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血塗れの呼名

 夜明けを迎えてもロアプタラの本陣に光は差さない。天を仰げば幾重にも重なった葉っぱの向こうが僅かに明るく見えるだけだ。


 ラストは一旦王都に戻るがメルキオールさんはこの場に残り、騎士団を率いてフェスタ軍の動きを見定めるらしい。


「フェスタは謎が多い。こちらでも見定めるつもりだが何かわかったなら教えてくれ」

「ええ、ガレリアの台頭は俺も望むところではない。協力は惜しまないつもりです」

「……協力は惜しまない…か。このまま共に戦ってくれたならこれほど心強い味方はいないのだがな」


「そいつはご勘弁」

「だろうな。人の世の救世主を拘束するわけにはいかん。さらばだ、ベイグラントは君の名と受けた恩を忘れない」


 メルキオールさんとがっしり握手してお別れをする。こんな情勢でなければ赤の賢者という強大な戦力を仲間に引き入れたいところだが、ラストが困っちゃうよね。やめとこう。


「リリウス君の処遇を頼む。彼は我が国の救い主だ、無下にするような結末にだけはするな」

「あらあら、随分と仲良しさんなのね。ええ任せてくださいませ」

「頼むぞ」


 本陣からグリフォンに乗って飛び立つ。馬で三週間っていう距離もグリフォンだと一日なんだから飛行系騎獣はすごいぜ。


 王都への空旅。飛び立って間もなくシェーファの駆るグリフォンが並走してきた。明け方に戻ってきてからどことなく不機嫌なこいつの目的は、俺ではなく俺の後ろに乗っているアルテナ様にあるようだ。


「尋ねてもよいだろうか?」

「ええ、どうぞ」

「その宝杖エクスグレイスはリザレクションの奇跡をもたらすと聞いた。それは……」

「不可能です」


 きっぱりと言い切られたのでシェーファが鼻白む。本当に可能なのか、それを私にももたらしてくれるのか、そう続けたかったのだろう。


 許可不許可ではなく不可能だと言われたからシェーファは返す言葉を失くした。


「不可能とは?」

「何やらヘンテコな勘違いをされているのですね。この杖はマハー系法術の増幅器にすぎません。精神系攻撃に特化しているこれで死者蘇生など不可能でしてよ」


 おう無情。奇跡ってやっぱりそこらに転がってるものではないんですねえ。


 たぶんどこかで伝承が捻じ曲がったんだな。杖を持ってる奴がリザレクションを使った、から杖にはリザレクションを起こす力があるみたいな勘違いが起きたんだ。伝承っていうスパンの長い伝言ゲームには真実を守るちからなんてないんだな。


「……では率直にお尋ねする。アルテナ神よ、私に死者蘇生の奇跡を授けてほしい」

「それも不可能です」

「なぜだ?」

「わたくしにはそのちからがないのです」


 アルテナ様曰く死者蘇生の奇跡なんてないそうだ。死後数分程度経った死者を外科手術を用いて蘇生することは可能だ。あらゆる病を根本治療することもできる。癒しのアルテナの名において不健康を健康に戻すことは可能だ。


 だが何年も前に死んだ者を蘇らせるような、誰にとっても都合のよい夢のような奇跡はこの世に存在しない。……夢のねえ話だけど普通に考えりゃそうだよな。神様なんだからそれくらいの奇跡起こせるはずだってこっちが勝手に思い込む分にはいいさ、でも実際に実行する方は困っちゃうわな。


 俺も俺の常識に照らし合わせて考えればリザレクションは不可能だと思う。でも人間ってのは都合のいい夢を見たがるもんだ。


「ではリザレクションとは何だ? どうしてそんなおとぎ話がある。あなたにもできないのならどうして?」

「あれは死者蘇生ではございません」


 あれとは何だろうか。主語を用いぬのは苦しみや己の罪から目を背ける心働きに思えた。


「あれはわたくしの罪。決してやってはならぬと知りながら失うことを恐れ、過ちだと知りながら施してしまった邪悪の奇跡なのです。……わたくしはかつて一度だけ我が信徒を蘇らせました。冥府の王デスの御業を用いてです」

「アンデッド化ってことですか?」


 俺は部外者だ。そうと知りながら口を挟んでしまったが二人は怒らなかった。むしろ二人だけでは話を進められなかったかもしれないから、少しだけ安堵する表情になってくれた。


「ええ、リリース様の仰います通り」

「誰をアンデッド化したんですかね?」

「リアナ。わたくしの大切な友です」


 あのババアはアンデッドだったのか。くぅ~~~~、びっくりだな。全然気づかなかったわ。

 しかし思い返してみてもリアナからはアンデッド特有の死の香りはしなかった。不死者の気配ってのは店内の薬草くささで誤魔化せるもんじゃない。アルテナ様だし何か特殊な方法なんだろうな。


「わたくしは後悔しているのです。人は二つの物を携えて生まれ来るのです。生と死、生をして大事を為し、死をもって生命の意味を問う。死者を蘇らせて何とするのでしょう。運命の輪から外れた生には何の意味もないのです。わたくしは…わたくしの愚行は今もリアナを永遠に苦しめているのです……」


「何の意味もない? 神の考えは理解できぬ。意味ならある。私が嬉しいという意味がな」

「誰を蘇らせるというのですか? その者が苦しむと知りながら誰を?」

「…………」


 シェーファは答えなかった。答えられなかったんだ。

 俺も誰かを失ったならきっと蘇らせる。誤った行いだと知りながら蘇生させ、苦しみ続けるだろう。


 怒りと憎悪に耐え抜き、空虚な顔をしたシェーファが己の腕を掻き抱き、壊れるほど強く握りしめている。俺はこいつに掛ける言葉を持たなかった。ただ寄り添ってやることしかできないんだ。



◇◇◇◇◇◇



 グリフォン騎獣が頑張ってくれた結果アノンテンには夕方には到着した。途中で昼飯食いに街に降りたのに本日中の到着である。グリフォンかっけえ。


 順序を考えればラストはすぐに宮廷に参じて王様に戦況報告するべきなんだろうが、先にこっちの問題を片付けてくれるらしい。


「いいんですか?」

「他ならぬカトリ様の頼みですもの。それに一度宮廷に戻ればこちらに関わる暇がないと思いますの」


 頼もしいお言葉である。ここは任せてしまおう。


 ルナココアさんは宿に案内してくれるらしい。急な来客にも対応している国賓御用達の高級ホテルで、アルチザン王家なら誰でも好きに使っていい部屋があるそうな。


 ホテルがどこかっていうと大聖堂の真向かい。聖アルテナ広場を挟んだ向かい側にずらりと並ぶお高い建物の一つがそうだ。イース商会アノンテン支部発見! マジでどこにでもあるなイース商会!


 とりあえずホテルにチェックイン。他の連中はもう疲れたから部屋に行くらしいが、俺とアルテナ様は本探しに行く。もちろんイース商会さ。


「では自分が案内するのであります」


 と案内を買って出てくれたルナココアさんに気になっていた事をお尋ねする。しつこく俺らを追い回していた彼女がどうして心変わりをしているのかって疑問だ。


「大地の掟というものがあります」

「弱肉強食ですかね?」

「この地においてはラスト姉様こそが絶対の法。姉様が白だと言えば黒でも灰色でも白なのであります」


 独裁国家かな? いや王政国家だけど。王や王家の言葉は王政国家においては絶対。否と口を挟むのは大変勇気がいる。


「姉様はおっとりしたドラゴンなのであります。それも全身が逆鱗でできたドラゴンなのであります」

「何の話でありますか?」


 やっべえ、口癖うつされてる!


「……きっと血の雨が降るのであります。仮にお前達の主張が正しいものだとしても、お前達は姉様に頼るべきではなかったのであります」


 雨が降り出した。天を割ったような大雨はすぐに雷雨となり、不吉な稲光が王都の空を照らした。

 


◆◆◆◆◆◆



 ルナココアが大げさな心配をしているその頃、ラストはすっかり困り果てていた。


「神官の小僧を寝所に引き込んだぁ? 知らん。ワシは知らんぞ!」

「え~~~~~っと」

「誰に何を吹き込まれたかは知らんがワシは知らん。陰謀だ!」


 めっちゃ早口でまくし立てられたラストは困ってる。目が><ってなってる。


 ラストは元々口がうまくない。理路整然と相手を追い詰めるような弁舌は無理だし、何より争い事がきらいだ。世間様は彼女の事を血塗れラストなんて呼ぶけれど、じつは争いは大嫌いだ。できれば争いなんてないほうがいいって思っている。

 そんな彼女が保身に長けた狐狸に敵うわけがなかった。


 リリウス達がロアプタラへと旅立っている約三週間の間に事実改変はすっかり終わっている。エルナンドが集めた神官達は口を揃えてそんな事実はなかったと言い張り、むしろ大聖堂に侵入した賊徒に立ち向かったエルナンドの勇敢さを褒め讃える美談にしている。


 神官からすればラストも怖いがエルナンドも怖いのだ。彼女は騎士団で忙しくて大聖堂には中々出てこないが、エルナンドはいつもここにいるのだ。隣町の邏卒より近くの汚っさんのほうが怖いものだ。何しろ彼は両刀使いだ。バイセクシャルだ。


 ラストは事実をびしっと突きつけて説得するつもりだったけど、無実の証拠を揃えて改変した事実を突きつけられたので困っている。彼女だって又聞きの話だからだ。


「なあラストや、ワシを信じてくれんのか……?」

「そ…そういうわけではございませんが……」


「ワシはたしかに無能よ。だが無能なりにアルチザン家のために誠心誠意真心を込めて仕事をしておるじゃないか。そんなワシに対して……ラストや、おじちゃんを信じてはくれんのか?」

「……叔父様」


 ラストは泣き落としに弱い。短気なのは置いておくにせよ彼女は心優しい女性だから情で来られると大変弱い。


 もしかしたら叔父様は悪くなくて何か不幸な行き違いがあるのでは?って思い始めた頃に傍仕えが一枚の書類を差し出してきた。


 この書類によれば冒険者たちが脱獄した日に倉庫から大量の軍事物資が盗まれたらしい。僧兵長アケロンの署名付きだ。僧兵長は神官長よりも位が高く、エルナンドの側から働きかけたとは思いにくい。何しろ二人は犬猿の仲だ。……てゆーか慰謝料代わりに窃盗を働いたのは事実だ。


 被害総額はなんと2800アルバ金貨。このひどい書類をペラペラめくってるラストの顔色がどんどん青ざめていく……


「なあラストや、お前は騙されているんだ」

「カトリ様はそのような方ではありませんわ……」

「可哀想なラストや。お前は優しい子だからなあ、悪い奴はお前の優しさにつけこむのよ。悪い事は言わぬおじちゃんを信じておくれ。お前には何にも悪いことはないから……」


 人間誰しも得意が一つ二つはあるものだ。エルナンド・アルチザン神官長においてそれはイイワケのうまさだった。話相手の呼吸を読むのを加えてもいいかもしれない。相手が言葉に困ったところに言葉の洪水でまくし立て、相手を困らせてしまうのだ。


 もし彼に信義や信念のような正しい物があったなら兄王グラーエイスは彼を見限りはしなかったはずだ。だが彼には矜持がなかった。


 二枚舌の政治家が巧みに使い分ける虚言と真実の裏にも信念がある。太陽の宰相エドゥアルド・アルステルムには信念がある。その身を太陽に捧げようと心だけはフェニキアにあり、祖国のために生きている。彼の子も孫も彼の信念を受け継ぎアルステルム分王家の志を胸に誇り高く生きている。


 ベイグラント王グラーエイスもまた信念の人だ。ひび割れたガラス細工のような祖国が割れれば再びの乱世がやってくる。かつてベイグラントの大地は幾つにも割れ、幾多の僭王がこの地の覇権をめぐり争う時代があった。そうした時代に統一王朝を夢見てこの地を平定したアルトリウス・アルチザンの志を守るために体制を維持している。


 誰もが譲れぬ何かのために生きている。だがエルナンドにはそれが無かった。


 彼は享楽的な男で目の前の楽しさに誘惑されてその日暮らしのような信念のない生き方をしてきた。だから彼の言葉は誰の心も動かせない。蹴飛ばせば転がり往く石ころが何かを言ったとして誰の心に響くというのか。 


 何者であっても動かせぬ揺るがぬ物がないゆえに彼は路傍の石ころまで落ちたのだ。アルチザン家の威光を借りる狐狸。それがこの矮小な男の正体だ。


 彼はいつものように怒鳴り散らして相手を委縮させ、決定的な証拠を提出してから親切な皮をかぶって情に訴えた。いつものようにそれが通じるのだと信じている。


(ええ、ええ、わかっておりますわ。叔父様は決して悪人ではないという事を。事にわたくしには格別に可愛がってくださるということも……)


 だがラストも普通の人ではない。エルナンドが普段相手にしている木っ端神官でもなければ平民あがりでもない。Sクラスの看破ホルダーだ。


 真実の証拠や口裏を合わせた偽証を見抜けなくとも、彼女の超感覚はエルナンドの真実の姿を幻視している。


 吐き続けた嘘のせいでドス黒く染まったその姿に、かつての優しかった叔父の面影はない。ラストの目には醜い怪物に成り果てて見える。


 昔はこんな人ではなかった。信念はなかったし女性関係はだらしないし借金も作るけど優しい人だった。ラストには優しかったんだ……


「叔父様、訴えを取り下げてはいただけませんの?」

「ならぬ!」


 エルナンドが怒声を張り上げた瞬間ラストの頬を涙が流れた。一雫の涙は頬を伝いて顎から零れ、床へと落ちていく。


 彼女はただこう思った。叔父様の顔だけはきちんと覚えておこうと。


 これは零れ落ちた涙が床を叩きまでのほんの一瞬の出来事だ。血塗れラストの肉体から溢れ出る邪悪のオーラが巨人のごとき腕と化し、エルナンドの首を引き抜いてしまった。


 突然の蛮行に誰もが何もできないでいる。傍仕え達は主人が死んだ事実さえ認識できない僅かな時に、一人だけ亜音速の時間軸で生きるラストが彼女からすればゆっくりと立ち上がり、深々とお辞儀をする。……死者へと払う礼節に他ならない。


「叔父様にも問題はあるのでしょう。弱い方でした、心も体も。ですが叔父様を腐らせた責任には貴方がたにもあるのです」


 判は下された。死の天使ラストは深々と頭を下げた態勢のままその暗黒の腕で室内のすべての首を引き抜いて殺す。鮮血が床を染めていく。血塗れになった天使は微笑みを浮かべながら死刑を執行するために室外へと出ていく。


 ベイグラントの竜は怒りにて殺すのではない。どうしようもない悲しみを讃えたまま、切なさを誤魔化すような可憐な笑みを浮かべて殺害するのだ。



◇◇◇◇◇◇



 何から何まで間違い続きだったベイグラントの旅路だが最後に最低なオチがついた。ラストを信じてお任せしたら関係者皆殺しにしてきやがったんだ。


 旅立ちの前にスヴェン・クレルモン儀式官がこう言った。

『ラスト殿下の名を出したのが事態の悪化を招いたのだ』


 それを受けてシェーファがこう結論を出した。

『真っ先に頼ったのが間違いなら最終的に頼るべきも彼女になるのか』


 そして事の終わりに俺はこうため息をついた。

『やはり頼りにしてはいけなかったんだ……』


 すべては結果論にすぎない。英断も愚行も結果を見なければ何がそうだとはわからない。だから今なら言える。ラストに頼みごとをしてはいけないんだ。

 ルナココア経由で事の顛末を聞き終えた俺はホテルのラウンジでげんなり……


「神官長さん何て言ったっけ?」

「エルナンド伯父上でありますか」

「じゃあそのエルナンドさんのご冥福でも祈ろう。あーめん」


 無理やりとはいえ可愛いショタを襲ったくらいで殺されるのは割りに合わない気がしたから祈った。でも余罪も相当数ありそうだし、レイプ被害者の心情を考えれば殺されて当然なのかもしれない。俺だって汚っさんから強姦されたら殺すわ。ガチで。


 みんな揃ってのお祈りタイム終了。ルナココアさんも王宮に戻って静養するらしい。いまさら静養する必要があるかは謎だ。


 お別れの間際ルナココアが懐から一冊の分厚い本を取り出した。


「それは?」

「弟の本棚からパクってきた本であります」


 ひでえ。これっぽっちも悪びれないルナココアは自然な仕草でアルテナ様に近づき、押しつけるみたいに渡しちゃった。え、見えてたの? いつから?


「……よいのですか?」

「あのいいわけ大王は本狂いでありますゆえ一冊二冊がめたって気づかないのであります。逆に返されると自分が困りそうなので飽きたら捨ててよいのであります」

「大切にしますわ。感謝を」


「では自分はこれで。短い間でしたが中々面白い経験が積めましたわ、皆様には心ばかりのお詫びと感謝をこれに」


 最後にとびきり気取った淑女の礼をしてルナココアが去っていく。やればできる子なんですねー。


 丘上の王宮へと去っていくココアたんの背中を見つめるアルテナ様が最後にいやな事を言った。


「あの方、救世主の資格がありましたわね」

「……もしかして他人の話を聞かなくて直感全振りで思い込みが激しいのが救世主の資格なのか?」

「シェーファそれ失礼な奴だぞ」

「いいえ、でも秘密です」


 アルテナ様がとびきり麗しいウインクを決めたこの瞬間にベイグラントでの物語を閉じてもよかった。物語を終えるタイミングとしては決して悪くないからだ。


 だがこれは現実で、俺は見たくない物から目を逸らさずに戦おうと決めたんだ。


 大聖堂の天蓋付きの廊下からスヴェン・クレルモンがやってきた。背後にラノア師とニケ少年を率いる儀式官が一切の甘さのない眼差しを向け。


「勝利を祝して紅茶でもどうかな?」

「よく言うぜ」


 今ならまだ間に合う。曖昧に濁して逃げ去っていいはずだ。陰謀になど関わらずに後の事を知らずに生きてもいいはずだ。だが救世主ならスルーしてはならない。


「全部あんたの手のひらの出来事だったろう?」

「買いかぶりだな」


 くつくつと笑い出したスヴェンの顔は手のひらで踊る猿どもがようやく気づいた事に対する賞賛か侮りか、俺ならこれは見直したと読む。


「私は賽を投げ、たまたま最も良い結果が出たにすぎぬ。あぁ最高の結果だよ。目ざわりだったエルナンド派が粛清され、我らキャロットオーダーの運営に必要な役職に欠員が出た。すべては偶然の賜物だが諸君らには最上級の感謝を贈ろう」


 つまりスヴェンはラストを頼れば何がどうなるかわかった上で俺らを動かしたんだ。本当に望んだとおりに進むかはサイコロ博打と表現したが……

 どちらにせよ気分は悪い。だがやったのは俺だ。糾弾などできるはずがない。


 子供や猿みたいに睨んでも貴族は痛痒にも感じない。精一杯の効いてないアピールをして微笑みを浮かべて対等に並び立たねば負けだ。


「答えを聞かせてもらいたい」

「いいぜ」


 望むままに動かされたまま終わるなんて最低だ。アノンテンにおける俺の最後の戦いが始まろうとしている。

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