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俺と息子とツンデレNIGHT

 前回卒業と言ったな?

 あれは少しだけ本気だ!


 しかしステルスコート欲しがってる奴がよこした解析結果鵜呑みにするとか突然訪問してきた怪しい骨董商に家宝預けるくらい勇気いるぜ。コッパゲ先生に詳しく見てもらうかアシェラ神殿でお金払って見てもらおう。


 俺が心の中でそんな算段をつけている間、ルルは何か知らんが力説してたが話が長いので聞き流してる。コブシが利いてるぜ。いったいナニ演歌なんだ。


「というわけで我に封印処置を任せるがいい。責任を持ってこの危険な呪具を封じてやるぞ」

「本当に封印するの?」

「するわけがあるか! 便利に使わせていただくに決まっておろうが―――ハッ!?」


 おい、いまさらしまったみたいな面されても困るわい。

 危険だ危険だと言いながら自分だけは便利に使おうとか……


「さては安全に使い倒せる方法見つけたな?」

「それは難しいな」

「……じゃあどうする気だ?」

「これだけの呪具から呪いを除去するのは困難を通り越して面倒だ」


 面倒なくらいならやれと言いたい。


「とはいえ無効化する手段を用意するのも大金がかかるしな」


 金で解決できるならやれと言いたいがこいつ貧乏だったわ。


「となると境界渡りの機能だけを転写した模造品を一から作ればいい。呪いなど最初から組み込まなければよいのだ」


 こいつ天才かよ。モノ作りで解決とか日本人的に胸熱すぎる。


「これだけ複雑な術式だ、まだまだ理解できていない法印も多い。改良品の完成には半年は見てもらいたい。我も授業があるでな」

「金やっから授業サボれ」

「学院卒業と中退では生涯年収にどれだけの差があると思っているのだ!?」


 新発見、ルルは意外にも将来設計しっかり立ててるらしい。

 モグリの魔導師だと揮発性薬剤などの各種便利薬品を協会から買えないって授業で習ったから理解はできる。実家破産して食うにも困ってる苦学生だもんな……

 そんな奴が飛空艇に金出すか?


「お前まさか魔王の呪具量産しての大儲け企んでる?」

「ふっ、どうやら我の偉大なる野望に気づいてしまったようだな」


 ステルスコートをもぎ取りにいく。

 ルルが離さないので引っ張り合いになってしまった。


 だが俺もこの場は譲れない。世界の平和のために!


「ざけんなあ! ステルスコートの改良品なんか出回ったら暗殺と強盗が成功確率百パーセントの地獄の時代の到来だぞ!」

「少年は世の中を甘く見過ぎている! 技術が進歩すれば防犯もまた進歩する。安全コートが出回った社会では当然対策も為されているだろうさ!」


 危険コートだ!


「社会と人類に過剰な期待をするな! お前みたいな楽観的な技術者が核弾頭を生み出して世界を滅ぼしかけるんだぞ!」

「核弾頭なんぞ知らん!」

「知られてる世の中じゃなくて本当に良かったよ!」

「世界を滅ぼすほどの兵器が生まれれば国家間に緊張が走り、自然と話し合いのテーブルに着くはずだ。つまり世界を滅ぼす兵器でさえ人類は克服できるのだ。ちがうか!?」

「あぁちがうね! 資源は常に有限でありリソース弱者と強者が存在する限り必ず兵器を用いてルールを入れ替えようとする輩が生まれるんだ! 弱者が世界を盾に強者に仲間入りさせろと迫る世界を無視するな!」

「それこそ協定を作り乱暴な弱者を排斥すればいいはずだ! 抑止力は使わねば抑止力足りえん!」

「それこそ最終戦争の引き金だ! お前の理屈には馬鹿が存在しない、お前の理屈はお前の頭の中だけで完結したご都合主義の社会だけに適用されている。使うならお前だけがこっそり使えばいいだろ!?」

「知識の秘匿は人類の歩みを遅らせるだけだとなぜわからん!?」

「滅びたらそこまでだろうが!?」


 俺らは殴り合った。殴って殴って殴り合い続けた。

 やがて友情が芽生えた。


「ルル、お前の拳熱かったぜ」

「……火属性付与であれだけ殴ってやったのに感想がそれかね? だが少年の意見にも利はありと見た」


 お互いに膝ガックガクで握手を交わす。きっと友情じゃなくてこれ以上殴り合ったら洒落にならんという判断だが、とりあえず休戦できたぜ。


 見るからに近接戦闘苦手な後衛魔法職相手に五分の殴り合いを演じた魔王の装具保有者がいるらしい。リリウスっていうクズのことさ。ルルの自動防御機構付きの弾性白衣を破る手段が俺にはねえんだ……


 いまさらフリマでの伯爵の言葉を思い出したぜ。非常に強力なアイテムを放出してるってのは、つまりルル自身が装備してるやべー装備の事だったんだな。


「量産は無しだ」

「よかろう」


 無意味な口約束を交わして退室する。ルルとはいずれ世界の行く末を懸けて殺し合うのかもしれない。具体的にはこいつが改良品第一号を作った瞬間にだ。


「ロンギヌス、良き響きだ……」


 アシェル居眠り部屋に戻ると俺の息子が安全槍を構えながらかっこつけてた。

 ちょ―――八つ当たりで頭突きするんじゃないよ。お前の頭突き威力やべーんだよ。


「お前さあ」

「名前」


 半泣きで睨み上げてきやがった。


「どうして名前で呼ばぬ?」


 いま俺は父としての資格を問われている。

 以前一度だけアシェルが発してたその名前は……なんだっけ?


「よもや忘れたなどと言うまいな?」


 これ正解できないと関係修復できない奴だな。

 俺も親父殿から名前間違われたり忘れられたら一生根に持つ。今後一切口を利かない。むしろ秒で家出する。二度と家に帰ってこない。


 う~~~~ん、かっこいい系の名前だったのだけ覚えてるけど……

 シュラだかシェラだか……


「ふっ、お前には父からも名を送ろうと思ってたんだ」


 華麗なる時間稼ぎ!

 おい、めっちゃ期待した目で俺を見上げるな。いいのか? それでいいのか? 俺の好きなゲームの主人公名つけるぞ? いつか子供ができたらつけようとか企んでた奴つけるぞ?


「クロノ」

「余はそこまで黒くはない」


 リテイク入っただと!?

 生後三日目の息子から名前にダメ出しされた父とか俺人類初じゃね?


「クロノス」

「意味は?」


 最後にS付けただけとか言ったら頭突きされそう。


「時を司る感じだ」


 ダイナミック早産だったしな。


「時……時か。父は余に時を願うか?」

「願いか、いい言葉だな……」


 謎会話だけど意味聞き返すと頭突きされそうだから超かっこいいポーズで誤魔化すと、マネされてしまった。

 すまん息子よ、それスタイリッシュに塩振りかけるポーズなんだ……


「あいわかった。では余はこれよりシェラザード・クロノスを名乗ろう」

「そっ、それだああああああ!」


 思い出した、お前シェラザード君だったよな!


「愚物めぇええ! やはり余の尊名を忘却しておったか!」


 このあとめっちゃ頭突きされた。


 夜、客室でぐっすり寝てるとベッドに何者かが不法侵入してきた。

 何だかよくわからないけど頭突きしてこないので放っておくときっちり腕一個分の距離を保ったまま眠っていた。翌朝、目覚めるとクロノスの姿はいなくなっていた。


 飛空艇の廊下で偶然会うと……


「愚物が、もう昼であるぞ」


 と吐き捨てていった。

 マクローエンの地にいる親父殿にもう少し優しくしておけばよかったと、俺はいまさらながら反省した。息子との距離感がわからない!


 この日アシェルが目を覚ました。

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