に王位をもたらすものと信じて……



◇◇◇◇◇◇



「御家の悲願なのだ。クレルモンの男児は長兄ディモスの命を受けて動いている。三兄ガトラスフィアは円盾騎士団の団長職を。四兄エキンサムは商業ギルドの長となり。私スヴェン・クレルモンは教会に己の根を張った。キャロットオーダーという組織の根を。……すべては御家の悲願のために」


 通されたのはいつかと同じ儀式官の部屋。

 語り出したのは壮大な夢物語。この地を支配するアルチザン家を追いやり、国家を手にするクレルモン家の夢のお話。……一介の冒険者に明かすにはすぎた夢だ。耳を塞いで何も聞かなかったことにしたいほどに。


「私の使命は教会権力の掌握。その一助としてアルテナ神の宝杖エクスグレイスを求めている。諸君らに頼みたいのは宝杖の奪取だ」


「布教のためじゃなかったって事ですかね?」


「教会の認知度が上がるのは私としても歓迎できる。手に入れた組織の価値は高いほうがよいからだ。布教のみのために欲しいわけではないという答えが正しいだろう。きらいかい、こういうやり方は?」

「一石二鳥を横着だと思うのは難癖つけたい奴だけです。ラノア師や他のみなさんも納得しているなら俺に口を挟む義理はないです」

「ラノアは私の腹心だ。彼は納得している」


 他の連中には黙っているわけだ。国家転覆の計画をべらべらしゃべるわけないよね。キャロットオーダーの中でも限られた信頼できる者のみに明かしている真実なのだろう。だから戸惑う。


 スヴェンさんはどうして俺に……俺らのような一介の冒険者に秘密を打ち明ける? 豪胆すぎません?


 彼は俺らがラストさんのダチだって知っている人だ。俺からラストを通じてアルチザン家にクーデター計画が秘密が漏れる計算をしていないはずがない……


「もしかしてラストもキャロットオーダーに賛同している?」

「勧誘はまだしていない。だが説き伏せる自信はある」


 ラストはあれで家族想いな女の子だから家族を売るみたいなマネはしない。散々やべー奴だとか痴女だとか罵ってきたけどラストの精神の根底にあるのは善性だ。短気で一度キレると手がつけられないけど、本当は優しい女の子なんだ。


 しかしスヴェン師が自信もないのに俺らに打ち明けるとも思えない……


「ちなみに説き伏せる自信があるのにまだ勧誘していない理由はなんですかね?」

「あの方は嘘がつけない。話せば瞬時に露見するだろう。あの方に打ち明ける時は行動を起こす瞬間でなければならないと考えている」


 納得の理由だな。ラストさん正直者だから全部しゃべっちゃうよね。


「ちなみに釣り餌は何を?」

「解体したアルチザン王家への粛清を行わない。希望すれば現在の役職をそのままとし、また国外に出たいなどの希望があれば全面的にバックアップする。無論旧王家には大きな額の年金を約束する。騎士団から護衛を付けてもいい。住まいとして公館を無償提供する」


 スヴェンさんが不必要なまでに明かしていく内容は王家の責務を除外した、既得権益を保証するものだった。


「……ラストが喜びそうな内容ですね」

「私もそう確信している」


「その約束が本当に守られるのならいい話だと思いますよ」

「そうだな。信じてもらうのが一番難しいだろう。だがあの方は看破ホルダーだ、きっと私達クレルモンの誠実さを見抜いてくれる」


「今誠実であるものが権力を得た後も誠実なままでいると?」

「…………」


 スヴェン師が不機嫌になっちゃった。

 俺も大概疑り深いほうだがこれはまっとうな考えだと思っている。働き者なおひとよしだって宝くじが当たれば変わる。中には仕事をしなくなる奴もいる。富樫仕事しろ。


 金と地位のない人。金と地位を得た人。彼らはビフォーアフターでまったくの別人になる。国家転覆のために精一杯のリップサービスをしているクレルモンが王位を得て体制を維持する側に回った時、まず行うのは旧アルチザン家の排斥だ。歴史的に見ても確定的に明らかだ。


 そして疑いはスヴェン師の誇りを傷つけるものだ。お前は信用できない。そう言ったも同然だもんな。


「クレルモンの意思はこの口から出ていったとして後に曲げられることだけはない。例え千年前のクレルモンがした口約束であろうと私達はそれを必ず守るのだ」

「実直な一族なのですね」

「心にもない誉め言葉だな。だが私達は知っている、信頼とは積み重ね証明していくものだ。クレルモンは義を重んじるがゆえに東部最大の軍閥貴族なのだ」


「義とは何です? アルチザン家を裏切るのも義ですか?」

「先に義を欠いたのはアルチザン家だ。かつて統一の志を説いたアルトリウス・アルチザンの三人の盟友その中にベイダー・クレルモンがいた。盟友は剣となり盾となりアルチザンを王位に据えたが変わった。約束を守らず私達クレルモンを凍土に押し込めたのだ」


 歴史的な仲違いが原因であるようだ。あれやこれやと具体例を出さないのは不満が多すぎるからだと思われる。義のクレルモンが立たねばならぬほどに。


 義、すべては義が問題か。争点はまさに義なんだ。

 俺もまた義がためにスヴェン師に従わない。


「エクスグレイス奪還をクレルモン家に大きな恩を売る好機と考えてもらいたい。騎士団や教会内での地位なんてケチを言うつもりはない、領主位はどうだろう? クレルモン秘蔵の伝説の武具かな? 金なら幾らでも言ってくれ、見た事もないほどの金貨を与えてもいい。さあ望みの報酬を願いたまえ、エクスグレイスにはそれだけの価値がある」


「俺はラストに感謝している」

「……?」

「あの女はたしかに面倒くさい女だが俺はあいつが好きなんだ。五大国会議の時は太陽にハメられたルーデット家を助けるために動く俺らを信じ手伝ってくれた。フェスタ奪還のために軍を出してくれた。カトリが一番大変な時に共に支えてくれた。あいつはいつだって姉のように接してくれた」


 義がある。ゆえに俺も立つ。

 アルチザン家がクソなのはメルキオールさんの愚痴からもわかるさ。でも俺は個人への感謝からアルチザン家の破滅をよしとしない。


「あんたたちにも大義があるんだろうが俺にだって義がある。あんたらクレルモンがラストの意に沿わぬやり方をするようなら俺は必ずあんたらの企みを阻止する」

「先にも言ったがラスト様と争うつもりはない」

「ならばラストを篭絡してから話にこい。義を語る前に筋を通せ」


 俺とスヴェンは見つめ合い続けた。

 互いの本心を探り合うように見つめ、同時に嘘偽りのないことを理解し、何となくわかり合えないかな?って思ってから妥協点を探り合ってまた見つめ合う。


 気づけばニンジン茶が冷めていた。紅茶とは言ってたけども……たしかに赤いけども……


 うま! これお茶じゃねえ、フルーツニンジンスムージーのホットだ。メロンの生搾りみたいに甘いぞ!


「互いに義があれば押し問答にしかならぬか。……だが私はどうあってもエクスグレイスが欲しい」

「アルチザン家を貶めるための協力はできない」

「そうか……」


 自信に満ち溢れた賢者みたいな顔つきをしていたスヴェン師の鉄面皮が剥がれる。権力者の仮面の下にあったのは希望を願う青年の顔だ。……それはアルテナ神の石像を前に祈りを捧げる神父たちの横顔に似ていた。

 祈れどもこの祈りは届かないと知る者どもの顔にだ。


 スヴェン師がソファから降りて膝を着く。義路線は失敗したから人情に訴える気であるようだ。貴族のくせに珍しく物の道理を弁えている人だなー。


「伏して頼む。祈りの巡礼路を往き墓所に入り、エクスグレイスをもたらしてくれ」

「スヴェンさん、そいつができないってのはもう言ったはずだ」

「…………」

「あんたはどうしてそこまでする? 貴族にとって頭を下げるって行為がどれだけ屈辱的かは俺もわかるつもりだ。御家の栄達がそこまで大事か?」

「…………」


 スヴェン師は黙ったまま頭を下げ続ける。策謀に明るいのに実直でこれと決めたら頑固に譲らない。厳格な自分ルールを敷き、それを厳格に守り、ルールから絶対にはみ出さない。THE武家の男児だ。


 女子供なら何か理由があるなら説明しろと言うだろうが彼も俺も戦士であり男だ。戦士は言葉で語らない。心で語りかけて粋に感じたなら応じるべきだ。


 古めかしい武家の男児にとって頭を下げるってのは首を差し出すも同じだ。彼は無言なんじゃない、気に食わなければ首を刎ねてくれて構わないって身を投じて示しているんだ。


 スヴェン師は男としての誠意を見せている。ただ俺には筋を通すべき友人がいる。


 アルテナ様が俺の袖をクイクイ引っ張ってるぜ。可愛すぎる。誘ってるのかな?


「誘っているわけではありませんよ」


 誘ってなかったのか。残念。という俺のいつも芸風にも慣れてきたらしい。麗しく微笑んでおられる。


「スヴェン様の願いは叶わぬ願い。もはやこの場に留まる理由もないでしょう」

「ですね」


 どんな報酬を提示され、頭を下げて請われようが俺が依頼を受けることはない。俺ではクレルモン家の野望を押し留められない。もうここにいる意味はない。


 だがアルテナ様が一言これだけは伝えてほしいと通訳をお願いしてきた。俺はアルテナ神の真意もわからぬままに神託を告げる。


「エクスグレイスに死者蘇生の奇跡を起こすちからなどない」

「……ッ!」

「スヴェン・クレルモンあなたの真の願いは叶わない。アルテナ神には何年も前に死んだ女性を蘇らせるちからはない」

「……私の行いは無意味だと?」


「無意味なのです。最初から間違えていたのです。死者は蘇らない、だから人は死を恐れ、死を克服する夢を見たがる。夢は叶わぬから夢なのです」


 スヴェン師が項垂れ、両手で頭髪をひきちぎるみたいにくしゃりとやる。

 俺はすまないと謝罪を置いて退室する。


 貴族の頼み事っつーと武力を背景に恫喝したり弱みを握って脅迫したり、権威をチラつかせて怒鳴りつけてくるものだがスヴェン師は誠意あるものだった。太陽の王家は猛省しろ。


 扉の閉まる瞬間に気まぐれから振り返る。残念そうに俯くラノア師と膝を着いたまま呆然とするスヴェン師、そして彼の震える肩を抱くニケ君の姿があった。……善良な方々だな。


 彼らとはほんの一ミリも友達になれる気はしなかったが誠実な人々であった事だけは間違いない。何しろ何の被害もない。


 ちょいと利用されてホモのおっさん派閥が退場しただけだ。後味は悪いけど俺からしたら本気でどうでもいい。


「……スヴェンさん焦りすぎて勝機を誤った感じだったな」

「いや必勝の予定だったんだろ……」


 なぜか仲間達から尊敬の眼差しが……

 俺また何かやっちゃいました?


「……普通な、領主位を約束された時点で百人が百人とも飛びついている」

「クレルモンと言えばベイグラントでも第二位の名門だよ? クレルモンから望むままの報酬を約束されたのに蹴る人なんてリリウス君くらいのものだよ」

「お前ら…俺を頭のおかしい奴みたいに言うな」

「「おかしい」」


 仲良しかよ。ハモりやがって。


「お前ら下賤のもんにはわからんと思うが領主家はあれで苦労が多い。支出は多くて暮らしぶりは貧しいし領民は好き勝手に陳情にくるしで俺も何度叩き起こされたか。俺もガキの頃から領内の魔物駆除をし全滅に追い込むまで四年はかかった。もちろん無償だ。冒険者なら魔物倒せば金が貰えるのにタダ働きなんだぞ」


「……? たしかに支出も多いけど税収のほうが何倍も多いよ?」

「陳情に来た領民の話をきちんと聞いてやっているのか? 治安税を毟り取らずに無償で魔物退治を? 君たしか領主家のご子息だったはずだろ?」

「俺が昼寝してると来るんだよ。ぼっちゃん助けてくだせえって熊みたいな大男の冒険者がさ。領主家なんて所詮領民の便利屋なんだ、変な夢見てるならやめとけ」


「……あたしの知ってる領主家とちがう」

「聞いている限りはものすごく善政を敷く貴族家だぞ。ありえん……」

「死の衛兵団みたいなゴロツキが街中を闊歩していて町には常に悲鳴が轟いている危険地帯だと思ってたのに……」

「もう何十年も曇り空に覆われているとか常に雷鳴が鳴り響いてるとか……」

「処女を乗せた馬車が毎日のように屋敷を目指し……」

「生き血は食卓に並べられ……」


 これは逆に楽しくなってきてる奴だな。想像の及ぶ限り最悪な領主家を披露し合ってやがる。……吸血鬼の支配下にある集落だと基本こんな感じだけどね。


「どんな魔界だよ」


 つっこむとホッとされたぜ。どんな精神状態だよ。


「……怖がらせるなよ、中々否定してこないから本当に魔界なのかと思ったぞ」

「ねーよ」


 話を戻すか。スヴェンさんは必勝のつもりで大盤振る舞いしたのに断られ、最終手段で頭を下げても断られたわけだ。価値観は人それぞれだから仕方ないね。


 大聖堂からの帰り道。アルテナ様が切なげにしゃべり始めた。


「人は弱い。奇跡にすがりつかねば生きていけないほど弱いのに、奇跡には願いを叶えるちからがない。悲しいことですが世の摂理です」


 癒しの守護星の口から奇跡の無力さが出てくる。ものすごい説得力だ。世界最大の治療魔法の使い手だからだ。


 彼女にできない事は誰にもできない。だが人はいつだってそれ以上を願っている……


 写真も残されていない、顔も知らぬ母を蘇らせたいと考えたことはない。だが俺だってもしかしたら死者蘇生の奇跡を願ったかもしれない。アルテナ様の御言葉に素直に従えるのは奇跡を祈らぬ者だけだ。


「まだ来たばかりですが一旦祈りの都に戻らねばなりませんね」

「何の話です?」

「心を読みました。スヴェン様は墓所へと刺客を送り込んだようです」


 なるほど、俺らは第二陣になる予定だったわけだ。第二どころか数十回は送り込んでるかもしれないけどね。


 俺は当然のようにお尋ねする。刺客ってのがどんな奴かをだ。……だからまぁ実感はなかったんだ。


 俺はもうすっかりゴーストの影響下から抜け出していて、そいつに何の違和感もないくらい正常な状態になっているっていう事実を初めて実感することになるんだ。

 本来ならクレルモンの名を聞いた瞬間に関連づけてもよかったはずなんだ。


「襲撃者を束ねるのはオースティール魔導学院錬金学科教授アルバス・クレルモンですわ」

「そいつたしか……」


 おぼろげな記憶。微かに思い出せるゴースト先生の恩師の名前。俺はうひゃーって思いながら言う。


「めっちゃ強かったような……」


 最後の最後に魔導戦評価値30000越えが待ってるとか最悪すぎる。下手したら黒の賢者より強い超やべー奴なんですが……

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